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土曜日



土曜日、朝

 にゃあー

「んー、舐めてくれるの? ちょ、じゃりじゃりして擽ったいってば」

 可愛かったのでスマホを近づけて鼻先アップで写メる。機嫌がよくなったが、ふと思い出した様に腕の色が濃く見えて、座りが悪くなりそっと袖を下ろした。

「あっついねー、エアコンもあんまり効かないし」

 可愛らしい長袖のを引っ張り出して着てるからなのだが、とりあえず窓を開けてみる。ナツツバキは今日も気持ち良さそうに光合成中で、いけるかもといった咄嗟の思い付きだったのだが、手を伸ばせば届いたのでぷつりと一輪千木って部屋へと飾ってみた。クロは興味深そうに匂いを嗅いでいる。

「気に入った? クロちゃんお散歩させてやれなくてごめんね、次はもっと広くてお友達も出来そうなところに連れてってあげるから」

 …

 ええい、無視かい!だがそこも可愛いと、追い掛け回して抱っこする。常なら暑い!と言わんばかりにぶすくれるのだが、何故か今回はすりすりと頭を押し付けてきた。

「んー? 今日は甘えた期ですか、クロちゃんや。それとも昨日のご飯が気に入ったのかい?」

 みゃあ

「イッチョ前にグルメになっちゃてまあ。しょうがないなぁ、こんなに気に入るなら昨日一日分だけじゃなくてもっと買えばよかった」

 …

 無言で猫パンチが繰り出されている。これは無言のさあ買ってこいというお達しなのだろう。取り敢えずまず先にと連写を終えてから、ピロンと届いた友達へと 今からこっちは家を出るとこー と送る。

 珍しく可愛くおめかししてるのは、日帰りでちょっと遠くに居る友達へと会いに行くためだ。平日の有給をほとんど家で充電期間にあてたからこその行動力である。夏の体力の減り方はヤバイのだ。

 みゃあ

 パチリと少しずつ情報はアップされてるからなのか、未だにホットニュースなあの日の緊急ニュースの進展を途中でぶった切り、よいしょとクロをどかす。流石にこのクロと冷房空間という素敵コラボから逃げないと時間に遅れてしまう。

 にゃー

 ヒールを履いて忘れ物の確認をしていると、これまた珍しくクロがお見送りしてくれる。踏まないように足元の間を摺り抜けるクロを避けながら、ぱっとしゃがんでひと撫でした。

「どしたの、ほんとに今日は甘えただね。ちゃんと昨日の買って帰るから、今日もいい子でお留守番しててよ? 家のことは任せたから、トイレットペーパーをビリビリにしないでおくれね」

 にゃあ

 いつも返事だけはよい我が家の愛猫の頭をもう一度撫でる。何処か名残惜しそうに細められた金眼だったが、時間に焦った私は挨拶もそこそこにドアノブに手を掛けた。



「いってきまーす」



 私はいつもの様にドアを締め、鍵を掛ける。段々と閉まる隙間越しに、ちょこんとお座りしてゆったりと尻尾を振るクロへと笑顔で手を振って



 にゃあ



 そう、いつものように







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