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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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22 地竜の素材

 本日2回目の更新です。

 昼前に1話投稿していますので、読まれていない方は、そちらからお願いします。



「いい? よく聞いてね?

 これはね? この毛皮はね? そういう物じゃないのよ?」

「………… (あ、はい。)


 語尾のすべてに疑問符がつく形で詰め寄られ、ただ返事を返す事しかできない。


 相手は左手を腰に当て、脇を締めた右手で人差し指を立てて詰め寄ってくる。縦に動かす人差し指が疑問符の度にピタリピタリと止まると、それにつられて胸元が大きく開いている服から見える谷間が揺れ動き、どうしてもその深い線が気になってしまう。


 目を隠しているから分からないとは思うけれど、女性は男の目がどこを向いているかを察知する超能力があるという。だから極力見ないように努力する。

 金髪ふわふわスィーツ的女子さんに、初接触からスケベニンゲンであるなどと思われたくはないのだ。



 でもやっぱり視界に入ってしまう。ああああ。



「例えばの話だけれど、マコトくんがさっき食べていたパンが青銅貨10枚……いいえ、小銅貨1枚だったとして、それに金貨1枚を支払う人がいたらどう思う?

 私みたいに止めると思わない?」

「…… (あ、はい。)


「マコトくんがしたのはそういうことなのよ? あ、貨幣はわかるのかしら?」

「…… (あ、これ、ですよね。)


 着替える際に取り出してポケットに入れておいた銀貨を取り出して見せる。


「うんうん。それよ。大銀貨をもってるなんて偉い偉い。」

「…… (あ、あ。)


 自分よりもずっと背の低い女性に頭をよしよしと撫でられ、どうしたら良いのか分からず戸惑う事しかできない。


「服、ちょっと触るわね~。」

「…… (あ、あ、あ。)


 そんな俺に、まったく構うことなく金髪ふわふわスィーツ的女子さんは前かがみになり、ベストの端を両手で触って質を確かめはじめる。


 前かがみで強調されると、やっぱりどうしても視界に入ってしまう。だが見てはいけない。きっと超能力が発動する。


「う~ん……このベストは……上等ね……ズボンの質はなにかしら?」

「…… (あ、あ、あ。)


 屈んでズボンの裾を触り始める金髪ふわふわスィーツ的女子さん。

 屈んだ結果、膝で下から胸が押されて、いっそう強調される。もうそれしか視界には入らない。


「こっちも結構しっかりしてる……う~ん。一揃えで大銀貨4、5枚はかかりそう。流石といえば流石。

 急いでそろえた事を考えれば……そうね。大銀貨6枚はかかってるかしら?」

「…… (あ、あ、あ。)


 金髪ふわふわスィーツ女子さんが屈むのを止めて、考える為に腕を組むとさらにいっそう強調され、もうどうしたらいいのかわからない。

 超能力と意思の対決は、硬直という結果に結びつく。


 困り果ててイケメン殿に助けを求めようと視線を向けると、横に立っていたから同じものを見ていたはずなのに、白く燃え尽きているような気がした。

 なぜかは分からないけれど、とても助けを求める事ができる状態ではなさそうだ。


 金髪ふわふわスィーツ女子さんは、白くなっているイケメン殿の持つ赤熊の毛皮を奪い取って、それを見せつけるように詰め寄ってくる。


「いい? これはそういうことなのよ? この毛皮は大金貨で買い取る人がいてもおかしくないの。

 銀貨よりも金貨の方が高価な事は分かる? 大丈夫よね? 金貨もどれくらいの価値か説明する?」

「…… (あ、はい。) (ごめんなさい。)


 とりあえず謝る事しかできなかった。


「んもう。分からない事は分からないで仕方がないけれど、分からないまま物事を鵜呑みしちゃダメよ?

 いい? 何か困ったことがあったら私に聞くのよ? ちゃんと教えてあげるから。

 そういえば地竜の素材もこの人に任せるみたいなこと言ったんでしょう? 駄目よ? 何も知らないまま信用しちゃ。ほら、私が見て教えてあげるから。持ってきてるの?」

「…… (あ、はい。)



--*--*--



 違う。


 私の好きな苦痛はこういう苦痛じゃない。


 私が勝ってる上で精神的に虐げられる感じとかは最上だと思うの。

 圧倒的な肉体の暴力に立ち向かう苦痛っていうのも夢があって素敵。


 ただ、相手が圧倒的な肉体をもって精神を虐げてくるっていうか、敗者に鞭打つっていうか、いや敗者に鞭はソレはソレでとてもいいけれど、私が女としてどうしようもないところをピンポイントでグリグリ攻めるようなマネは違うと思うの。


 これじゃない。 

 私が求める痛みはコレジャナイ。


 そんな事を一人思いふけっていると、気が付けばテオ殿が主導権を握って移動が始まっていた。


「あれぇっ!?」


 慌てて意識を取り戻すと呆れたような顔のアリサが振り返る。


「あぁなったテオは落ち着くまで止められないから諦めなさいマイラ。とりあえずついて行くわよ。」

「えぇっ!?」


 慌てて荷をまとめて馬を引いて追いかける。

 程なくマコト殿が森の少し入ったところで立ち止まったので駆け寄る。


 私とテオ殿が両脇に立つ形で立ち止まった先を見ていると、マコト殿は地面に土魔法を利用して穴を開けはじめた。



「…… (ここです。)

「これは……また…………なんとも予想外だね……ここに地竜の素材を? まさか本当に全部持ってきたのかい?」



「…… (はい。)

「あれも冬を過ごすのに十分な量を確保できればと多めに言ったつもりだったんだけど……規格外に慣れたとは思ったけれど、つくづく規格外だなぁマコト殿は。流石だよ。」

「あのね。あなたはこの子に適当に物を頼みすぎだと思うの。もっときちんと私達の常識を教えて、それからきちんとお願いするべきだと思うの。」

「ごもっとも。」


 さっきまでの尖ったテオ殿とは、また違った尖り具合だ。

 正直こっちのテオ殿は苦笑いで対応するしかないような気がしてならない。


「…… (み、見ますか?)


 私が怒られているような雰囲気に気を使ったのかマコト殿が声をかけてきた。

 意外と気遣いが出来るタイプらしい。

 正直とても有難い。


「あぁ。これは……中に降りればいいのかな?」

「…… (は、はしご)

「ありがとう。」


 促されたまま視界を移すと、手前にはしご状の土があったのでマコト殿への信頼を表現する為にも何も言わずに降りる。

 まだ朝ということもあり、小さな穴から差し込む光は小さく中は暗い。


 地面に降り立つが、まだ目は暗さに慣れず中の確認は出来ない。

 自分で明かりをつけるか、悩んでいると突如光が灯った。


「うわっ、」


 一気に外にいるのかと思えるほどの光が発生したことで、目が眩む。 


(ごめんなさい。)


 マコト殿の謝罪が聞こえたことからも、またマコト殿が何かしたのだろう。

 流石に多少は慣れた。


「……なにこれ……」


 目を慣らそうと必死になっていると、明るくなってから入ってきたであろうテオ殿の声が隣から聞こえた。


「……うわ。」


 その後に続くアリサの声。


 なんだろう。私だけ見れていない。

 しかも目が痛くて見れずにらされる感じ。

 あぁん。これはこれで素敵。


 マコト殿が降りてきた気配を感じる頃。ようやく私の目も慣れて全容を把握できた。


 15人は余裕で入れそうな空間。

 壁は棚状に穴が掘られていて、そこには隙間なく素材が置かれている。

 場所を取りそうな物もまるで騎士団の装備保管庫のように、きちんと種類に分けられ、どこに何があるかが一目でわかるようになっている。


 大きな骨が目につくけれど、なによりも目を引くのは、鱗。

 綺麗に陳列され、何故か誇らしげに飾られている物がいくつもある。

 さながら宝物庫のようだ。


「本当に全部あるんだね……」


 事前に聞いて分かってはいたけれど、とても一人で運べるような量ではない。

 あの短期間で、ここまで綺麗に処理をし、そして一体どうやって運んだのかが気になる。


 私がそんな事を気にしていると、テオ殿とアリサがふらふらと素材に向けて歩きだし、触れるでもなく、顔だけを近づけて観察を始める。


 その気持ちは分かる。


 なにせここまで状態の良い地竜の素材なのだ。

 万が一、触れてどうにかなりでもしたら、貴族でもない人間に責任が取れるかどうか分からないから本能的に触れないのだろう。


「触ってみてもいいかい?」

「…… (ど、どうぞ。)


 彼女達に気遣って、マコト殿に声をかけ了承を貰う。

 気遣わない素振りで、誇らしげに飾られている3枚の地竜の鱗の所へと足を運んで手に取る。


「ん? これ……なんだかスゴイ色をしているね。

 なんだか他の鱗と違うようだけれど……もしかして竜にあるという逆鱗か何かなのかい?」


 私の言葉にすぐにテオ殿とアリサが近寄り私の手の鱗を覗きこむ。


(こ、これは)ですね。」


 私の両隣にいる二人を迂回するように遠回りで鱗の棚に近づいたマコト殿の声量が少し大きくなった。

 うん。やはり良い声をしている。


「鱗に、ちょっと、手を、加えたんです。」 


 普段からこれくらいで喋ってくれると嬉しいなぁ。もちろん言わないけれど。



 ……って、今、マコト殿、なんかおかしい事を言ってなかった?


「こ、この、鱗を、ですね。こ、こう。」


 私が疑問に思った事を解決しないまま、マコト殿は棚から鱗を一枚取り、地面におく。

 そして魔力を集中し始めた。


「ちょ、ちょっとマコト殿!?」


 私の声は聞こえていないらしく。

 みるみる変色してゆく地竜の鱗。


「あああああ!」


 私の焦りはテオ殿の大きな声で掻き消えた。

 マコト殿もビクリと身体を震わせ、変色も止まる。


「マコトくん! もう! なんてことしてるの! この地竜の素材はね、とても、とーっても貴重なものなのよ! こんなに完全に綺麗な鱗だったら、1枚でも大金貨の価値があるかもしれないのに! 」

(す、すみません。)


 ハンターとしてのさがを堪えきれなくなったのだろう。

 だがマズイ。

 叱責などマコト殿にとっては、とてつもない負担になる。


「ちょ、ちょっとテオ殿! これは全部マコト殿の物なんだから、自分の物をどう扱っても自由じゃないか!」

「だからこそでしょう!? これが全部マコトくんの物だからこそ、高い価値の物はきちんと高いと理解しておかないとタメにならないじゃない!」

(ごご、ごめんなさい。)


 んん! ごもっとも!


 だけど今は……今はぁ! 


「いい? マコトくん。ちょっとそこに座って!」

(は……はい。)


 マコト殿がぁ! もう泣きそうな感じになってるからぁっ!

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