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不死身の戦士


―第一話不死身の戦士―


俺は…ただ戦った…意味もなく…ただ…向かってくる存在と戦い葬る…それだけをただ…五千年繰り返した。


共に暮らした大切な仲間も…みんな…死んでいった…


俺に残されたのは……ただ戦う…それだけ……


ただ戦う……戦う…戦う……戦う……



ち…が……う…



違うんだ…俺は…俺はただ……



俺はただ…あいつの場所へ……あいつらの場所へ…行きたいんだ……



頼む…頼むから…誰か…俺を……してくれ………




五千年前…


俺は、ある迷宮に永遠に愛し守り続けると誓ったパートナー[リンネ・エターナリィ]と潜っていた。


「ねぇグレイ?今日は何でこの迷宮に来たの?」


俺と並んで歩いていたブロンドの少女リンネが、なぜこの迷宮に潜ったのかを聞いてきた。


「この迷宮には貴重な素材が取れるモンスターがいるんだ、そいつを狩って俺達の指輪を買おうと思ってな」


そうこの迷宮は世界でも最難関とも言われる迷宮、ここにいるモンスターからは売れば大金になる貴重な素材が取れるのだ。

しかも噂によれば食べれば不死身になれる[永劫の果実]があるらしい。


「指輪ッ!?それって本当ッ!?じゃあ早く目的のモンスターを倒して帰らなきゃね!」


目の前でぴょんぴょんと飛び跳ねるリンネ。


「そうだな、さっさとモンスター倒して街に帰るか!」


そこ後すぐにモンスターを見つけた、俺達がいるのはまだ上層、俺達でも倒せるレベルのモンスターが出てくるエリアだ。


そしてリンネと俺は連携して、現れるモンスターを次々倒していった。


「ふぅ〜かなり倒したな、リンネどれくらい素材は取れた?」


リンネはごそごそとカバンから中位の袋を取り出した


「結構取れたよ、これだけあればそれなりの額になると思うけど…」


「それじゃあ、そろそろ帰るか。あまり深く潜りすぎるのは危険だしな」


下ってきた迷宮の道で迷わないように壁に刺していた、ナイフを辿って迷宮から帰っていた。


すると最初に通った時はなかったはずの扉が壁に出現していた。


「なぁリンネこんな扉、最初に通った時はあったか?」


リンネは首を横に振って「無かった思うけど…」と答えた。


「入ってみるか?かなり上層まで上がってきたし危険なモンスターは出ないだろうし」


「そうだね、入ってみよう」


ボロボロになった扉を開けると、とても広い空間の中央に祭壇が一つだけ置いてあった。


祭壇の上には何かが置かれていた。


「ねぇグレイ、あれって…」


「あぁ、あれは…」


祭壇の上に置かれていた物、それは…


《永劫の果実だッ!》


二人揃って果実の元へ走って行った、祭壇の上に神々しく置いてある[永劫の果実]その見た目はギョロリとした目のような模様が印象的だった。


「これが…永劫の果実、噂は本当だったのか…」


「永劫の果実を食べると確か不死身になれるんだよね」


永劫の果実は人間を不死者にする、大昔にこの果実を巡って戦争が起きた事もあったらしい。


「どうするの?この果実持って帰るの?」


仮にこれを持って帰っても俺達がこの果実を食す事はない、永劫の果実は伝説の果実、人が手にしていいものじゃない。


「いや、永劫の果実は置いていこう。もともとこの祭壇に祀られてるものだしな」


永劫の果実が祀られている祭壇に背を向け、俺達は帰路に入った…だが…



ガコンッ



何か仕掛けが動いた音がした、音がしたと同時に部屋の入り口が崩れて崩落した。


「グレイッ!入り口が…!」


足元に魔法陣が展開される、そこから滲み出る漆黒の邪気…こいつは…!


「リンネッ!今すぐ隠れろッ!この魔法陣から邪神が出てくるぞッ!」


邪神…それはこの世界で最凶と言われる世界に混沌をもたらす最も凶悪な種族。


「邪神って!?そんな化け物が何で!?」


ゴォォオォォォォッ!!


滲み出る邪気、そして邪神の咆哮は俺達に一瞬にして恐怖を植えつけた。


「早くッ!隠れろリンネッ!」


邪神がその異形の姿現した。


人のような形をしているが、人ではない。黒い体の背中からは筋繊維が剥き出しの腕が何本も生えている。顔には赤く充血した目が四つあった。


ギョロリと邪神の目が光った、次の瞬間…



ボチュッ!!



俺の右腕が爆ぜ、肉片となった。


「があぁぁぁッ…!アァァアァァッ!!」


右腕があった場所から噴き出す血、そして走る激痛に苦悶の表情を浮かべた。


「グレイッ!!」


リンネが俺の場所へ飛び出そうとしていた。


「来るなッ!こいつは俺が引き止めるッ!リンネは隠れて入り口を開いてくれッ!」


爆ぜた右腕に持っていた剣を拾い上げ、邪神へ体を向け飛び込んだ。


勝ち目はない…だが、リンネを守る為にはやるしかないッ!


「はあァッ!!」


俺の攻撃は一切効いていなかった。邪神の体は異常な程硬かった。


邪神が複数の腕を振り回す。


その腕は部屋天井や祭壇までも破壊し、さっきまでの神聖な部屋とは思えないほどに変化させた。


俺は邪神の腕を避けながら、こいつに勝つための方法を考えていた…だが俺は邪神の腕を避け続けることは出来ず、一本の腕に直撃してしまった。


「…がはぁッ!!」


壁に打ち付けられた。


肺の空気を強制的に吐かされ、一時的に動けなくなってしまった。


邪神が口を開け、一点にエネルギーを集め始めた。

紅と黒が入り混じるそのエネルギーを見た瞬間に死を覚悟した。


邪神の口からエネルギーが放射され、俺に直撃しようとした次の瞬間…


バッ!!


リンネが俺を庇うようにして目の前に飛びこんで来た。


「なっ!?リン…!?」


俺がリンの名前を叫ぼうとする、だがそれは無残にも遮られた。

邪神の強力な攻撃はリンネの体を貫通し、リンネと俺の胸元に大きな風穴を開けた。


血を吐き出す、息も出来なくなった。


俺とリンネはそのまま倒れた。


「リン…ネ…なん…で、来た…んだ」


俺の前に立っていたリンネは俺よりも大きな傷を負っていた。


「グレイは…私を…私は…グレイを…守る……そう誓った…でしょ…?」


転がってきた永劫の果実をリンネは拾い、俺に差し出してきた。


「あなただけは……生きて…私はいいから……」


「バカ野郎……俺は…果実は…いらねぇ……お前が…生きろ……俺が…死んでも……また誰かを…好きになれるから……」


差し出した永劫の果実をリンネに押し返した、俺の傷も深い、それはリンネも同じだ、だからこそ早く果実を食って欲しかった。


リンネが果実を口にした、それを見届けると、意識がだんだんと遠退いていった。


「んっ!?」


喉に暖かい何かが流れ込んでくる、遠退いていた意識が覚醒していく。


意識を集中し何が起こっているのか確認する。


そこに見えたのは口移しで永劫の果実を俺に食させるリンネの姿だった。


「リンネッ!何でお前ッ!?」


「私は…グレイに…生きて欲しいの……他には何もいらないの……」


リンネの傷口から血が流れる、だんだんと体温が低くなっていくのが分かった。


「リンネッ!リンネッ!嘘だろ…こんな…」


リンネが俺に笑みを浮かべる、もう二度と見ることができないかもしれない愛おしいその笑みを。


「今は辛いかもしれない……でも…あなたには……まだ未来があるじゃない……」


「未来があってもッ!リンネがいないと…俺は……」


リンネの体が冷えていく、時間は無慈悲にも過ぎていく…

リンネは俺の顔に力を振り絞り手を添えて


「いつかまた…出逢えるから……いつかまた…私を……」


リンネの手から力が抜けた、何かを言い残し、リンネは永劫の眠りに就いた。


「おい…嘘だろ…リンネ……」


また出逢える?そんな事がある訳がないッ!たとえ生まれ変わってもそれはこの[リンネ]じゃないッ!!


ゴォォオォォォォォッ!


邪神が背後で咆哮を上げる。


俺は修復された右腕を確認するとリンネの遺体を持ち上げ、安全そうな部屋の端へ連れて行った。


「待っててくれ…リンネ、ここから出たら約束した指輪を買ってやるからな……」


リンネの遺体を床に置き、邪神へ視線を向けた。


「おい…邪神…どっちが先にくたばるか勝負しようぜ」


邪神がさっきの攻撃を発動する、今度は一瞬でエネルギーを集中させ放射した。


頭が消し飛び、血肉が飛び散る…激痛は感じるが不思議と苦しむ事はなかった。

消し飛んだ頭は数秒で修復され、俺は雄叫びを上げながら邪神へ突撃した。


「うおぉぉぉぉッ!!」


俺と邪神の戦いは異常だった、常に漂う人の肉の焼ける匂いと血が蒸発する匂い、邪神が放つ高熱の光線は俺の体を溶かした、だが俺の体は修復される、そして何度も体を消し飛ばされ、高熱に溶かされ、毒に侵された。

そして俺の体はだんだんと痛みや苦痛に鈍感になっていった。


邪神との戦いは半日も続き、破壊と再生を繰り返した体は邪神の攻撃に対応するように強靭になっていた。


「ハァ、ハァ…俺の勝ちだな邪神…」


最後は邪神をただ圧倒的な暴力で嬲り殺しにした。

邪神の体全ての骨をへし折り、全ての目を潰し、あとは一方的に内蔵を潰し殴り続けた。


「…終わったよ…リンネ…街に帰ろう…」


目の前で眠る最愛の少女リンネにそう告げ、俺は迷宮を抜け出した。


街へ戻ると、まずリンネの家族の元へリンネの遺体を持って行った。

リンネの家族は悲しみに包まれた、俺はリンネの死因を家族へ伝え、リンネを埋葬する為にリンネの遺体を墓場へ持って行った。


迷宮から脱出して一週間後、俺は街に異端者認定をされた、理由は[邪神と戦って生き残れる人間などいる訳がない…グレイは邪神だ]などというふざけた内容だった。


だが俺が無駄に抵抗して、仮にリンネの家族にも被害が出るかもしれない、と考えた俺は異端者認定されたその日に街を出た。



五千年後…


俺はある街の裏道で眠っていた、永い間眠っていたようなそんな気がした。


「…嫌な…夢を…見たな……」


重い体を起こし、見た夢の事を忘れようと頭を軽く振った。


「…そろそろ、行くか」


俺は二千年前から旅の目的があった、不死身になってから俺は[不死身の戦士]という通り名が付き、いろんな奴が俺に挑んで来る、だがどいつも俺の相手ならず、俺の目的を果たしてくれなかった。


俺の旅の目的それは…[俺を殺してくれる存在を探す事]


だがそれは不死の体には絶対に起こり得ない事。

絶対に叶う事はない。


だが俺は探し続ける…俺を殺してくれる殺せる強さを持つ者を。



これは…不死身の戦士が死へ向かう物語



グレイの悲しき運命、そして彼が死ぬ為の旅…

次話から始まります。

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