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君に捧げる鎮魂歌(レクイエム)  作者: 秋元智也
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能力開発

「どうと言われても。綺麗ですよ。誰もが振り向く位に素敵な人だと思います。」

「ふむふむ。それで?」

「態度がでかくて、自己中でしょうね。自分の思い通りにならないと気がすまないんじゃないでしょうか?それでいて淋しがりやで、そうですね、誰からも理解されない孤高の存在って感じですかね?」

葵先輩は悠人に顔を近づけると覗き混むように笑みを浮かべた。

「近いです」

「おかしいなぁ~。私が近づけば誰もが赤くなり喜ぶのだが、君は違うようだ」

溜め息を付くと顔を逸らした。

「まぁ、いい。面白いことも聞けたことだしな。私ははっきり言って人気がある、有名人だからな。そんな私に誰からも理解されないとはよくいったことだな。理由を聞かせてくれ」

「理由と言われても・・・見た目の印象としか・・・」

「見た目の印象ですぐに分かったというのか?確かに私の事を理解出来るものは今まで一人も居なかった。もう、今では理解されようとも思わなくなったがな!しかし、不思議だ。君はどんな能力を持っているんだい?」

「・・・」

いきなり核心を付かれたような感じがして息を飲んだ。

今までの変なものが見えたり夢の事を理解できるかもしれない?

いや、また変な目で見られるか、実験台にされるだけではないのか?

「冗談ですよ。適当に気を引きそうな事を言っただけですよ。そろそろ帰ってもいいですか?」

「まだ、君とは話していたいのだが?」

puruuuuuuuu.puruuuuuuu.

そこで携帯が騒がしく鳴り響いた。

「一体、こんな時に誰がっ、・・・神倉君、ちょっと待っててくれ」

奥へ行くと電話に出たようだ。電話の相手は気が知れた人間なのだろう、さっきよりも砕けた口調で話していた。

永田敏也(ながたとしや)という刑事からの電話だったらしい。

話ぶりからするとよくある相談のようだった。

電話を切ると葵先輩はこちらに戻ってくると客が来る旨を話した。

「じゃー僕はお邪魔します」

立ち上がるといきなり袖を引っ張られた。

「何をしてるんですか?あなたは。」

「いいじゃないか。君も聞いていけば、面白い話が聞けるぞ?」

と、意味深なことを言い出したのだった。

それからほどなくしてひょろっとした男性が入ってきた。

「こんにちわ!君は赤羽さんのお弟子さん?それとも彼氏君なのかな?」

「御託はいい。用件を話せ」

「やだなぁ~冗談なのに・・・僕は永田敏也。これでも29才、刑事なんだけど、見えないよね~よくバカにされるんだ~。えーっと、誰だっけ?」

悠人を振り向くと自己紹介をしてきた。

「神倉悠人です。隣の高校に通ってます。今日は無理矢理連れてこられましたけどね」

笑いながら聞き流された。そして永田刑事はすぐに資料を広げ出した。

「コレが今回の事件現場の写真です。それと、こちらが身元と被害者の交遊関係を洗った資料です」

「派手に荒らされているなぁ~」

悠人は目の前にならべられた写真をぼんやりと眺めながら頬杖をつくと二人の様子を観察していた。

それに気づいたのか永田刑事はこちらに顔を向けるとすまなそうにしていた。

「あまり気持ちのいい写真じゃないよな?ごめんね。気分が悪くなるようなら片付けるよ。一般人には刺激が強すぎるよね?赤羽さん!関係ない人を巻き込むのは良くないですよ!」

「何をいうのだ?お前だって私に聞きに来ているではないか?」

「それはそうですけど・・・」

永田刑事は黙って恨めしそうな目で葵先輩を見上げていた。

「まぁいい。神倉君の意見を聞いてみようじゃないか?」

いきなりの指名で驚いたが、それほど気乗りもしないがゆっくりと被害男性を見る。

まるで殺された事を、死んだ事を喜んでいるように見えた。

そして弁護士と男性の身内、家族を見る限りなんともいたたまれないように思えた。

訪ねてきた人にも容疑がかかっているのだから余計なのだろう。お金を請求に来た業者も借りにきた身内も大変な目にあったもんだ。

「大体の概要を聞いても?」

「あぁ、構わないよ。亡くなっていたのは兼田修三さん68才。亡くなったのは朝、6時位だと思われる。第一発見者はその娘の実和子さん。そこに借金の取り立てで現れたのが橋田勇治さん。昨日は居なかったといって昼頃、金の無心にきた長男の良一さん。後は朝早くからいたのに気づかなかったお手伝いの近藤美代子さん。容疑者はこの4人ということになる。お手伝いさんはテーブルの上に朝の朝食は要らないから昼の昼食時に持ってきてくれという手紙があったというのですが、刑事が駆けつけた時にはそんなものみあたりませんでした。遺言等もなく、そして何より細い頑丈なロープ等で首を絞められて殺害されたものと推察されています。しかし、現場にはそのようなものはなく、部屋は娘の実和子さんが鍵で開けるまで密室だったと思われます。鍵は内側からかかっていて、もうひとつは部屋から少し離れた廊下の花瓶の中に入れることにしているそうです。」

「この写真は現場検証が終わった後に取ったものですか?」

「あぁ、こっちは現場検証後にとった奴で、こちらの適当に周りを撮ってあるのが現場検証前にとった奴だね」

悠人はゆっくりと見比べると疑問が浮かび上がってきた。

「死んでいる修三さんはどれぐらいの借金と遺産があるんですか?もしかしたら保険金がかかっているならそれは誰が受けとるんですか?」

「うーんとね、ちょっと待っててくれるかな?」

携帯を握ると外に出て同僚にかけるつもりらしい。

「何かわかったのか、少年?」

「変な言い方しないで下さい。ただ、被害者が奇妙だっただけです。なぜか嬉しそうな・・・そして娘さんも嘘を付いている・・・」

「ほぉ~」

悠人の言葉に嬉しそうに葵先輩が頷く。

ガチャッ。

扉が開くと永田刑事が帰って来た。

「借金は一千万位ですね。でも工場を売って今出している製品の特許さえおりればすぐにでも取り返せる金額らしいですけど・・・。あと、保険金ですが次男の勇次さんが全てを受けとることになっていますね」

「ん?ならなぜ勇次を容疑者に入れない?」

葵先輩が突きつけると永田刑事は頭を掻きながら答えた。

「昨夜から今朝9時までのアリバイがあるんです。夜勤をしていて、一緒にいた従業員が証言してるんです。工場からこの自宅までは急いでも1時間はかかるし、往復しようと思うと約2時間も居なかった事になります。トイレの5分位ならあるけどそれ以上居なかった事はないというんです」

「ふ~ん。少年、そう言っているが分かったか?」

「分かったもなにも誰も殺してないんだから犯人なんて探しようがないでしょう?」

悠人はそう言って、葵先輩だって分かってるんでしょう?と聞き返した。

「おそらくはな・・・」

自信満々に笑みを浮かべる先輩に永田刑事は答えを急かした。

「分かってるなら教えて下さいよ~」

「少しは自分で考えたらどうなんだ?永田刑事!一般人の彼にでも分かったくらいだぞ?」

「そんなぁ~、って神倉君ってほんとに一般人?さっきの死体写真を見ても顔色ひとつ変えないしさ」

「失礼な人ですね?もう、僕は帰ってもいいですよね?」

そういうと、踵を返して入り口のドアを握る。後ろから永田刑事が来て手を前に合わせてきた。

「葵先輩だってわかっているんでしょう?何で僕が言うんですか?それに合ってるかだって怪しいんですよ?」

「それなら、言うだけでも言ってみてくれないか?」

永田刑事は食らいつく。

ー 全く、この人はほんとに刑事なんだかわからないなぁ~ー

葵先輩を見ると『早く言え』と言わんばかりの態度でこちらを見ていた。

諦めると椅子に腰かけるとコーヒーを要求した。先輩はすぐさま淹れて持ってきてくれた。

「あくまで僕の仮説ですが、それでもいいんですね?」

「構わないよ。裏付けは僕の方でやるから。どうぞ、続けて?」

「まずは結果から言いますとこれは他殺ではなく自殺です。それも保険金を狙っての事だと思います。これを知っていたのは修三さん本人ともう一人、次男の勇次さんだと思われます。」

これを聞いていた永田刑事は、話が読めずに手を前に出すと話を止めた。

「ちょっと待ってくれ。どうして自殺だと断定するのか、聞いてもいいかい?」

これはいっていいのか迷いながら言葉を選び話し始めた。





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