家族
「無理っ無理っ、意味分かんないっ。きもい、恐いし、何でこんなとこ住もうって思ったんだよっ!!」
なー
「ク~ロ~~、もうやだ~いーやーしーてーーー」
に゛ゃっ
クロを掴んでふみゅふみゅと抱きしめまくる。早くもご近所付き合いでストレスがマックスだ。引き篭りたくなる気持ちも分からんでもないが、あんな悍ましい感じには死んでもなりたくない。
思い返すとあのぞっとする気持ちの悪いギョロ目がまた見ている気がして、顔をクロのお腹に押し付けた。
「クロちゃんかーわーいーいー」
んに゛ゃあ!
「いたい」
ぐりぐりと癒されていると、最初は許してくれてたクロがウザイと言いたげに肉球パンチしてくる。それすらも可愛く感じる親バカだが、流石にそろそろ爪を出されるので、仕方なく起き上がってクロにご飯を献上することにした。
にゃー
ころりと甘えてくる現金な奴だが、野良から拾って5年も一緒にいる仲である。その現金さもギャップと感じるぐらいには毒されてる。
それにしても…、はぐはぐと食べているクロを撫でながら、渡しそびれた後1個の菓子折りを見て深いため息が出てしまった。
「憂鬱だねぇ、クロちゃんや」
しっぽだけ振られて無視されるが、その距離感が心地よい。どうしよっかなー、流石にあの2号室組に渡しといて、103号室の人にだけ渡さないのはアレだし。でも今日は無理、あれもう一回見たらトラウマなる自身あるんだけど。
なー
ご飯を食べ終わったらしいクロの相打ちに、やっぱり明日行けばいいかと決めた。
そうと決まれば…
「よっし、今日は久しぶりに猫じゃらしで遊ぶかクロ」
なー
スーツケースをひっくり返して昔クロとよく遊んでいた猫じゃらしを取り出し振り返ってみると、日なたと冷房の絶妙な位置でくるりと丸まりお昼寝しているところであった。
流石クロちゃん、クール