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夢ならさめないで

作者: 真白 透


 私はいつも夢に見ている。白馬に乗った王子様にお城にドレス、どれもキラキラしていて眩しくて大好きだった。子供の頃からずっとずーっとでも、中学生になると友達に馬鹿にされ始めて私は自分の夢を見られなくなった。昔はキラキラの夢を見ていたのに今は何も見ない。24歳になってもどこかで王子様を待ち続けた。実家というお城で。会社は残業はないけど給料も少ない、やりがいのない仕事で、私だけの特別な仕事ではなかった。

 それは久しぶりだった。キラキラの夢、私はローズと呼ばれ王子や騎士にちやほやされ、皆から結婚を申し込まれる。そんな夢、ああお願い覚めないでと思った瞬間、目が覚めてしまった。

 私はまた現実へ戻り会社へ行く。目が覚めると幻のように消えてしまう夢。今日は散々な日だった。慶子先輩がとにかく不機嫌で、女子社員全員に当たり散らして、大荒れし仕事が長引いたのでお昼もとれずに、そのまま午後の仕事を始めたのだ。父と母は今日から1週間旅行に出かけていて誰もおらず、夕食を買ってくるのを忘れて、明日の朝食もない状態だった。もうお風呂に入って寝てしまおう。そう考え眠りについた。

 今日の夢は昨日の続きだった。王子が結婚を申し込んでくるのだ。私は小さな声で、考えさせてくださいと伝えた。だって他にもっと素敵な人が現れるかもしれないし。王子は残念そうに、待ちます1年でも10年でもと、言い残し去って行った。ちょっともったいなかったかな?次にきたのは騎士だった。騎士って…役職が王子の方が上よね。やっぱり王子が良いわね!よし追いかけよう!


「王子様!王子様!好きです結婚してください!」


「勿論だよローズ姫!」


 嬉しい!現実ではあり得ないから。夢よ覚めないでと思ったそうするとまた夢から覚めたのだ。ああまたこの辛い現実に戻ってきてしまった。

 また支度をして会社に行く今日はコンビニに寄って、デスクに座り仕事を始めた。気付いたら終業時刻だった。朝座った記憶は残っているけどその後からは一切覚えていない。あまりにも単調な人生過ぎて覚えることをやめたのだろうか?いやもう帰ろう途中でご飯も食べてしまおう。そう思って牛丼屋に入ったのが運の尽きだった。


「俺会社帰りに牛丼屋に寄る女って絶対に抱けねえわ。」


 私の向かいの大学生風の男2人の内の、1人が私を見ながら繰り返す。最初は半笑いだったその男の友達も、最後には怒ってまじで止めてやれよというくらい、ずっと私に向かって言ってくるのだ。私は店員さんに、すみませんやっぱり持ち帰りでお願いします。と伝え帰ることにした。

 私が何をしたのだろう、私は泣きながら帰った。どうしても食べる気にならなくて冷蔵庫の中へ牛丼を置きお風呂に入って寝てしまった。

 今日もまた昨日の続き王子様と中庭を歩く。


「さあレディファーストだ先にどうぞ。」


 と優しく先に馬車に乗せてくれる。あの男とは違う本物の男、優しく礼儀正しい。夢なら覚めないで。そう願っても夢は覚めなかったというより、ローズの体が自分になじんできたのが分かった。ローズの記憶が蘇ってきた。王と王妃に愛されたローズ姫、結婚相手もよりどりみどりで皆から愛されている。ローズのまま眠っても起きてもローズだった。とうとう長年の夢が叶った!私は一生このままでいいありがとう神様と心の中で叫んだ!





  やっぱり彼女を選んで正解だった。友達もいないし、両親も彼女にさほど興味がない状態で、仕事は私でもできる内容だ。私はもううんざりだった。王室という文化も結局お父様の言うとおりにさせられる事もあのバカバカしいドレスも。うちの図書室に黒魔術の本なんて、子供騙しなもの見つけたときは、笑ってしまったけど意外と役に立ったわね。大丈夫よ今日から私が綾になってあげるからね。そっちはローズとして頑張ってね。ああそういえば、あのエロ王子、他に妻がたくさんいるけどいいのかしら?まあもう関係ないわね。美味しいわこの牛丼今日の帰りも寄ろうかしら。じゃあさようなら。


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