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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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39 ずるい身体


 神様に放り出されてからというもの、日々の生活に追われてすっかり忘れていた事があった。


 自分の身体の能力が日本で暮らしていた頃から考えて異常である事は間違いなく分かっていた。だけれど、あの森で生活する上では、神様から与えられた能力が無ければ快適に生活する事は不可能であり、楽しく生活していく為には必要最低限の力であるといつの間にか認識し、そして忘れていた。


 神様からこの世界に誘われた時に言われた言葉……この世界の人達から見て『チートなあれな感じ』になっている事を。


「えぇ!? ……あのマズイ肉に……こんな価値が?」

「マコトくん……マズイ肉って……まさか『ギュン』の肉も食べたの?」


 結構露骨に不快感を覚えたような顔をするテオさんとアリサさん。

 フリーシアさんだけは表情の変化がない。


「うっ……一応、草とか茸よりは動いている動物の方が毒に当たる確率が少なそうだと思ったので……」


 ギュンという名前がついていたのは、簡単に言えば蜥蜴。コモドドラゴン風な蜥蜴の事だ。

 土をかぶって隠れていたりして結構急に出てきてビックリするヤツ。


「大丈夫だったの?」

「まぁ……はい。特には……不味かったのを我慢して食べたくらいにしか覚えてないので……」


 返答に対してアリサさんが頭を振りながら口を開く。


「ギュンは毒があるわよ? 麻痺毒。

 身体に入ってしまえば1~2日は動けないでしょうし、運が悪ければ死ぬこともあるくらいの強い毒よ。」

「えっ?」


 驚いた顔をしてしまう。フリーシアさんも疑いの目をアリサさんに向いている。

 だって自分は生きているのだ。


「えぇ本当よ。

 弓を使う人間や罠を張る人間にとって、時間が経てば問題無くなる麻痺系統の毒は必要だし、中でもギュンの毒は特に強いから薄めて使う事もできて携帯性もいいから需要が大きい。だから報酬も高価なの。」


 つい、信じがたい気持ちを肯定してくれる人を探して目が泳ぐ。

 テオさんは困ったような顔。アリサさんは信じられないような物に呆れているような顔。


「あ、あれですよね? 毒袋的なところを食べなければいいんですよね? 肉なら問題はないんですよね?」

「う~ん……そう……ね。1ヶ月くらい毒抜きしたら食べられないことも無いんじゃないかしら。」


 狩って即日食べました。


「ん……」


 何も言えなくなり、そっと口を閉じる。

 空気を察したのか、テオさんとアリサさんも口を噤んだ。


「やはり、マコト様程のお方となれば毒に対する鍛錬もつまれておられるのですね。フリーシアは感動致しました。流石です。マコト様。」


「んん……」


 眉間に皺を寄せながら笑顔で何とか正面のフリーシアさんに笑顔と高い声での返答をする。

 褒めて貰えたけれど、自分は何も鍛錬していないので、どう反応していいか分からなかったのだ――



 ――『酒好きの子熊亭』で食事をした後、場所はハンターが集まるハンターギルドへと移動した。

 これは『ハンター』という職業に興味を持った自分にテオさんが詳しい説明をしてくれる事になったからだ。


 イケメン殿は所要があって食事後は行動を別にしている。

 フリーシアさんはなにやらハンターになる事を皆に公言しているようで同行する事になった。


 ハンターギルドに足を踏み入れると、少しざわっとして注目が集まったので、びっくりしていると、テオさんがあっというまに会議室のような所に連れて行ってくれた。

 現在はハンターギルドの会議室内で隣のテオさんがギルドの所有しているであろう資料を基に隣に座って説明してくれている。


 そしてその説明から『ハンター』という職業は、ハンターギルドが報酬を出す獣を仕留めてくるのが仕事なのだと知った。

 これは森の中で生活していた自分に有利な仕事と思い、話を聞いていると、いい額の報酬の出る獣がことごとくマズイ肉だらけ。


 中でもワースト10に入る程にマズかった肉が高額報酬で驚いての冒頭である。



「ううん……

 美味しい肉の方が価値があると思ったけれど……そうでもないんでござるなぁ……」

「ん?」

「あ、いえ、なんでもないです。価値の基準が分からないなと思って。」


「あぁ、そうね……もちろん美味しい肉も価値があるわよ。

 マコトくんの貯蔵庫だろう所にお邪魔した事があったんだけれど、あの中にあった肉には価値のある物も多かったわ。

 『アキベカ』とか『シュリオン』っぽい肉があったのは見たし。

 でも食べる物となると旬の時期に煩かったりするのよ。だから私達が狙うのは主に『利用価値のある獣』」


 テオさんの言葉に続いてアリサさんが口を開く。


「中にはハンターの私達が何に利用するのか分からない依頼とかもあるけどね。キュバラムの骨とか。

 でも私達にとって『何に利用するか』なんてのはそんなに重要じゃないの。重要なのはソレが『いくらになるか』よ。」


 さらにテオさんが続く。


「そ。下世話な話だけどハンターという職業において、いかに高価な報酬を手にする依頼をこなすかが重要になるわ。

 もちろんお金が全てだとか悲しい事は言わない。だけれどお金が無ければ何も手にする事は出来ないのも事実。世の中ただで生きていくことは出来ないわ。

 特にハンターの道に入る人間はその事を身をもって体験している人間も多い……フリーシアもお金の無い辛さは知っているでしょう?」


「私も一庶民ですから。庶民は皆、裕福とは言えませんからね。もちろんです。

 ただ、テオ様はその中では裕福なように見えますが。」


 テオさんがにっこり笑う。


「今は……という言葉がつくけれどね。

 幸いな事に私は人に恵まれたおかげで私を指名しての仕事が来るから、それでいいお金を貰えているというだけ。

 でもこれはなんの保証もないもの。極論をすれば明日には消えてなくなっているかもしれない程度の裕福さなのよ。

 それに怪我をしたりして身体が動かなくなれば、どうにもならない。」


 テオさんが悲しげな笑みを浮かべると、フリーシアさんもどこかで同調したような笑顔を作った。


「ただ、ハンターには裕福になれる道もある。

 獣の中には人生が変わる程の価値を持つ獣が居る。マコトくんが倒した『地竜』なんかは代表的な例ね。」

「流石でございます。マコト様。」


 フリーシアさんにキラキラとした笑顔を向けられ、苦笑いを返す。


「なぜ地竜に高価な報酬があるか。

 それはハンターギルドが高額な報酬をかけているという事が理由に挙げられるけれど……なぜ高額な報酬がかけられるのか分かる? フリーシア。」

「あまり私が若いからとバカにしないでくださいますか?

 高額な報酬がある理由はただ一つ。リスクの大きさ故でしょう?」


「ふふっ、バカにしているわけじゃないわ。怒らないで。

 なぜこんな質問をしたかと言うと、貴方はハンターとして歩みたいと私に言った。だけれど今の貴方は色々と誤解をしてしまいそうな立ち位置にいる事を理解してほしくて。」


 鋭い目をフリーシアさんに向けるテオさん。


「いい? マコトくんは地竜を倒した。だけれど特別過ぎる存在だから成し得たこと。普通の人間には絶対に無理。

 私達は依頼と報酬をよく見て、報酬が高額だと思ってしまう依頼をしようとしてはいけないの。

 高額と感じるということは分不相応だと自覚しているということ。未熟なハンターにとっては命を賭ける必要がある依頼ということなの。とても勝率の悪い博打を打つ事になる事を知っておいて。

 私はね。私に関わったハンターを無駄死にさせるような事は絶対にしたくないの。」


 普段柔らかい雰囲気を纏っているだけに、真剣になった時の言葉の重みは違うように感じた。


「わかりました。」


 フリーシアさんも素直に言葉を受けとり頷く。


「でね。マコトくんも特別過ぎるからこそ知っておくべき事が沢山あるわ。

 さっきの話じゃないけれど、マコトくんが善かれと思って人に食べさせたら『毒』だったなんて事になったら貴方はすごく気に病む事になると思う。」

「は、はい。仰る通りです。」


 テオさんはすぐにニッコリと笑顔を作った。


「というわけで、私からマコトくんに改めて提案なんだけれど、私のハンターの仕事を手伝ってほしいの。

 その対価は『仲間としての正当な報酬』と『ハンターとしての知識と常識を教える』でいかがかしら?

 もちろん休みたい時は休んでもらってもいい。」

「それはこっちとしては願ったり叶ったりですけれど……その返ってご迷惑というか……お邪魔じゃないですか?」


 ちらっとアリサさんを見ると、テオさんも視線を向けた。

 視線を集めたアリサさんは無言のまま頷き、それを見たテオさんが口を開いた。


「邪魔だなんてとんでもないわ。アリサもお願いしますですって。

 なんといっても逆に私達が教えてもらうことも多そうですもの。

 もし何か私達が報酬を払わなくちゃいけなくなった時は相談させてね。」

「い、いえ。とんでもないです。有難うございます。」


 なし崩し的にハンターの仕事を手伝う事になった。

 しかもアリサさんも一緒らしい。それだけでもガッツポーズの一つもしたくなる。


「……フリーシアはどうする?」


 テオさんの問いかけにフリーシアさんの口元がピククっと動いた。


「私が一緒に行きたいと願ったら同行させて頂けるのですか?

 すぐにお支払できる対価も無く、ハンターとしての活動をしたこともない、ただ教えてもらうだけの人間。そんな人間は邪魔になりますでしょう?」


「ん~……確かにその通りだけれど……貴方自身はどうしたいの?」

「私はマコト様と共に歩みたい。マコト様が学ばれるのであれば、一緒に学びたい。」


「ですって。

 マコトくんはフリーシアがついてきても大丈夫?」

「マコト様……」


 二人からの視線が集まって断れるはずが無く、一つ頷く。


「マコト様ぁ!」


 フリーシアさんがわざわざ席を立って座っている自分に抱き着きに来た。


「じゃあ決まりね。

 フリーシアには一つ『貸し』にしておくわね。」


 テオさんが何か言った気がしたけれど、ぎゅっとちょうど胸に頭が収まるように抱き着かれて何を言ったのか分からなかった。


 ああああああああ! 胸が! ロリータ胸が!

 あぁああ! NOタッチ! NOタッチでござる!


 でも向こうからタッチだから……問題ないの? いやいやいやいや!


 ああああああ! 意外と厚い布越しでもわかっちゃうような、ふっくら柔らかいのはあぶないのぉおお! ノーブラ!? もしかしてノーブラじゃあないのぉおっ!? ああああん! もぉう! そうだよねぇ! ぶらじゃあとかそんなのないよねぇっ! ああああ! やらかいなぁもぉうっ!


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