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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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24/100

24 カーディア

 本日2回目の更新です。

 昼前に1話投稿していますので、読まれていない方は、そちらからお願いします。



「じゃあ、マコト殿。これを被ってみるかい? 一応用意はしてきたんだ。」

「マコトくんの長身で帽子なんてしてたら背が高くなりすぎてもっと目立つでしょう? 頭巾ずきんを巻いた方が自然じゃない? 私持ってるわよ?」


「どっちにしろ、その目の覆ってるやつで目立つわよ。ねぇそれ外したら?」


 ポニーテールじゃないけどポニテさんの言葉に一斉に注目が集まる。

 もちろん大慌てで首を横に振る。


 この凶悪な目を人に晒せば、また叫び声を上げられてしまいかねない。

 叫ばれてここから逃げ出すのは、もう一筋縄ではいかないような気がするのだ。


「うん。そうじゃないかと思ったんだ。やっぱり外さないよね。全然大丈夫だよ。」

「どうしても外したくないのなら仕方ないわよね。そういうことってあると思うわ。時々包帯を巻いてる人だっているから、そういう事にしておけばいいわ。」


 両隣からのイケメン殿と金髪ふわふわさんの笑顔と言葉にホっと胸をなでおろす。


「じゃあもう諦めてそれで進みなさいよ。

 こんな所でゴチャゴチャしてる方が悪目立ちするわよ。」


 ポニーテールじゃないけどポニテさんは溜息ひとつを吐きだして足を進めてゆく。

 そして、明るい人通りのある道(・・・・・・・)にまで進んでこっちを振り返って見る。


「さぁ。」

「行きましょう。」


 両隣のイケメン殿と金髪ふわふわさんに手を引かれ、もう逆らう事などできなかった。

 先導されながら明るい通りに出ると、すぐに視界に飛び込んでくる家。家。家。


「わぁ……ちゃんとした…家だ……街だぁ……」


 思わず声に漏れ出ていた。


「あらマコトくん。綺麗な声をしてるのね。」

「そうなんだよ。マコト殿はなかなかの美声の持ち主だよね。」

「本当にそうね。お姉さんもっと聞けると嬉しいわ。」


「…… (あ、すみません。)


「あら残念。まぁ……少しずつ慣れていきましょ。」

「そう。これからは沢山会えるんだろうからね。」


 視点を下にずらして思わず後ずさる。

 5~6人の歩いている人が、じろじろとこっちを見ているような気がするのだ。


「…… (う。)


「大丈夫大丈夫。怖くないよ? マコト殿。私がついているからね?」

「人が多くてビックリしちゃった? 大丈夫? 私がちゃんと隣にいるから安心してね。ここは、まだ人通りが少ないところなのよ?」


 やっぱり明らかに注目を集めてしまっている。どこかおかしいところがあったのだろうか?

 あああああ。どうしよう!


「ねぇ……私が思う注目を集めている理由なんだけど……お二人さんが、自分よりも大きな男をそうやって過保護に扱っている姿が物珍しく見えるからだと思うんだけども? どうかしら?」


 ポニーテールじゃないけどポニテさんの言葉にイケメン殿と金髪ふわふわさんは、引っ張っていた自分の手を見てから一拍止まる。静かに手を離し、そしてニッコリと笑顔を作った。


 そして黙った。


「ほら。さっさと移動しましょ。

 これから彼が利用する宿に行くんでしょう?

 私が用意したんじゃないから、どこか知らないわよ。」


「オホン。それもそうだね。それじゃあ案内するよ。」


「それじゃあマコトくんは私と手を繋ぎましょう? 目が悪いから覆っているんですっていう風にしておくなら、私が案内で手を引いている方が自然でしょう?」

「……それもそうだね。私が引くよりは自然かもしれない。」


「あらぁそうだわ。目が見えない人の案内だとしたら、しっかり腕を組んであげた方が、もっとそれらしいわよね。」

「――っ!」





 おっぱぁぁああああああい!

 アアァああああぁあああんあああああああああああああああああなぁぁあ!





--*--*--



 あぁ、まったくもってバカらしい。

 畏怖していた自分が今になって愚かに、そして滑稽に思えて仕方がない。


 確かに地竜から命を救ってもらったし助けてもらった。

 男でありながら女以上に魔力の扱いに長けている人間なんて見たこともなかった。


 でも、観察すればするほど、知れば知るほど、アレは小動物のソレと同じ。

 もし争いになったとしても少し脅せば間違いなく逃げていく野兎と同じ臆病者。負ける気がしない。


 もちろん彼の有用性はテオに散々聞かされ話し合いをさせられたから分かっているつもり。


 魔力の使い方一つにしても、学べるところは沢山あるだろう。

 彼が本気で戦い出したら足元にも及ばない。


 だけれども彼はきっと戦わない。


 すぐに放り出して逃げ出してしまう。

 そして隠れて、また誰かが見つけるまで出てこなくなるだろう。


 マイラもテオもそれをよくよく理解しているからこそ神経をとがらせて過保護に扱っているのだ。

 まったく何をどうしたら、あんなぬるま湯でふやけたような人間になれるのかが分からない。


 私に少しでもあの力があれば、もっと沢山の事が出来るようになるというのに、まったくもって世の中は不平等だ。


「随分とご機嫌が斜めだねアリサ?」

「お生憎様。いつもと変わらないわ。私はいつも不機嫌なの。」


「特に今日は、じゃないかい? もしかしてお姉さんを取られて悔しいのかな?」


 チラリと後ろに目を向ければ上機嫌で組んだ腕を引っ張っているテオの姿。

 彼はといえば、しどろもどろになりながら引きずられるように歩いている。


「まさか。私はテオが上機嫌で嬉しいわ。本当に。」


 両手を上に向けて軽く頭を振る。


「ふふっ、もうちょっと言葉に感情を合わせて欲しいところだね。」

「それで? マイラ。私達はどこに向かっているの?」


「『ふるき銀流亭』さ。」

「あぁ……嘘でしょう? まさか一冬を銀流亭で?」


「過不足があっては事だからね。

 それに私のような者の頼みごとをよくよく理解してくれる宿は、残念ながらカーディアには数件しかない。」


「貴方様はなかなか特殊だものね。」

「おや? その口ぶりだと色々調べたということかな?」


「依頼人が同行する案件でウチのテオが色々調べないわけないでしょう? まぁ、もっとも深く調べ始めたのは戻ってからだったみたいだけれど。」

「特に面白い事もなかっただろうにね。私は騎士団のマイラで十分さ。」



「で、貴方は彼で(・・)どこに向かうのかしら?」

「随分とはっきりと聞くね。まぁその方が有難いけどさ。

 先にも言った通り、私は野心はないんだよ。本当に彼と友達になりたいだけ。

 むしろ平穏を望んでいるからこそ誰かに見つかる前に彼を保護したいと思ってる。」


「私にはお貴族様の言葉は分からないから、私達の言葉で喋って欲しいものね。」

「ちゃんと喋ったつもりなんだけれどね。」


 マイラは苦笑いを返してきた。

 こういうやり取りはやはり私には難しい。


「まぁ、私は貴方の人柄は悪い人じゃないと思ってるから何かあったら手伝うわ。きっとテオもそうだと思う。」

「嬉しいよ。素直に。

 私達3人がしっかりと動かないといけないと思うから、本当に助かる。」


「もう1人いたでしょう?」

「あの娘が動くと、マズイ事になるのは目に見えてるでしょう?

 もしかしてソレを見たいの?」


「いいえ。うるさいのは結構よ。

 でも彼女はどこだろうと押しかけるでしょうね。

 鼻は良さそうだし、そんなに長くは誤魔化せないんじゃない?」

「対応は考えているし、万が一を考えての銀流亭でもあるさ。」


「まぁ……そうよね。顔合わせも私達3人だけだし。

 あの彼が進んで知らない人間と話をするとも思えないし。」


「おっと……話をしていればあっという間だね。マコト殿! 着いたよ。ここが君が一冬過ごす宿。『旧き銀流亭』だ。」


 貴族の区画の程近くに立つ老舗宿。

 カーディアの5本の指に数えられる高級宿だ。


 4階建ての貴族の屋敷とも思えるような作り。柵に覆われた敷地の中には小さいながらも庭と噴水まであり、静かに過ごせるのは間違いない。


 私はもちろん入った事も泊まった事も無い。

 噂に聞く宿がどういう所か知りたいメリナ当たりには自慢だってできるだろう。



 あぁ……まったく力があるというのは羨ましい。

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