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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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72 移動手段

「危機を伝えるだけでも……手伝ってもらえないだろうか。」

「はい! 喜んでっ!」


 顔を隠しているにも関わらず、その下は満面の笑みであろうことが重々読み取れてしまうほどに、きらっきらと輝かんばかりの笑顔を放つマコトを見てマイラは少し思う。


 『あれ? 間違えた?』


 と。

 獣人を見てみたいとテンションが上がっていた事から、もしかしたら超速度で移動して先触れとして役割をこなしてくれるかもしれないと期待したのだ。

 遠く離れた故郷の父母や見知った者達に不幸が訪れんとしている事に気を取られすぎ、それをどうするかにしか意識が回っていなかった。


「……えっと、その……うちの領地の者に手紙を渡してくれるだけで……良いんだよ?」

「…………。はい!」


「おいちょっと待て。なんだ今の『…………』は!?

 ……獣人をこっそり見てこよう的な事とか思ってないだろうね?」

「…………。はい!」


「よぉし、いい返事だ。ちょっと考えるから待ってね!」

「はい!」


 テンションに釣られたのか元気よく返事をしたマコトに頭を捻らせるマイラ。

 獣人に興味を惹かれているマコトが手紙を届けたとして、その後、興味のままハイラント国を見に行ってしまう可能性が高いのではないだろうか? 否、見に行く気がする。

 ヘタレなマコトの事だ。無いとは思うが、もし万が一、獣人と話をして意思疎通を交わして、さらにさらに万が一意気投合した場合、『ちょっとだけ』とハイラントに行ってしまう可能性が無きにしも非ずだったりしはしないだろうか?


 なにせ食事に関してこだわりを見せるマコトの事。

 あっちの国の料理は美味しい物も多い。だからこそ、その万が一が考えられないでもないないない。


 そこまで考えると結論は出ているも同じ。


「うん! よし! とりあえず私も行こう! 心配だから!」

「え?」


 その後「じゃあ私も」的に結局全員で向かう事になるのだった。



--*--*--



 要請を受け、4人並びのジェットコースターの座席のような背負子を作って担ぎ移動する。


 万里を見通す目を通して移動距離がかなりある事は分かっていたので、1時間程移動してから休憩に人気ひとけのない丘の上で背負子を下ろす。


 するとアリサの顔が青い。


 それも当然。距離を稼ぐ為に結構な力で走っているのだ。しかも走る地面は整地されている訳でもなくジャンプだってする。

 つまり1時間ジェットコースターだったのだ。


「……大丈夫でござるか?」


 背負子に乗る前に、マイラから『皆勝手についてくるのだから移動時間を優先する! マコト殿も分かったね!』と移送手段に徹するよう厳命されていたから、マコトもそれを守った。


 もちろん担いだ背負子に乗っている人達の事は気になるけれど、背負子のバランスを取りながら地形の先を読み素早く移動するというのは存外気を使うもので、移動のペースを乱さないように足を進めたくもなるのだ。


 それにどうしても止まらなきゃいけない緊急時には背中に『止めて』の合図の蹴りが入って知らされる事になっていたからそれを信用した。


 結果。


「…………ちょっと待って……今話しかけないで。」


 アリサの顔は青い。


「あらあら、大丈夫アリサ?」

「最初は楽しかったんだけど……流石に1時間は中々にハードな物があるね。」

「私は……平気です……」

「強がりは得しないよフリーシア。君も顔がアリサくらいに青いじゃないか。」


 こうして見ると4人掛け席の真ん中の2人が平気そうで両端に座ったの2人の顔が青かった。

 酔いから回復する為の休憩を取りながら皆うっすらと気づく。


 『両端の席はヤバイ』と。

 

「あ~……ちょっと席替えしてみない?」


 アリサの言葉。

 全員に『きたっ!』という電流が走る。


 担ぐだけのマコトは目を全員に走らせ表情の変化を探る。

 テオはアリサと一度交代してみようかな? と思っているようでもあるけれど、可能であれば端には座りたくないような雰囲気。

 マイラは笑顔、フリーシアは交代に賛同するように首を縦に動かしている。


「あぁ、それは良いね。」


 まさかのマイラの賛同に思わず目を見開く。


「ただ、残念ながら私は自領に向かっている事もあるし何か異変を感じた場合にマコト殿に知らせないといけないからね。」


 なんと『自分は動く気はない宣言』だ。マイラは暗に『3人で交代したらいいんじゃない?』と言っているのだ。

 この言葉にテオの表情に笑顔が貼りつき背中が寒くなる。


 テオの笑顔は何種類かあるのは、この冬一緒に過ごしていたことでマコトにも分かるようになってきた。

 あの笑顔は『敵対』の笑顔だ。笑顔を浮かべながら口を開くテオ。


「あらそう……でもそれは他の人も変わる事が出来るんじゃない?

 どうせマコトくんは人の居ない所を狙って、道なき道を動いているんだし道案内は不要。それに横から声をかけて貰えれば背中を蹴って知らせるくらい皆できるでしょう?」


 テオの言葉にフリーシアが表情を暗くする。


「マコト様を足蹴にするだなんて、私はそんな事は……」

「おやおや? フリーシアは出来ないようだよ? う~ん、これはアレだね。テオとアリサが場所を休憩ごとに交代するのがいいんじゃないかな?」


「何を言っているの? 貴方もフリーシアと代わるのよ。

 いいフリーシア? 蹴ると言っても暴力を振るうワケじゃないわ。ただの合図よ。マコトくんはフリーシアに合図を受けたとしても気にしないわよね?」

「はい。」


 それ以外の返事が出来るだろうか?

 ここで一つ『我々の世界ではご褒美です』等とジョークでも言ったら良かったんだろうか?

 だけれども、時折あるこういう舌戦は関わらないのが一番平和なのだ。


 マコトはスっと影を薄くする。


「ほら問題ないって。それにフリーシア? 別に合図で蹴るって言っても足で知らせるのだから、蹴らなくても足で撫でるとかでも良いんじゃない? そうすれば触れ合う機会の一つよ。」

「むぅっ、そう言われては見過ごせません。」


 フリーシアは立ち直った。


「ぐぬぬ……まぁいいさ。元々そんなに固執していたわけでもないからね。

 いいとも。次は私とテオが両端に座ろうじゃないか。」



--*--*--



「…………っうぷ。」

「……ちょっと…横になって良い?」


 問い掛けているはずの言葉なのに、誰の回答を待つでもなくすぐに地面に横になるグロッキーなテオとマイラ。

 4人掛けの真ん中に座ったアリサとフリーシアはさっきよりもずっと平気そうだ。


「これは……」

「死活問題ですね。」


 アリサとフリーシアが連携して一言を放った。


「まさか……これほど変わるとは……思わなかったよ。

 縦揺れが……揺れが……うぅっ」

「縦も横も動き過ぎよ……」


 グロッキーな二人は地面とお友達になりながら呟いている。


「マコト様………目的地までは、後、何回程交代が必要になりそうですか?」


 全員の視線が集まり、ビクっとしてしまうマコト。

 特に横になっているテオの視線がかなり強かったように思えて怖い。


「10……11回くらい?」


 全員の目が死んだ。


「ふ……ふふ、さぁ……みんな選択肢の時間だよ。」


 マイラのゾンビのような声。

 ゆらりと湯気のように立ち上がりながら続ける。


「交代交代で地獄を味わうか、くじを引いてハズレを引いた人が端に座るか……さぁ、意見を出し合おうじゃないか。もちろん移動を諦めてここで待つという選択肢もある。」


「最後のは無いわね。」

「ないわね。」

「有り得ません。」


「それじゃあ私が言った二択で決めても良いんだね? ちなみにどちらが良いか決まっているかい?」


「ええ」

「大丈夫よ。」

「決まってます。」


「じゃあ『せーの』の声をかけるから、皆どちらか言ってくれ……せーの!」


「「「「 くじ引きで 」」」」


 一陣の風が駆け抜けた。

 テオは無言で生えていた草を4本引き抜き握って全員に見えるように出した。


「短いのが2本ある。それを引いた人が……ハズレよ。」


 全員がゴクリと息をのみ、そしてゆっくりと草に手を伸ばす。


「恨みっこなしで」


 テオの声に全員が頷き、そして引いた。


「あああああ!」


 マイラが叫びながら両膝、両手を地面につく。

 フリーシアが笑顔で小さくジャンプをする。

 アリサが呆然自失と言った雰囲気で天を見上げ、テオがほうっと安堵の息を吐いた。


 マイラとアリサが外れを引いたのだ。


「決まったわね……って、あれ? マコトくんは?」


 全員がキョロキョロとし、そしてフリーシアがすぐに視線を定め、全員が同じ方を向くと、座席が4席並んだ形ではなく、車のように2席ずつが2列に並んだ形に修正された背負子が出来上がっていた。


「いや……長いと酔うみたいだから、短く改良したらいいかなと思って。」




 女子全員の好感度が上がった。



--*--*--



 そんなこんなで安定し酔いにくくなり、トイレ休憩したくなったら足蹴にされるというご褒美を受けながらマコトの移動は進み、時折途中の村に寄ったりなどしながら移動し、翌日、トレンティーノ領へとやってきた。


 そしてまずマイラはすぐにハイラントの動きを本家へ伝えようと思ったが、もし事態が行軍訓練であり攻めてくるもので無いものであった場合、逆にこちらの動きから戦いとなってしまう恐れもある。


 だからこそハイラント国の目的を探る為に動く事にした。


 もちろん通常であれば、そんな独断で動く事などはないのだが、なにしろ今、手駒として数えられる戦力がアルスターの国軍よりも強いと言いるだけの自信があったのだ。


「というわけでマコト殿、さっそく獣人を見に行こうじゃないか!」

「わぁい!」

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