プロローグ
何故俺達がゾンビごときに滅亡寸前まで追いやられなきゃいけないんだ?さぁ、ゾンビ共を殺しに行こう!
先程舞った鮮血の匂いが鼻にこびり付く。出来れば布でも有れば有り難いが今のところ着ているスーツ位しか変わりになりそうな物はない。仮にスーツにした所で割りと良い物なので進んで血の匂いを付けたくはない。それに布が其処らに置いてあった所で使いはしないだろう。病原菌が付いているかも分からないし、そんな危ない賭けに乗る必要性もない。
それと布を使わない理由はもう一つある。それが一番デカイ理由だ。
今は戦闘中である。鼻を拭いている間にサクッと殺られたくはない。俺は同じく血の匂いの付着した刀を強く握り直すと目の前のアンノウンに聞いた。
「貴様は化け物か?それとも人間か?」
目の前の者は見た目だけで判断するなら前者だ。死体共の親玉であるミートに似ている。殆んど亜種とも言って良い程に。通常ミートは3メートル程の巨体で外見は人体模型に近い。その名の通り皮が無いのだ。ただ、人体では有り得ない程方々に筋肉が付いており、全体を見れば人間の外見とはかけ離れる程に不恰好である。指も途中から硬質化して刃物の様になっており、牙も肉食獣のように尖ってい。だが目の前の化け物は体はそのままのものの、顔は人間のままであり、中性的な顔立ちの黒髪黒目の青年が顔として引っ付いていた。
だが、わざわざ私が問い掛けたのはその化け物らしからぬ行動。
「……化け物だよ。多分ね……。でも元は人だ。だから化け物は化け物でも人を救う化け物で居たいと思ってる」
そして他のミートとは違い、喋るからだ。
「そうか、化け物か……。残念だ。貴様を排除する」
だが自己申告があった様にと特定。よって排除するのに何ら躊躇いはない。
「酷いな。僕達に人権は……。生きる権利はないと言うのか?」
「無い」
ついでに言うならば化け物と問答する気もない。私は刀を振り抜き目の前の化け物に狙いを定めると吐き捨てた。
「貴様が自分を化け物と呼ぶのなら私が排除する理由には十分だ。よって緊対法に基づき……。ああ、ここは無法地帯(エリア内)だったな。ならば私の貴様らに対する怒りに基づき貴様を排除する」
今思えば私がこの生物と出会うまでには時間が掛かった。そしてこの生物と和解するまでには更に膨大な時間が掛かるだろう……。