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君に捧げる鎮魂歌(レクイエム)  作者: 秋元智也
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日記

8月9日

順調に成長している。問題も今のところないようだ。

少し早希の方が活発な気がするが、気にするほどの事ではないだろう。

8月15日

悠人の様子がおかしい。何かに怯えるような事が多くなってきた。

特に人間に怯えているようである。本人に確かめなくては・・・。

8月16日

原因が判明。悠人は感応体質なのだ。人の精神を読み取って具現化して見えてしまう。

あまり家からも出なくなった。このままではいけないと思い、病院へ連れていくことに。

しかし、誰も悠人を理解できる医者はいないのだろうか?

9月13日

悠人の事を理解する医者を見つけた。その医者は那倉有美(なくらゆうみ)という。

彼女はサイコメトリー能力者だった。不完全な悠人の能力を完全なモノにするには丁度いい。

暫くは診察に通うことにしよう。

12月30日

そろそろ仕上げに取りかかろうと思う。

那倉有美の力を奪うには丁度いい。

そろそろ頂くことにする。

これも悠人為なのだ。

その日は次の日が休みだったのでお金を渡して悠人を一日中預ける事にした。

1月3日

悠人は多少の落ち着きと完全なサイコメトリー能力を手に入れた。これからは好きなように生きてほしい。

1月5日

まだ、悠人は人を怖がっている。

内面が見えてしまうことによって余計に人を寄せ付けなくなってしまった。

早希の方は打って代わって活発な子に育ってくれた。



「これは?」

「二人に起きたことなのだろうな。しかし、神倉君は人の力を奪う能力が有るのか?それなら早希君を救えるかも知れんぞ?」

「それは吉報だ、教えてやらねばな?」

「まずは落ち着けと言っとろうに・・・。まずは全てを解き明かしてからじゃ」

葵と教授の二人は日記の先を読み始めた。



1月20日

どうやら早希の人格に他の人格が現れるようになってきた。隣の家の犬が無惨に殺されたらしい。

子供達の話ではいきなりひしゃげたというのだ。

悠人が気に入っててよく遊びに行く家だったので残念がっている。

1月25日

転校生が来たらしい。悠人は初めて友人が出来たようで家に連れてきた。

これで普通の子とも仲良くできるといいのだが。

1月31日

友人が失踪して2日目を迎える。悠人はまた塞ぎこんでしまった。

対照的に早希が悠人に絡むようになった。

兄妹が仲良くすることは喜ばしいことだ。

2月8日

川の下流で死体が発見せれる。友人であることがわかり引きこもってしまう。

一体何が起こっているのか?

3月5日

最近悠人の様子がおかしい。いつも泥だらけで帰ってくる。転んだと言っているがそうではないとおもう。

3月7日

悠人はどうやらいじめにあっているらしい。

あれだけ泥だらけになっているのだから怪我が心配だ。

3月8日

やってはいけないことだとわかっていても、心配で風呂場に監視カメラをつけた。

怪我はなさそうだった。まずはひと安心だ。

3月10日

家族3人で川辺でバーベキューをやりにいった。悠人も早希も楽しそうで本当によかった。

しかし、奇妙な現象を見てしまう。悠人が網に触れて火傷をしてしまった。その後水で冷やしているうちに焼けてただれてしまった皮膚が元通りになったのだ。

ただ単に自然回復ではない。異常な早さの回復だった。

これはと思い、悠人を問い詰めると、最近気づいたそうだがどんな傷でもすぐに治ってしまうのだそうだ。

これはアレの後遺症なのだろうか?となると早希にも注意しなければ。


10月11日

悠人の誕生日にクラスメートからプレゼントを貰って帰って来た。

目を離した隙にそれが宙を舞ったと思うと粉々に砕けた。早希の仕業だった。

兄の周りに近づくものを誰であっても許さないとでもいうようであった。

これは危険かも知れない。本人には自覚はなく。やったことすら覚えていなかった。

暫くは様子を見ることにしよう。


「兄への独占欲ってところだな?確かに病室でも私の事を睨んでいたしな。神倉君に近づくものは誰であろうと排除しようとゆうことか。面白い、面白いぞ。なら、危険な目に合えば早希は自動的に攻撃モードにかならずなるという事だ。」

「赤羽君、あまり過激な事はしないでくれよ。彼はとても不安定なんだ。それに彼の力を奪う能力の発動条件がいまいちわからん。それが分かればいいのだが、、、」

そう言って教授は日記を読み進めていく。

最後まで読んでも悠人の能力の発動条件は見つからなかった。

「うーん。どうなっておるのか?」

「面白いではないか、試して見ればいい。今はきっと山奥の私の別荘に篭っているはずだ、逃げ出せないのだから何でもできるではないか?この日記を読んで分かったことは能力を取りたい相手に神倉君を預けたと書いてあった。それだけで勝手に奪える筈がない。なら、何かがあったと仮定する他ないだろう?子供が大の大人に力でかなうはずもないのだからな」

「だが・・・まさかっ、、、そんなはずは」

「試してみる価値は有りそうだ」

葵がニヤリと自分の仮定を裏付けるべくスマホを手にした。

「止めなさい。そんなことしてまた犠牲者がでたらどうするんだ?」

止める教授を葵は聞き入れようとはしなかった。

「このままではずっと外には出られない。それでもいいと教授はいうんですか?大丈夫ですよ、消えてもいい連中を使います。私の父の職業を承知ですよね?」

「・・・」

何も言えず、沈黙が辺りを包む。

その意思を肯定と取り、葵が受話器の相手に下っぱのお金に困っていて、消えても誰も気づかなそうな連中を用意させた。

「今からいう場所に少年と少女がいるが少女の方には手を出すな。とにかく何をしてもいいから少年の方を殺さない程度に襲って来い。それだけで一人につき一千万払うと言えば乗るだろう?」

電話の相手は眈々ときいては溜め息を漏らした。

きっとこれも何かの実験なのだろうと。それから電話の相手であるスーツの男は部下の召集をかけて人選してから指定された場所へ5人のならずのもを送り込んだ。

お金に目が眩んでいる者達は決まって約束などを守る律儀な人間ではなかった。

殺さなければナニをしてもいい。それで一千万も手に入ると。

「女には手を出すなって言われてもなぁ?男をいたぶるのは趣味じゃねーんだけどな・・・」

「金が貰えて、しかも好きにしていいんだとよ。いいじゃねーか」

「おめぇはそっちの趣味が有るのかよ」

「まぁ~な。意外と楽しめるぞ?」

「まぁいい、これで暫くは遊んで暮らせるってもんだぜ」

「前金で百万、成功報酬で九百万たぁ、美味しいぜ」

喜んで引き受けるとナイフとロープを買い込むと目的の場所へと車を走らせた。



そんな事を知らずにいる悠人と早希は毎日をのんびりと生活していた。

朝起きて、ご飯を食べると川辺に行って釣りを楽しんだ。

意外と釣れるので楽しくてある程度釣ると持ち帰り腸を取ると開いてベランダに干した。

多めに取ってくるといつもそうやって非常食を作ることにしている。

早希はただ見ているだけだったが次第に一緒に釣りもするようになった。

「このまま何事もないといいんだけどなぁ~」

「お兄ちゃん?」

「ん?いや。早希こそどうかしたか?なんか赤くないか?熱でも?」

「何でもない」

横で何か言いたげな早希に目を向けるが何も話してくれなかった。

元々人の感情を読むことは出来たが早希と母に関しては全く流れて来なかった。

その為、そこまで怯えずに済んだのだが、こういう時ほど知りたいと思ってしまう。

悠人は少し寂しいなと感じていた。

知りたいと思うことは知らないままで、知りたくないことばかりが自分に入ってくる。

でも、そのうちここも警察にばれるかも知れない。

それにずっと葵先輩の迷惑になる訳にもいかない。

今は早希も落ち着いてきていて、狂暴な人格に変わることはないが、いつそうなるかわからない。

悠人自身も早希には充分警戒しなくてはならない。

自分が居なくなったら誰が早希を守ってくれるのかと・・・。

今がまだ本気で殺そうとはしていないからいいけど、早希が本気で僕を殺そうとしたら・・・。

一瞬、自分の考えに身震いを覚えた。

「寒いの?」

早希が隣で聞いてくるがあやふやに返事を返した。



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