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第四話 魔王リースの一日は長い

――帝国本会議場


「だから、そんなことでは予算が都連といっておるのですよこのトカゲ!」

「国の存亡の前に何をケチなことを言っておるヒツジが!この売国悦が!」

「貴様こそ何もわかっておらんのだ!金が回らねばこの国が回らんのよ!」

「貴様、わからんのか!?この国にとって脅威たる勇者を滅ぼさねば――」


……豪華な装飾が施されたホールの二階、辺り全体を見渡せる展覧席からその様子を見ていた魔王リースはうんざりとしていた。議会中に轟く二人の怒号のコンサートは今に始まったことではない。おおよそ私が魔王になってから数十年とこの議題は繰り返されている。……というよりも。この議題ばかりが繰り返され怒号を上げるこの二人が主役になっている。

(まあ、なんでこんなことになってるかといえば、私のせいだよなぁ。)

私が魔王として君臨してからほぼ政治というものに口を出したことはない。やることといえば、一応魔王として議会の開催を宣言するなどそういった儀礼的な事だった。そういう意味ではこの二人は私の代わりにこの国を支え続けたといえばそうなる。

だが今ははっきり言っていらない。アニィと一つになったことで得た知識とその知識を元に調べ上げた地球の歴史、政治形態、政策、国ごとの国民性や国是。それら様々な事を元にこの国を考えるとだ。


まず現在、我が国は勇者の国と戦争中である。……そもそも勇者の国って何ぞやとは今の私としては突っ込みたいが昔からそういうニュアンスの国だったのでそう訳すしかなかったのだ。突っ込みようがない。

そしてこの戦争だが数千年の間だらだらと続けて最早惰性で続けているものでしかない。とっとと休戦ないし講和してしまいたい……が。


「我らが帝国は戦い続けてきた!今までも、そしてこれからもだ!!」


いろんな意味で目下、悩みの種であるしゃべるトカゲ人間。いわいるリザードマンと名付けた彼の名はゲルトン・ゼッシャー帝国最高将軍。帝国の軍は彼が全権を握っているといっても過言ではないだろう。なので奴の口をふさがなければ我々に平和はやってこないというわけだ。彼の言う通り勇者達を黙らせることができるというのであれば話は別だが……このコンサート会場でそういった画期的な案が出てきた事は基本的にない。


(あー……なんだか疲れてきた。)


「おい、そこの。」

「は、はいっ。お呼びでしょうか魔王様!!」

後ろに立っていた従者か何かの青年に声をかける。

「お前、これ着て私の代わりにここに座ってろ。」




「やぁーーってられるかぁーーーっていうんですよーだ。」

体よくスケープゴートを手に入れたリースは、哀れな青年に自分が羽織っていた服を押し付け手っ取り早くいつもの部屋の普段着に履き替える。(なお、今回の議会においていつもより魔王様が話を聞いてくださっているという!という雰囲気がありそれのおかげで評価が少しだけ上がったのはまた別のお話)


さっさと、地球へとつなぐゲートのほうへと向かいゲートを開くパスワードを唱える。

「アニィとつながるまではなぁーんとも思わなかったけど、相当無駄なことしてたのなー私達。でも、私は、違う!ただいまアニィさあ私のために飯……ん?」

何かがおかしい……などというレベルではなく、根本的な部分がおかしい。いつもアニィはこの季節であれば日が落ちるまでには帰ってくるのだが窓の外は夜の帳が落ち始めている。そして何よりまず電気がついていない。

「……」

ともかく何もしないわけにはいかない。まずは電気をつけ、辺りの様子をうかがう。異変はすぐに発見できた。先ほど出て行ったときにはなかった紙が机の上に置かれている。

『魔王へ、貴様の大切なものは預かった。返してほしくば南にある物置まで一人で来るがいい』

「……」

思わずため息が出る。自分の城の警備がザルだとかそういう物もあるのかもしれないがいくら何でも勇者どもの諜報能力の高さというかそういったものにはうんざりとする。ここの存在も秘匿には気を使い知っているものもごく数人のはずなのだが。


だが、これはチャンスでもある。この地球という異界の地でアニィという現地人を攫って逃亡……というのはおそらくかなり予想外の事態が発生したという事だろう。相手もそこまで用意はなく……だがそのうえで現状での最善手として私の命を取るためにアニィを人質にし、来なければそれはそれでアニィから地球の情報を得るという手段に出ているのだろう。そして私としても私を殺すという準備が不十分な勇者と相見える事ができる……そう考えればそこまで悪くない取引だろう。あとはどう立ち回れるか。それだけだ。しかしまあ。

「自分でいうのもなんだけどアニィ。あなたは結構運がないお人よなぁ。」

有田「うう……俺心配だわ」


リース「心配するなアニィ。勇者というゲリラはわりかし正義感の強いやつらだ。」


有田「そうなん?」


リース「だから人質としての価値がなくなったりしてもむやみに殺したりはしないはずだ。っというよりも私の魔力は半分がアニィと共有する魔力になっているからな。そんなものを知らない奴が見ればただでさえ規格外な魔力の外付け+でわけのわからない貯蔵量だ。私のとの取引に使えないとわかればそれはそれで……攫って勇者として教育ルートかな。」


有田「アイエェェ!?」


リース「まあそうならないためにも私が今向かっているからちゃんと耐えるんだぞ。」


有田「努力はするが……大丈夫なのか?」


リース「大丈夫だいジョーブ。魔王様を信じなさーい。」


有田「……不安しか感じないが……まあ大丈夫なんだろうなぁ。」

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