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君に捧げる鎮魂歌(レクイエム)  作者: 秋元智也
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出会い

保健室には誰もいなかった。

その方が有りがたかったのでベットに横になるとゆっくりと瞼を閉じた。

ー 彼女は一体何だったんだろう?俺の事を知ってるのか?それともあの夢と関係があるのか? ー

全く分からないことだらけだった。

さっき、凌平を見たときに横にはリスがうろついていた。

目を赤く光らせて、心配というよりも疑いの形相だった。

健斗の方にはアライグマが乗っていた。

くるくると踊り出していつもの彼の能天気な雰囲気そのものだった。

「ぷぷぷっ」

思い出したらつい笑いが込み上げて来てしまった。

集中しなくては。油断するとすぐに変なものを見てしまう。

そうなれば何もないのに驚いたり笑ったりをしてしまい完全に『変人』扱いされてしまう。

前に鎖でがんじがらめの人を見て指摘したことがある。

そういう人は指摘されればされるほどに鎖はしまっていった。

恐くてそれ以上は聞けず、その場から逃げ出してしまった。

別に鎖が閉まったからといって死ぬわけではないのだから構わないのだが?

なぜかそのときは恐くて堪らなかった。

保健室のドアがガラリと開いて誰かが入ってきた。

「すいません。気分が悪くなったので勝手にベット、使ってます」

声を出すとこちらに近づいてきた。

カーテンをガラッと開けると先生ではなく、見たこともない女性が立っていた。

「やぁ、君が神倉悠人君だね?会いたかったよ。少し話がしたいんだがいいかな?」

明らかに高校生ではない。となると不審者?

彼女の後ろには目を光らせた鷹が乗っていた。

今にも獲物を補食しようとしているかのようであった。

「用事があるので失礼します」

起き上がると立ち去る為に上履きを履こうとすると、目の前に立ちはだかった。

「私は怪しいものじゃないよ。あぁ、そうだった。自己紹介がまだだったね、私は赤羽葵(あかばねあおい)。」

その女性はグラマーすぎる胸を大きくつき出すとこちらに笑みを見せた。

確かに普通に迫られたら誰もがついていきたくなるほどの整った顔、長い手足に大きな胸。

胸を強調するかのように引き締まった腰。そのすべてが美しかった。

長い黒髪をひとつに束ね流れるようなサラサラな髪もしっかり手入れされているようで落とせない男はいないように思われた。ただ、ひとつを除いては・・・。

後ろで見つめる鋭い目付きの鷹の姿だった。

こちらに飛びかからんばかりに目をギラギラさせていた。

恐怖を張り付かせる悠人に予想外だと言わんばかりの葵の反応だった。

「落ち着いてくれ。私は隣の大学生だ。怪しいものじゃないと言ってるんだがな?そんなに怯えないで欲しいのだがな?」

頭を掻きながらこちらの態度に困ったように眉を歪めた。

この私立桂ヶ丘高校の横にはそのまま半数以上がエスカレーター式に上がれる大学が付属している。

よっぱどの素行が悪くなければそのまま大学までが約束されているのだ。

隣の敷地に建っているために行き来は自由だった。

「赤羽?」

「そうだ、赤羽葵だ。妹が同じ学年のはずだが?鈴を知らないか?私の妹だ。ちょっと変わっててなー情緒不安定な妹だがよろしくな?鈴から聞いてないかな?私が会いたがっていたと?」

「いえ、何も・・・」

ー いや、さっきのってそういう事だったのか? ー

考え込んでいると勝手に話し出した。

「ここじゃ何だから放課後、大学の研究室に来てくれ。話しにくいことも有るだろう?それにコーヒー位なら奢るぞ?」

「勝手に決めないでください。行くなんて言ってませんから」

早くここを離れたくて急いで保健室を出た。

「私の名前を出せば誰でも教えてくれるから訪ねて来てくれ。待ってるからな!」

後ろで大声で叫ばれたが、直ぐに走って出ていった。

教室に戻ることはせずに屋上に来ていた。

授業中ということもあり誰も居なかった。

ー やっと落ち着ける。 ー

校庭を下に見ながら腰を下ろした。

さっきの人は何だったんだろう?凌平か健斗辺りなら知ってるのかな?

でも、大学生は範囲外かな?授業の終わりを告げるチャイムがなり、生徒たちがガヤガヤと騒がしくなった。

教室に戻ると心配そうに凌平が近寄ってきた。

「悠人、大丈夫か?まだ、顔色が悪いぞ?」

「悠人ー元気になったのか?一緒に帰ろーぜ!」

能天気な健斗は相変わらずだった。

そこで二人に赤羽葵のことを聞いてみた。

「おいおい、知らないのか?ちょー有名人だぞ?未だ大学2年だというのに切れ者でも有名だがそれ以上にあのスタイル。そして美貌と来たものだ。しかし、誰の誘いも一切受け付けない鉄壁の女帝って呼ばれてるんだぜ」

「知らねーなんてこっちがビックリだぞ!」

凌平も健斗も知っているほどの有名人らしかった。

「そんな人がなんで僕に用があるんだろう?」

「はぁ?」

「どういうことだよ。話せよ~」

「ちょっ、苦しいって」

凌平は驚いて固まり、健斗は悠人を締め上げようとした。

苦しくて暴れるとやっと離してくれた。

「知らないよ、いきなり研究室に来いだの言ってきてさ。誰がいくかって・・・?どうしたんだよお前ら、、、」

「呼ばれてるのか?じゃー行かなきゃな?」

「そうだよ、行かないなんて勿体ない」

二人が同じ意見になったのなんて滅多にないだけに気味が悪い。

とっさに鞄を掴んで逃げよとすると、ガッチリと両腕を捕まれて大学まで連行されるはめになった。

言うんじゃなかった。

「憧れの葵先輩に会えるのかぁ~楽しみだな~健斗は帰っていいぞ」

「誰が凌平だけで会わせるかよ。俺も御近づきになりたいもんだぜ~」

「じゃー僕は帰っていいか?」

「ダメに決まってんだろ?悠人が居なきゃ声すらかけてもらえないんだからさ~」

健斗は速効で却下してきた。

「凌平は鈴ちゃんじゃなかったのか?」

「誰がそんな事を言ったんだ?出来ることなら葵先輩のがいいに決まってるじゃないか?」

ウキウキする二人に引きずられるように研究室の前まで来ていた。

「なんでお前ら大学の研究室を知ってるんだよ!」

「まぁまぁ、いくぞ」

コンッ。コンッ。

「神倉悠人を連れてきましたー」

健斗が大きな声で呼び掛けると中から先輩の声がした。

「はーい。開いてるから、入ってきてくれ!」

ガチャッ。

扉を開けると白衣姿の赤羽葵の姿がそこにあった。

「神倉悠人。連れてきましたー。」

「えーと、君は誰かな?」

「月島凌平って言います。何か手伝える事があったら言ってください」

「俺は朝野健斗って言います。神倉君とは親友で~代わりならいつでもなりますよ」

二人は悠人をだしにして先輩と話したいだけだった。

「ありがとう。助かったよ。君達にはそのうち食事にでも誘うことにするよ。今日は神倉君と二人で話がしたいから帰ってくれないか?」

一瞬の間が空いたが、一緒に食事という言葉に舞い上がって悠人を置いて帰ってしまった。

「では、失礼しまーす」

ガチャッ。

「・・・薄情な奴。」

「そんなに私が嫌いか?」

「いえ、そういう訳ではありません。で、用件とは何ですか?」

「そう焦らないでくれ。」

悠人は入り口の付近にもたれ掛かかった。

すると、葵先輩はコーヒーを2杯持つと奥の席に座ってこちらに手招きをする。

「そんなところにいないで、こちらに来たらどうだ?」

すぐに帰れるようにと入り口の近くにいたというのに、舌打ちを堪えて葵先輩がいる前の席に座った。

「そう、嫌そうな顔をしないでくれ。話しにくくなるじゃないか?」

「なら、帰ってもいいですか?」

「それは待ってくれ。話というのは・・・まずはこれを聞いておこう。君にとって私はどう映っているのかな?」






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