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この理不尽を絶対に忘れない、絶対に幸せになってやる。
そんな感情を自覚したのは何年前からだろう。
殴られるたび、罵倒を浴びせられるたびに強く私の中に刻み込まれたこの感情。
正直に言うと殺そうと考えたことは何度もある。
でも殺した後、捕まってしまうんだろうなぁ。私の人生それで終わってしまうのかって考えると実行に移せなかった。
私は、私が幸せになるために生きたい。
家族に怯えて言いなりの人生じゃなく、毎日を楽しんで生きていきたい。
そのためにはお父様や兄妹を超えなければならない。
魔術の才能は天地がひっくり返っても勝てないことを私は兄妹との訓練で何度も見せつけられた。
だから私は考えた。
才能で勝てないのならば経験、精神力、総合力で勝てばいいのだと。
生まれてこのかた燃やし続けてきた憎しみで鍛え上げた不屈の心、家事と嫌がらせの中で培った技術は誰にも負けない自信がある。
いつまでも才能に胡坐をかいて上から目線でうぬぼれていろ。誰からも傷つけられないくらい強くなって見せる。
父:
娘が生まれた。3つ上の息子は魔術の才能の片鱗を見せている。
この分なら娘にも期待できるだろう。
魔術の才能とはすなわち一度に放射できる魔力の総量である。
身体が成長するにつれ扱える魔力量は増えていき通常15才で伸びが止まる。
しかし娘は10才で伸びが止まってしまった…どうにかできないかと強く指導してみた。
思うように育たずイラついてつい力が入ってしまったが全く効果がなかった。
娘はいつからか殴りつけても無表情で返答をするようになった。
妹のほうが優秀なことが余計に腹が立つ。
せいぜい魔術以外のことで優秀になって私の機嫌を損ねないでほしい。