第五話 勇者の世界は世知辛い
「……んっ。」
目が覚めた瞬間感じたのは、腹に残る鈍い痛み。そして、手足が自由に動かないという事。そして薄暗い、コンクリートでできた小部屋だということだった。
「ア。エストリト……エマ――」
「……あん?」
聞きなれない言葉が聞こえる。いやそもそも言葉なのだろうか。妙に聞き取れない音のようなものがたまに聞こえる。おおよそ、普段の生活では聞く事のないような音が
「ェ*ン…・・・」
音のほうに体を回すとうっすらと人影が見えるが、暗くてよくわからない。ふと、その人影の手が徐々に光始めて、改めて姿がわかる。黒い鎧を着た……女の子?
「……ふぅ、これで言葉がわかると思うのですけど。」
再び口を開いた少女の言葉は突然理解できるようになっていた。
「あんた、誰?」
「私は勇者リース・エクレア。筆頭勇者です!……っと、そうだあらかじめ聞いて起きたたいというかやっぱりなのですが……貴方は、この世界の、住人です?」
「……まあ、そうなる。」
「や、やっぱり……すみません異界の人。こちらの事情に勝手に巻き込んでしまった……でも、こう、いきなり出てきたあなたにも非があるということで見逃してもらえると」
「あ?」
「すみませんもちろん何でもないです。……はい、かきゅごを決めました!」
「……かきゅご。」
「だぁー!!なんでもないです!覚悟です!そう、ちゃんと償いをするという覚悟です!!…………それはそれとしてなのですけど、そのー、いろいろと聞いてもよろしいでしょうか?」
「それはいいんだがちょいといいか。」
「はい?」
「なんで俺ここにいて縛られてるん?」
「……っといわけでですね。有田さん。私が魔王城に潜入して、ついに、!現魔王の企みを暴き、またその調査のために有田たんのまんしょん?とやらに突入してばったり有田さんに当たって仕方なく捕縛したのです。なので事故で、傷つけたり、危害を加える気はなかったのですはい。」
軽くお互い自己紹介が終わり、状況を説明してもらい、ようやく状況が理解できた。
「それならとっとと縄を解いて解放してくれねぇ?」
「いやそのー……せっかくですしね?この際ですから魔王を仕留めてしまおうかと。」
はい?
「え、待って俺帰れない?」
「大丈夫です有田さん!突然魔王の城に連れ去られ自由に過ごせてはいても魔王の監視下の元。さぞつらい生活だったでしょう!ですがご安心を。私があなたを救い出し、必ずや魔王との契約とやらも何とかしましょう!」
「何とかなる方法があるのか!?」
「わかりませんがなんとかなります!勇者としての勘はよく当たるのです!」
「不安しかねぇ!?」
「用意はあんまりないですけどとりあえずこの倉庫に大小合わせて43個ほどのトラップはしかけましたし……やれないことはないと思うのです!」
「待てい。なんでトラップ!?なんかこう、勇者の剣とかそういう感じのそういうのないのか!?」
「うっ……それはですね……私も欲しいのですけど……」
そういうと、どこか明後日の方向を見るように勇者リースは視線を流す
「……持ってないのか?」
「ええっと有田さんはご存じないとは思いますが。我々勇者の里は帝国と戦争中で、その戦争は今から千年以上も前から始まっているのです。」
「……うん?」
「それで、持ってないといいますか、そのですね。……魔王と勇者の戦争って千年以上続く戦いなのですよ。ですのでー……ほら、戦争の最初の頃ってとりあえず相手も自分も全力って感じじゃないですか。神様からもらった剣だとか、竜を打ち倒した槍だとかそういうのってどんどんと使っていかないとやっていけなかったんだろうといいますか。」
「……ま、まさか。」
「ぜーんぶ、折れたり壊れちゃったりで、何にも残ってないみたいなんです。はい。」
聞いていて、なんだか悲しくなってきた。勇者といえば華々しい英雄の物語だとかそういう物を想像していただけにそういった世界の裏側は想像以上に地味で残酷だった。
「わ、私だってもっとカッコイイ勇者!って感じなことがしたいんですよ!!群がる敵を伝説の聖剣みたいなカッコイイ武器でザバー!って切り伏せたりとか!!誰も好き好んでこそこそ隠れて最小限の動きで最大限の成果を!みたいなことしたくないですよ!!……でも、戦争ですし負けたら何されるかわからないですし……負けるよりはましです!」
「ああ、そうだよなうん……なんか、済まんかった。」
「いえ、いいんです。それにこういうこと誰かにしゃべったことがないので少し気が楽になりました……有田さん、やさしい人ですね。」
「うん、そうだろう?だからそれに免じて解放してくれると」
「駄目です。」
なんでだよちきせう。
エクレア「それにしても、どーしてご先祖様はこう、大事な剣とかをバンバン使って使いつぶしてしまいますかね!もっと、次の世代たちが楽ができるようにーとか思って少しは大切にしてほしいものです!」
有田「雑魚敵がどうかはわからんが使用回数30位ぐらいしかないのに神器とかなんかそういうのバンバン使っちゃって壊れてしまったって感じだからなぁ。」
リース「最近だと使用回数はないけど能力が下がったりすることでバランスとってるのだっけ。まあどうでもいいけど」
エクレア「ひどい!有田さんと違って薄情な魔王!!」
有田「ほめても拉致監禁してる事実に変わりねぇからな!」
エクレア「……そこはー、わすれてー、くれるとー、ありがたいかなーって。」
有田「で、実際……どれくらいの敵が襲い掛かってきてたんだ昔の戦争って?」
リース「あー……記録でしかないけどドラゴンだけでも50匹ぐらいは襲い掛かってたとか見たことがあるような」
有田「……お前さん所のドラゴンの強さって?」
リース「ピンキリだけど弱くても小さな村ぐらいなら一瞬で、小さな町だと全滅寸前でとまるかもなー。城壁のある都市でとりあえず止まる。」
有田「……エクレア」
エクレア「はい?」
有田「お前のご先祖様、よく頑張ったよ。」
エクレア「うう、そういわれると何も言えないですぅ。」
リース「でも、この攻撃失敗してるのよなー……もったいないよなぁ……いやあそこまで戦力つぎ込んで落ちない勇者の里のほうがおかしいか。ふーむ。」
有田「ほかにもなんかいたのか?」
リース「そりゃあ軍隊ですからなー。記録だけで雑多な歩兵だけで100万っているらしいし、吸血鬼の氏族が20以上名前が連なってるとか、いやーすごい連合軍ですなーこれ。絶対攻められたくねー。」
有田「よくわからんのだが」
リース「んー、勇者側の兵種やレベルがどれくらいはわからないけどゲーム的に言うなら前の章ボスだったキャラと同じ強さのキャラがどざーって並んで、それと同じ位の強さの敵がゲームじゃないんだから別にいいよね?とか言わんばかりに毎ターン20体ほど追加されていくような無理げーかな。もちろんただ単に切ってくるだけじゃなくてブレスはいたり、範囲攻撃したり、防御無視したりと様々な手段で襲い掛かってくる。」
有田「胸張って今生きてることを喜べエクレア!お前のご先祖様スゲーわ!!」
エクレア「う、うううー!でも伝説の剣ーーー!!!」