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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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15 思惑

「じゃあマコト殿は家を無くしてしまったから、なんとか冬を快適に過ごしたいっていうのが望みなんだね。」


「……」

「ん? なんだか他にもしたい事がありそうだけど何かな?」


「………」

「えっ? 服? その毛皮はすごく立派だと思うけれど……あぁそうか、そうだね。良くも悪くも目立つから目立ちたいと思っていないマコト殿には酷かもしれないね。」


「……」

「あははは。いやいやいや。目立ちたくないと言っても、その顔を覆う布をつけている限りどうやっても目立つと思うよ。流石にそういった格好をしている人は見たことがないからね。」


「……」

「うん。確かに閉じこもっていればいいよね。正解だ。

 だけれど君もご飯を食べるだろう? 街で暮らすと自炊できる家に住まない限り、ほとんど外食になるから難しいね。でも街には美味しい店も多いから楽しいよ? それに自炊するにしても結局買い物は必要だし外には出なきゃいけないさ。」


「………」

「えっ? そうだなぁ……私のよく行くお店だと、もうそろそろ肉の香草焼きやシチューをよく見かけるようになるね。あれは店ごとに違う味だけれどシチューに浸したパンを食べると幸せになるよ。」


「……」

「ね? 美味しそうだろう?

 店の人が怖がらないように、古傷だとか言い訳を考えておくとか……って、あんまりマコト殿は言い訳をうまくできそうにないなぁ……まぁ、とりあえず私が一緒にご飯に行くなりして『こういう人なんだ』と分かってもらえれば、なるようになるよ。それの為にも服がいるか……」


「……」

「う~ん。私の隊員に背格好の近い者がいるから、それの服で良ければすぐ何とかなるだろうけれど流石にマコト殿に使い古しをまわすのはなぁ……できれば仕立てたいんだけれども……」


「…………」

「えぇっ? 慎ましいんだね?

 君の身に着けている毛皮と交換して欲しい人間はいくらでもいると思うから、ちょっと待てば上等な服はすぐに手に入ると思うよ?」


「…………」

「いやいやいや、流石に隊員の使い古しとその毛皮の交換は割に合わなすぎるよ。」


「……」

「えぇっ!? いやいやいや、駄目だよ逆に隊員が断るってば!

 そうだ! 2日! 街に戻って2日待ってくれたら私が責任をもって服を準備するから! いいかな!? ダメかな!? できれば私だってその毛皮は欲しいんだ……」


「…」

「わぁ! いいのかい! 有難う! すぐ! 街に戻ったらすぐに用意するから!」


 二人の意思疎通を眺めるけれど、駄目だ……

 なぜマイラがここまで意思疎通ができるのかが分からない。


 元々私は交渉役ではなく、そういった事はテオに任せていたけれど、まさかこんなところでその弊害が出るなんて。

 最初は地竜に襲われた際に『立ち向かったマイラ』と『助けを求めた私』の違いが彼の態度に出ているのだろうと思ったのだけれど、どうにもそれだけじゃない気がする。


「はぁ……」


 思わずため息がもれる。


「……」

「あぁ、アリサかい? う~ん。多分地竜に負けそうだったことが悔しいんじゃないかな? 彼女は相当な負けず嫌いのようだからね。」


 私の事が話題にのぼったと思い彼を見ると、彼はすぐに顔を横に背けた。


 明らかに視線を外されている。たまにマイラが私の事を口にしたかと思って見れば、ずっとこうだ。


 男に言い寄られ続けるのはうんざりだけれど、あからさまに無視され続けるのも相当に堪える。

 自分に女らしい可愛らしさや愛嬌が足りない事はテオに『もっと賢く生きなさい』とよく怒られるから自覚もしているけれど、今更自分の性格をどうこうしようとは思えない。


 ハンター相手であれば行動で自分の有用性を示せばそれで良かった。

 ……だけれど、地竜を屠るほどの相手の前では、その有用性がなんの役にも立ちそうにない。


「私が気に入らないのは分かるけれど、せめて話しくらいはして欲しいわ。」


 そう一人ごち、また視線を下へ外すのだった。



--*--*--



 むぁぁぁ! ポニテさんを拙者が気に入らないですと!? そんな事は無い! そんな事は無いでござる! ポニテさんがなにやら誤解をされておられる模様でござるぅ! イケメンどのイケメンどの! はよう、はよう誤解を解いてくだされ!


 拙者ポニテ殿を気に入らぬなどの事はございませぬぞ! むしろ3次元においてはかなりの好意をもっているでござるですよ! もちろん2次元は無敵すぎて相手にならぬのが残念でござるが!

 イケメンどのぉ! なんとかポニテさんの誤解を解いてくだされぇ!


「あぁ、そうそう。負けず嫌いと言えば、実は私もなかなかの負けず嫌いでね――」


 いやぁぁん! 関係ないそれぇっ!



--*--*--



「あぁ、そうそう。負けず嫌いと言えば、実は私もなかなかの負けず嫌いでね、アリサが赤熊を倒せる一撃を見舞ったおかげで私が仕留める事が出来たんだけれど、正直、あの時はアリサに剣の腕で負けたと思ったよ。

 条件は同じはずなのにアリサの剣は早かった。だから私は傍観ぼうかんする事しかできず、その結果、後に生まれた隙を突くことができたに過ぎないからね。

 マコト殿から見れば私達の剣は児戯に等しいかもしれないけれど、これでもそれなりの自信があったから正直ショックだったよ。」


 マコト殿のアリサに色々と言ってほしそうな願望は無視して、先にしていた話を続けアリサに話題を振る。

 アリサはため息を吐きつつもこっちに視線を返し口を開いた。


「何度か言っているけれど、私にしてみれば結果として私が仕留めきれなかった獲物を、貴方が仕留めてくれた。結果が全てよ。

 それにあの時、貴方が仕留めなかったらと思うと正直ぞっとするわ。戦う気に満ち満ちた赤熊なんて真正面から対峙したくもないもの。」

「ふふっ、じゃあお互い様だね」


 軽く笑い返し空気を和ませる。

 アリサが顔を上げた事で、マコト殿も少しは納得したらしい。


 マコト殿が望んだようにアリサの誤解を解く事は簡単だ。

 アリサにマコト殿の好意を伝え、さらにマコト殿が単純に口下手で人づきあいが苦手であることを伝えれば良いだけ。


 だけど、それを真っ当に伝えるのは面白くないじゃない。

 面白くないからこそ誤魔化す。


 アリサはアリサでマコト殿の小さな言葉や微妙な動きから意思をくみ取るのは苦手なようだし、そのまま諸々を誤解をしてくれている方が私にとって都合がいい。



 貴族としての私の視点から考えるとマコト殿はとてつもない価値を有している。

 だが私が見た限り本人はその圧倒的な力を持ちながらも、まるで風来坊のような存在。風が吹けば流れ、気が付いた時にはいなくなっている可能性があるような希薄さがある。

 逆に言えば本人が望む風を吹かせれば容易に動くということでもある。


 末端とはいえ貴族社会で過ごした経験。それが嫌で逃げ出したはずだけれど、ここにきて表情を読み、裏を読み、笑顔の裏で謀るという能力が役に立つとは思わなかった。


 マコト殿はアリサに気があるようだ。

 だけれど本人の様子を見る限り自分でその事をアピールする事は出来ないだろう。


 アリサにしても色々考えすぎているのか、それともマコト殿の強さに気後れしてしまっているのか勇猛さが微塵もなく、まるで借りてきたネコのように大人しい。


 もしかするとアリサがハンターであることも少なからず影響しているかもしれない。

 なにせここまで優秀なハンターだ。こんなハンターが一人いれば他のハンターは誰も必要なくなってしまう。少なくとも彼がハンターとして活躍しだせば、別の職を探すことになる人間も少なくないだろう。

 それを何となく察知しているに違いない。


 だから、この二人を放置しておいても、きっとどうにもならないだろう。


 ただ、テオ殿が出てくると、あの方も洞察力が優れているから、あっという間に事態は進んでゆくようにも思える。だからこそ、なんとか可能な限り離しておきたい。

 そしてそのわずかな間にマコト殿の私の印象を最大限に上げ、そして良き友人であり、頼れる相談相手としての地位を固めておく必要がある。


 恋人……としては、とても魅力的ではあるだろう。

 貴族の視点から見れば彼を手懐けれる事ができれば大貴族への道も想像に易いほどで、それこそ喉から手が出るほど欲してやまない。

 だけれど私は騎士団に入ると家を飛び出した為、貴族の道具として女を使うことはしたくない。


 一人の女として彼を見ると、彼は望めば望むだけ富を運んでくるだろう相手であり、引く手数多(あまた)の優良物件だ。

 ただ、その力の持つ魅力が眩しすぎて、そばにいればその光に消されかねない事が容易に想像できる。


 貴族であろうとなかろうと、彼と男女の仲で親しいとなれば、あっという間に権力争いに巻き込まれ酷い目にあうのが落ち。


 それはそれでなんともゾクゾクするけれど、私はどちらかといえば、アリサに敢えてマコト殿の本心を隠していた事がバレて、大いに罵られることの方が気持ちよさそうに思えるのだ。


 だから私は彼に手を出すつもりもない。


 ……いや、逆に手を出した方が罵りは酷いのだろうか? だったら考えないでもない。



 とはいえ、どうやら彼は私を男だと思っているから安心しているようだし、まだその時ではないだろう。

 しかし、胸が無いとはいえ、流石にちょっとどうかとも思う。

 だけど、その方が気安い関係が築けるようだから溜飲を飲んで我慢しよう。まったくもう。



「さて……では街に戻る為にも仕事の話をしよう。」


 一つ手を打ち注目を集めると、二人が私を見たので言葉を進める。


「私達は『燃える大蛇』の調査でここまで来た。だけど、その原因はマコト殿だった。」

「……… (なんかごめん。)


「いや、マコト殿が謝る必要はないだろう。私達が勝手に誤解し勝手に調査に来たのだから。」


 マコト殿に向き直り笑顔をかけておく。

 小さなことだけれど、彼にはこういったフォローが大事だ。


「で、話を進めるけれど『マコト殿の魔法である』などと報告しても信じる者はいない。なぜなら人の手では不可能な程の魔法であり、実際に見ない限り信じる事はできないからだ。私達だって地竜を屠る力を見ていなければ信じなかった。」


 私の言葉にアリサは頷いて見せる。


「名を馳せるチャンスではあるけれど、マコト殿は真逆。目立たない事を望んでいる。

 そこで、こう報告してはどうだろうか? 『燃える大蛇の後を調査したところ燃え尽きた木があった。そして近くに――』」


 私はそこまで言って、地竜に目を向ける。

 二人もつられて地竜を見る。


「『地竜の鱗と牙が落ちていた――』と。

 きっと報告を受けた人間は『地竜ならばありえるのかもしれない』と思って矛を収め納得するだろう。

 そして私達は仕事を無事に終える事が出来るし、その内容も嘘はついておらず真実しか報告していない。

 マコト殿には折角仕留めた獲物の一部を頂く事になるけれど、その代わり表舞台に出る必要がなくなる。

 みんなが幸せになれると思うのだけれど?」

 

「私はそれでいいわ。」

「……… (お、おっけーです。)


「よし決まりだ。」


 私は二人に笑顔を向ける。

 そして地竜に再度目を向ける。


「しかし惜しいな……あの地竜の素材があれば街の一等地だって簡単に手に入れる事ができるだろうが、報告してしまえば流す事は出来ないだろうな……」

「……… (んっ)?」


「そこでマコト殿に相談なのだが、あの地竜の素材を私に預からせてはもらえないだろうか?」

「ちょっと待って! あんな素材を丸々手に入れようだなんてそんなマネさせないわよ。」


「…… (えっえっ)?」


「ふふふアリサ。とりあえず落ち着いてほしい。君達が手に入れても返って大変だろうからの提案なんだから。」

「どういう意味?」


「さっきの内容を報告すれば、きっとハンターにも『地竜を刺激するな』といった内容の報せが発せられるだろうことは想像できるだろう? だからアリサ達ハンターが素材を手に入れたとして換金自体が相当難しくなるんじゃないだろうか?」


 アリサは険しい顔ながらも口を噤む。私の言葉が間違いではないと判断したのだろう。

 マコト殿が誤解をしないように丁寧に言葉を続ける。


「言ったと思うが私は貴族に名を連ねている。一頭丸ごとは流石に難しいけれど、持ち運べる素材になっていれば秘密裡に隠すこともできるだろう。

 そしてこれから季節は冬になる。マコト殿は街でゆっくりと過ごすことが目的であり、その為にはお金が必要になる。

 もちろん私も諸々用意したり協力したりするけれど冬はなにかと物入りで心許なくなる可能性がある。なにせ恥ずかしながら末端の貴族でしかないからね。」


 肩をすくめてみせた後、すぐに指を一つ立てる。


「だからこそ担保として地竜の素材を預かっていればと思ったんだよ。

 貴族の伝手があればこっそり少量売却する事も可能だろう。売れればマコト殿が金銭での不自由をしなくなる。もちろん売却するのは鱗とかにするし、あれだけ大きな地竜だから全部を売却する必要もない。

 春になればマコト殿に残った素材を返せばいい。その頃にはある程度ハンターでも取引ができるかもしれないから、その時に欲しければ改めてマコト殿にお願いすればいい。そう思ったんだ。」


「…………」

「…………」


 アリサは無言で私を見ている。

 マコト殿はとりあえず私とアリサの様子を見ているようだ。

 おおよそ街や素材の価値に明るくないことから、アリサの反応を見て妥当かどうか判断しようとしているのだろう。


 私は笑顔のままアリサを見る。


 アリサはため息をついた。


「……筋は通ってるわ。代案は私に無い。流石はお貴族様ね。」

「光栄だ。」


 アリサの反応を見たマコト殿も、それで良いというように頷いている。きっと何も分かっていない。

 アリサから多少の棘は感じれて気持ち良かったし、これでよし。


 さて、後は最後の仕上げといこう。


「それじゃあマコト殿! 私とアリサは街へ戻ってマコト殿が街に滞在できるようにするよ。いい冬にしよう!

 もしできるなら、地竜を売り易いように解体や加工してもらえると、とても助かるんだけど……お願いしても大丈夫かな?」

「…… (あっはい。)


「えっと、街に帰還するのに7日程かかるだろうし、その後準備にかかるから、10日後くらいに街の近くで落ち合おうか? 私が森の近くで呼べばわかる?」

「…… (あっはい)。」


「ちなみに地竜を運んだりとかはできるのかい? 人手はさっき話した通り、こっそり動く必要があるから、あまりかけれそうにないんだけれど……」

「…… (あ、やれます。)


「そう! 流石だね! うん。じゃあまた十日後に会おう! 楽しみにしているよ!」

「…… (あっはい。) (ありがとう)


 こうして私達は再開を約束し、別れた。



5万文字近くまで書いても、未だ街にすら入れていない主人公……


むしろヒロインとすら、まともに会話していない主人公……



あれ? おかしいな?

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