藪雨編 1 席替え
俺藪雨零志は席替えが嫌だった。
――――――なぜなら隣の席の女子、音沙汰世織のことが好きだからだ。それも高校入学当初から。
入学式の時、世織は新入生代表としてステージに立って挨拶をしていた。その時に一目惚れしたのだ。
一年の時は違うクラスで二年になってやっと同じクラスの隣の席になったっていうのに!
なにげなく好印象だよっていうアピールをしてみることにした。
「音沙汰さん喋りやすいしまた近くの席だといいけどなぁ」
――――――これでどうだ・・・・?
「わ、私も藪雨くんすごく喋りやすかったし優しかったからまた近くの席だといいな・・・」
――――――あれ?かなり好印象じゃね?これワンチャンあるくね?
ワンチャンが頭をぐるぐるしてるうちに先生が「それじゃあ席替え始めるぞ。」と言い席替えが始まった。夢の学園生活あっという間だったな。
一番前かよ!!!!!しかも隣はヤンキーの里見八史かよ・・・
俺の天国みたいな夢の学園生活が・・・一瞬にして地獄に・・・。
とりあえず喋りかけてみようか・・・?うん、そうしよう。
「よっ里見、よろしくな」
「ちっ」
いきなり舌打ちかぁぁぁ・・・・。
そう。俺はずっと里見に嫌われているらしい。理由はわからないしなにかした覚えもないがな。
まあ自慢じゃないけど俺はまあまあモテる。頭もそれなりにいいしスポーツもできる。それと人気急上昇中のイケメン俳優に似ているらしい。テレビドラマとかあんまり見ないからその人のこと知らないんだけどね。
もしかして知らない間に俺里見の好きな人に告白されてたとか?まあいい気にしないことにしよう。それより音沙汰さんはどこだ。
―――――遠いなぁぁ!!まじか真逆と言っていいくらいの遠さだ嘘だといってくれぇぇ!
「あー!藪雨くんと離れちゃったねぇ~ドンマイ!」
「なにがドンマイなんだ?まあ隣が彩夢でよかったよ~」
―――――音沙汰世織はすごい人見知りだ。仲のいい人じゃないと砕けた喋り方ができないしすごく緊張してしまう。
世織に「ドンマイ!」と励ましまくってくるのは真部彩夢。世織の親友の一人で明るく元気ないい子。ついでに言うと世織の後ろの席の子が二人目の親友の新枦沙耶花。おとなしくてまじめないい子。
親友っていったけど実際には基本的にこの二人としか喋らない。というか喋れない。
―――――でも藪雨くんとは自然に話せたんだよね。友達になっても大丈夫だと思ったんだけどなぁ。
「ね、世織ちゃん。昨日のリラフト見た?」
そう沙耶花は世織に喋りかけてきた。
「あ、見た見た!急展開だったよね!」
「あー!それあたしも見たよ!世織はやっぱり見てたかー!さすがガチオタ!」
「・・・その言い方やめてよもう。ただアニメが好きなだけなんだから。というかみんなにオタクってこと隠してるんだからあんま大きい声で言うな」
世織は実はアニメが大好き。よく沙耶花とオタクトークで盛り上がっている。彩夢はなんでも興味津々だから世織たちが見そうなアニメを自分でピックアップして見るようにしてるらしい。
ちなみにリラフトって言うのは【Lilas Football~リラ フットボール~】と言う女子サッカーのアニメだ。個人的今期の最推しアニメだ。キャラかわいい声優もばっちり当てはまってるストーリーもいちいち続きが気になってしまう感じ!ちなみに声優も好き!最近だと村田莉波さんと朝口彩香さんが推し!
―――――はあ・・・こればれたら多分藪雨くん引くだろうな・・・
そう思うとちょっと心が苦しくなった。その時
「というかさ、世織って藪雨くんのこと好きでしょ。あたしにはわかる」
!?驚きのあまり声が出せない。なぜなら恋なんてしたことがなかったから。これが恋ってやつなのかな・・・?いやいやいや
「い、いや彩夢恋したことないくせになにがわかるのさ」
意地を張って言い返したのがこれだった。彩夢が実際に恋してたかどうかなんてわからないのに。そうとうテンパってるな。
「確かにあたし自身はしたことないけどね~してる人はいっぱい見てきたのだよ」
なるほどそういうことか。確かに自然に喋られる男の人は初めてだ。
これがほんとに恋なのか?
そう思うとちょっと藪雨くんを意識するようになってしまった。
そーだ、あいつらはどこの席にいったんだ?
あいつらとは俺の友達の武部洸と井下渡のことだ。
洸はおちゃらけているが真部さんのことを小学校の時から一途に思い続けている。渡はメガネかけていてぼさぼさ頭のオタクだ。俺もアニメ好きだからよく渡とはアニメトークをしている。どうやら新枦さんのことが好きらしい。ちなみに髪整えてあげるとめちゃくちゃイケメン・・・多分俺よりも・・・。
っとそんなこと言ってる場合じゃねぇ!あいつらどこの席なんだ?
まずは洸を探そう。そう思い周りを見渡した・・・・って!?
「おっ隣真部じゃん。よろしくな~」
「おっと逆隣は武部かぁ~。知ってる人に囲まれたのラッキー!」
好きな人と隣とか羨ましいんだが・・・って俺もさっきまではそうだったけど!!
まあいい、仲良くやればいいさ!次!渡は!?
「あ、新枦さん・・・よろしくね!」
「あ、うん、井下君よろしくね・・・」
っておいぃぃぃ!!お前もかぁぁぁあ!
なんて不便なんだ・・・俺だけ好きな人と近くじゃない・・・しかも隣は俺のこと嫌ってるっぽいやつ・・・
ほんとに俺の夢の学園生活が終わった・・・。
次の日、俺はしんみりとした気分のままに起きた。当たり前だ。なんてったって隣がヤンキーの里見だし!音沙汰さんじゃないし!それに他のやつらは好きな人と隣になってるし!
「はあ・・・学校行きたくねぇなぁ。」
まあこうなってしまったのはしょうがない。俺は切り替えて学校に向かうことにした。
「おはよーっす。」
あれ?誰もいない?ていうかなにこれ・・・雰囲気が変だぞ?どんよりっていうかなんというか・・・とりあえずあんま長居したくない雰囲気だ。
「よう、藪雨」
そう背後から俺に語りかけてきたのは里見だ。その瞬間
「んぐっ!」
なんだこれ・・・頭が重いし動けない・・・なんかずっと耳元で囁かれてる?
俺はふとその囁きに耳を傾けちゃいけないと思い聞かないようにじっと我慢をした。
「もう・・・無理」
俺はそのまま倒れこんだ。
「ふふふふふふ・・・あーーーーはっはっは!!これでいい・・どうやら音沙汰が好きなのは藪雨らしいからな・・・頑張って会得したこの催眠術で音沙汰をせいだいに振ってもらうからな。」
初めて投稿させていただきました。
このストーリーは藪雨零志くんを中心として話が進んでいきます。もちろん他の人に着眼点を当てた話も後に上げようと思っています。
そして第一話は各キャラの軽い紹介と誰が誰に対してどう思っているのかをわかりやすくした回でした。
そしてこれからはのほほんといろんな作品を投稿できたらなと思っています(まだ何作品か考えてあるので)
もちろんこの3couplingsも自分の想定してるエンドまで投稿するつもりです。