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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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59 下準備

 マイラと酒を飲んだ際に指示された森への一時避難をマコトは快く了承。

 そして合わせてフリーシアがそれらに絡んで一旦世話係から離れ、探索にも参加できない事も告げられ『あ、はい』と了承した。

 フリーシアはマコトの呆気ない了承に頬を膨らませる。もちろんマイラの提案の一連が自分の為である事を理解しているが、感情と心の動きは別。が、マコトがそれに気付く事はなかった。


 マイラはといえば、マコトからの了承を得てすぐに王都ライトリムの騎士団エンカンブレンサー宛てに騎士団専用の連絡を放ち、ヴィニス・アークラム・ハギンスと対する為の行動を開始した。

 マコトの反応は予想通りだったことから、自分の予想通りにエンカンブレンサー副隊長が隊を率いて訪れたとしても間違いなく森奥地に隠れてくれるだろうことも理解できていたし、テオ達にもやってくる魔女の怖さは十分に伝えておいた。


 不安要素はあれども最大の不安要素であるマコトが街から離れる事から、とりあえずは自分の思うように事が進みそうに思え胸をなで下ろす。



 だがマイラは出発までのマコトの行動までは読み切れなかった。



 森探索に必要な物はアリサやテオが準備を進める為マコトの手は一切必要なく、またマイラも念の為の準備やヴィニスの対応といった事で時間が取れず、完全にほぼ自由といえる余暇が5日程マコトに与えられた。

 マイラは長めの森への遠征となるからこそ、マコトは銀流亭でゆっくりとした時間を過ごし舌鼓を打ち英気を養う。飲んだくれてもいいし、酔った勢いで、その欲望を発散させる為に銀流亭内で女を買ってのめりこんでいてもいい。そう思っていた。なぜなら銀流亭内の女であれば最初から手は回してあるからだ。


 だがマコトは、テオとアリサの3人だけで出発する『大人だけの探索』という響きに心を躍らせる。


 参加者は、もう全員が大人。子供ではない。

 大人の探索。

 大人の朝から始まって、大人の夜まである大人の探索。

 その魅惑的な響きを、より艶やかに彩るべく『パンツ作り』に執念を燃やした。


 そんなマコトの行動など、少しの時間しか行動を共にしていないマイラが想像できるはずもなく、そしてその素材であるマンモレクの繭を大量に手に入れ保管している事なども知る由もない。


 欲望に燃え、職人と化したマコトは出発までの5日間。昼夜問わずに森付近に足を運びパンツ作成にその執念を燃やす。

 朝早くに森へと出かけ夜遅くに戻ってくる生活。

 一枚でも多くのパンツを作るべく少しの時間も惜しんで働く。


 ついには城壁の出入りについても、テオやアリサに頼る手間や、頼めば外に出る理由を話さなくてはならなくなりそうなことから、それを避ける為に人目につかないようジャンプで城壁を飛び越えて行き来するという荒業まで成し遂げてしまう始末。


 普段なら絶対にそんな事はしない……怖くて出来ないマコトだが……パンツが待っていた。パンツが待っていたから仕方がないのだ。

 情熱により街と人の常識から外れたマコトは、ただ無心に3人を思いながらパンツを作るのだった。



 そんな生活を繰り返す様子を誰も知らないかと思えば、そうではない。フリーシアがいる。それに銀流亭で見送る者達も。


 フリーシアは現状最悪の場合、誘拐される可能性もある程の危うい立場だからこそ、マイラに解決までは自分の同行なく屋敷から出ないように厳命されており、それを守るしかない事をしっかりと理解していた。

 フリーシアは直情的な面も多々あれど年の割に冷静であり、マコトが目の前にいなければ、きちんと考えて行動する事もできるのだ。


 フリーシアの中では、最終手段として貞操を狙われているとマコトに訴える方法も考えていた。

 マコトに訴えれば助けてくれるだろうことも想像できる。だけれども、その場合は、その後に自分もマコトも、ヴィニスだけではなく、マイラ、そしてテオに追われる事になりかねない事も理解してしまっており、カーディアの街で楽しく過ごしているマコトの生活を奪う事になる。そして楽しく過ごせなくなる原因を作った自分にマイナスのイメージを抱く可能性が怖く、それは本当の最終手段として胸にしまい、マコトに影響がないように解決しようと動いているマイラに協力を惜しむべきではないと判断し従う事にした。


 協力する理由のもう一つとして、マイラから説明を受けた、これからやってくるかもしれない魔女の件もある。


 もしマイラの言う通りの魔女が本当に来てマコトを知った場合。

 マコトは二度と手の届かない所に連れ去られてしまう事も理解できてしまう程の権力と力の持ち主なのだ。

 だが、フリーシアにしてみれば権力者とのつながりができるという事でもある。権力があり力がある人間が知り合いにいるという事は使い方さえ誤らなければアドバンテージとして大きい。もっておいて損のないコネクションだ。


 だからこそフリーシアは魔女が納得するほどの魔法の才能があるように思わせる事ができるよう魔法の訓練に打ち込む。

 そしてフリーシアにとって魔法の訓練は、まったく苦ではない。


 通常、魔法の訓練はどれだけ魔力に慣れるかが重要であり多大な集中力を必要とする。

 常人の集中力というのは、そう長くは持たず、すぐに解けてしまうからこそ訓練は難しい。


 だけれどもフリーシアは違う。

 彼女にとっての魔法の訓練は『マコトが何をしているか知ろうとすること』自体が訓練になる。


 会うことができない中で募る思いから『マコトが今何をしているか』を知りたくて仕方がないフリーシアにとって、この訓練はメリットしかない。

 そしてやはりパンツ職人同様の集中力をもって探り続けた事により、成長期のフリーシアはマコトが何をしているかまでを探れるようになってゆく。


 遠く離れていようとも微かな変化を敏感に察知し的確に捉える程の超能力。

 マコトの行動を知ろうと、マコトが『何を』持って『何を』しているのかを探ろうとする事で、マコトの言うところの魔素の動きを検知までもできるようになっていたのだ。



 そして知る。

 マコトがパンツを大量に作っている事を。



 フリーシアはマイラと協力関係にある事から報告をし、マイラはその報告を受けて『そっとしておこう』と優しく見ないふりをする。

 だけれでもフリーシアは違った。


 自分の為に作られているだろうパンツを放置したくなかった。なによりもマコトが性的な目を向けてくるパンツを気に入っていたのだ。


 だからこそ出発前日に大量にパンツを作り終えた職人が、作り終わってから大量のパンツを前にどう皆に渡して良いか分からずにマゴマゴしている気配を察知し、マイラを説得して共に訪れ、マコトの前で、以前作ってもらったパンツを褒め、そして巧みに会話を誘導し

「では私がテオ様とアリサ様にも配っておきます」

 と説得して、満開の笑顔の職人から全てのパンツの譲渡を受ける事に成功した。


 もちろんフリーシアの言葉は「では私が(全部貰いたいけれど、仕方がないので)テオ様とアリサ様にも(少しだけ)配っておきます」というのが正しく、マイラの屋敷の衣装箪笥の中には大量のパンツがフリーシアの管理の下貯蔵される事になる。

 ただやはり職人の作った品の品質は確かで、それは貴族であるマイラの目にも適ってしまい、こっそりとマイラも愛用し始めるのだった。



 そんな動きがあったが約束の日を迎える。


 マコトは楽しみすぎて寝つけなかった事がまるわかりな寝不足の目を擦りながら、血涙を流さんばかりに悔しがるフリーシアに見送られ、テオとアリサと共に森へと姿を消した。


 そしてフリーシアはマイラに連れられ騎士団の訓練場へと足を踏み入れる――



--*--*--



 訓練場には、二人以外の姿は無い。


「それじゃあフリーシア……ここでなら魔法を使っても大丈夫だから、どの程度使えるようになったか見せてもらえるかな?」

「分かりました。」


 フリーシアは集中し、マコトに教えられたように空気を水だと思い、その筋道を通るよう魔力を構築して押しだす。

 すると強めの風が訓練場に吹いた。

 その風を感じながらマイラが渋い顔をする。


「う~ん……今のが全力かい?」

「全力です。まだ自分の魔力というのが把握しきれていないのと魔力操作練習不足でしょうか……」


「う~ん……これでも確かに納得できなくもないけれど、ただそれでも地竜の鱗が対価だからねぇ……完全に納得にできるかというと難しいと思えなくもないなぁ……」

「申し訳ございません。」


 フリーシアは全くそう思ってないような口調で謝罪を口にする。

 マイラも気にすることなく続けた。


「で、本命の方はどんなものかな?」

「……」


 フリーシアは目を一拍だけ閉じて、すぐに顔を上げる。


「もう間もなく、この訓練場に3名の方がやってきます。全員男性です。」

「ほう。他に気の付く点は?」

「二人は槍でしょうか? 一人は小盾と剣を持っています。」


 マイラは訓練場入り口に目を向ける。

 すると3分程して、人の気配がし始めたように思えた。


「うん。これなら説得に問題は無いね。

 ちなみにだけれど、その索敵はどれくらい魔力を使うんだい?」

「マコト様のことを探って良いのでしたら一日ずっとでも。他の人間や物を探すのであれば、2~3分が限界です。」

「んん……まぁ、やる気次第で大分使えそうと理解しておくよ。」


 会話を終えた瞬間に、訓練場に男達が姿を表した。

 手には訓練の途中で来たであろう事が分かる訓練用の槍を2人が、そしてもう1人は小盾と剣を持っていた。


「小隊長。お呼びですか?」

「あぁ、すまない。用は解決したよ。有難う。」


 一礼をして帰っていく男達。

 マイラは満足そうに一つだけ頷く。


「さて……これで用意は整ったね。来るなら来いソフィア!

 ソフィア・サルバドール・クレイトン!」


 マイラは握り拳を掲げる。


「でも……できれば使者だけ来てっ! お願い!」


 が、すぐに手を合わせて祈った。

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