表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/100

14 マイラの強み

「はっ!」


 唐突にさっきまで見ていた視界が変わった。

 自分が横に寝ている事が重力のかかり方から分かり、顔を動かすとアリサの覗き込む顔があった。


「気が付いた?」

「私は……気を失っていたのか?

 確か……誰かに助けられたような……そこまでは覚えているんだが……」


 補足と確認を目でアリサに求める。


「えぇ。かなり無理をして走り、そして思い残さないように、かなりの魔力を使って魔法を使ったんでしょ? だから助かったと思って緩んだ瞬間に気を失ったのよ。」


 気を失うという失態に、思わず顔を右手で隠す。

 アリサの言う通り、これで最後かもしれないと、かなり力を込めて堅牢を使ったけれど、まさか安全かも分からない場面で気を失うことになるなんて。


「情けない……」

「いいえ、仕方なかったことだと思うわ。よく考えてみて。貴方は今日赤熊を倒したの。そしてそのまま地竜と真正面から立ち向かおうとしたのよ? 限界を超えて当然。誰も責める事は出来ないわ。」


 慰めの言葉に救われ、小さく息を吐く。

 実際のところ、疲労と痛みがあまりに心地良くなった事が大きかったが、それを言っても理解はされないだろう。


 そして思い出す。


「あの人はっ!?」


 上半身を勢いよく起こす。

 そして違和感を覚えた。

 あれほどに痛みのあった左肩から痛みが大きく引いていたのだ。なんということだろう。痛くない。


 ぐるぐると左肩を動かし、確認するけれど、やはり痛みが無い。 

 あぁ、嘘だ。あの勲章をもう感じる事が出来ないなんて。


 一瞬悲しくて仕方なくなってしまったけれど、すぐに気を取り直す。

 痛くなければできる事は多い。燃える大蛇の調査にだって取り掛かれる。


「なぜ痛みが引いている?」


 私の問いにアリサは目を閉じて頭を抑え、眉間に皺を寄せながら口を開く。


「……私の中の常識は今日完全に破綻したわ。あの人がしてくれたのよ。」


 アリサが親指で指した先には、一人の男が少し離れた場所で背中を向けて立っていた。


「……あの人が治癒術師だと? でも男じゃないか?」

「えぇ。私も驚いてるの。あの人は地竜を倒した後、すぐにいなくなったかと思えば、これを持ってきてくれたわ。」


 アリサが手にもっていた果物を私に見せる。そしてそのまま手を動かし、私の視線を移動させた。

 すると視線の先には果物が何十個と置いてある。


「っ! すごい量だな……これを? もしかして歓迎されているのか?」

「私は貴方が気絶した時にやり取りをして拒絶されていると感じたのに、この扱いだから、彼がどう考えているのかまったく分からないわ。

 貴方の肩も果物を持ってきてくれたついでに触れて治癒を施したのよ。」


 肩を一度回す。

 やはりヒビは入っていただろう肩が自由に動く。


「もう一度聞くけれど、彼は彼、男でいいんだよな?」


「私は男にしか見えないわ。知りたければ貴方が聞いて。私じゃ話そうとしてもうまくコミュニケーションが取れないの。

 邪魔をして機嫌を損ねてもなんだから、あまり触れないようにしているんだけど、ああして地竜の血で寄ってくる獣を追い払ってくれているから、多分敵対する気はないと思うわ。」


「ふむ。そうか。では行ってこよう。」


「ちょっと話聞いてた?

 有りえない程に強くて得体のしれない魔力を使って、そしてコミュニケーションが取れないのよ?」


「うん。聞いたよ。

 助けてくれて、施してくれて、治してくれて、しかも守ってくれている。

 敵対意思がなく友好的と判断するには十分だよ。」


 私は動くようになった身体を確認しながら彼の下へと足を運ぶ。

 後ろではアリサがどうした物かと顔を振っている。 


 私が近づくと、すぐに彼は半分だけ顔をこちらに向けた。私の様子や挙動を伺っているのだろう。


「やぁ助けてくれて有難う。本当に死を覚悟したよ。」


 笑顔を作り右手を差し出しながら近づく。

 手を握るのは信頼の証だ。


 彼は少し戸惑っている。


 だけれど、ここまでしてくれる人間が友好的じゃないわけがないし地竜すら倒す彼が私を怖がることも無いだろう。


 私はそのままぐっと距離を近づける。すると彼は半歩、身を引いた。

 だけれど立ち止まった私の右手を、ゆっくりと掴む。


「うん!」


 私は手をぐっと握りぶんぶんと振る。


「いやぁ! いくら感謝してもし足りないよ! それに果物も沢山有難う! まだ食べてはいないけれど喉がカラカラなのに今、気が付いたよ。アレは私も食べていいのかい?」


 彼は手の振りと共鳴するように首を縦に振った。


「わぁ! 君は優しいね! 最高だよ!」


 そのまま右手を引っ張ってハグをし彼の肩に顎を置いて両手で背中を叩く。

 彼は硬直し身を固めて動かない。

 まるで初めてハグされた子供のようだ。


 ハグをして背中を叩きながら確かめた身体の感触は間違いなく男。

 すぐに身を離し、彼の顔を見る。

 鼻から額にかけて布で覆い隠していて表情が見えない。


「ところで、それはちゃんと前が見えているのかい?」


 手を振ってみると彼はコクコクと頷く。


「へぇ、それはスゴイね。こっちから顔が全く見えないんだけど……それは取らないの?」


 彼はブンブンと首を横に振った。

 どうやら取る気はないようだ。


「ふぅん。興味はあるけれど助けてもらった恩もあるから掘り下げないよ。

 ところで話は変わるんだけど、君は魔法は使えるの? アリサが君が私の肩を治してくれたって言ってたんだけど。」


 じっと見る。

 すると彼はパクパクと口を動かしていた。


 コレは騎士団に入りたての新人にも時々いたりする。

 特に平民あがりの騎士見習いが貴族を前にした時に見せる緊張した素振りだ。

 喋り出すまで待っていれば、大抵は答えてくれる。


「……………… (はい)。」


「おぉっ! そうだったのかー! ありがとう!」


 大袈裟に喜びハグをしておく。

 貴族の淑女としてはありえないけれど今の私は騎士団の小隊長だから関係ない。


 彼はハグにビクンと再び硬直したけれど、2回目という事もあり最初よりは固さが取れている。

 どうやら人とのスキンシップが苦手なようだ。


 私は喜びで上げたテンションのまま続ける事にした。


「いやぁ! しかし地竜を倒すなんてすごいね! 一体どうやってあの化け物を倒したんだい? 教えてくれるかな?」

「………… (あ、あの)…… (パンチで)。」


「パンチって、拳でかいっ!? 嘘だろう!?」

「…… (あ、ああ)…… (キック) (でした)。」


「いや大差ないから! えっ!? まさか本当に体術だけで!?」

「…… (あ、はい)。」


 小声の回答だけれど、きちんと会話をしてくれている。

 だけどその内容はとても信じがたい。


 地竜に目を向けると、首がすっぱりと切り落とされている。


「……いや……キックじゃ、ああは切れないでしょう……」

「…… (あ、あれ) (あれはこう)…… (こうして)。」


 彼が手を振ったかと思うと、地竜に水の刃が飛んでゆき、切り飛ばした。


「うそーん!」


 この後、私は彼を質問攻めにし、燃える大蛇も彼が作り出した事を突き止めるのだった。



--*--*--



 ひゃああああ! この中世的なショタ風イケメン! 押しが強いっ! 強すぎるでござる! みゃああああああ!

 でも嫌じゃない。ビクンビクン。


 まさか痛そうだったから『痛いの痛いの飛んでけー』をやったら治るとか思わなかったでござる!


 あああ、このイケメン、ウザいくらいガンガンくるのぉお! でも正直、これだけ話しかけてくれると助かるのは紛れもない事実ぅぅ!


 あああ助かるけど、押しがつよいぃぃ! きゃあああ!

 助けてポニテさん!


 って、すんごい険しい顔してるポニテさん! なんでなんでぇ! もうわけわかんないのぉぉ! びゃああああ!




ててーん♪ 主人公にコミュ強の通訳が付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ