路上のタンポポ 8
そして、その三日後。
僕は目を覚ました。カーテンから差す光は弱い。今日は
曇りなのだ。僕はのそりのそりと起きあがった。
僕は居間に降りて朝食を食べて支度をした。窓を見ると
やはり曇りだった。
-........................。
何か気分がすっきりしないな。
「一樹君、今日も学校よね?気をつけていってらっしゃい
よ」
「はい」
それで用意ができたのでおばさんに挨拶をした。
「それじゃあ、おばさん。いってきます」
「はい、いってらっしゃい。一樹君」
僕は自転車に乗って、出かける。
自転車にのって登校する。景色が灰色に濁っている中、
僕は今学校に行っている。
額田君とどう話すのかまったく決められずに、自分もく
すんだ灰色になっている。
どうするか、どうやったら額田君と仲良くなれるか。
今日は少し強引に押してみるか。そういえば、額田君が
約束したカラオケがまだだった。この手でいくか。
僕は背中がざわざわしている感覚を覚えながら、自転車
をこぎ、そうしようと思った。きっとだいじょうぶだと自
分に言い聞かせていた。
空はどんよりと曇っていた。
今日も自転車置き場に自転車を置き、顔を俯けながら教
室を目指す。
自分んの心臓がどくどく動く、視界がおかしい、何かし
ゃがんでしまいたい感覚を覚える。もちろん、周りの動き
などほとんどわからなかった。
そんな事を感じながら教室に入って、放課後を待った。
放課後がきた。僕は早速額田君にカラオケに誘おうと決
めて実行する。
「額田君!」
「よう、笹原。どうした」
額田君は友達と話していた。僕は彼のそばに来て言う。
伝えることを一気に言おう。
「額田君。今日は一緒に帰れる?ほら、前の約束でチューブ
につれてくれるっていってたよね?そろそろ、行かせてく
れてもいいと思うんだけど」
「ああ、あれな」
額田君はしばらく考えた末言った。
「なあ、お前ら、今日笹原がチューブに行きたいと言うんだ
けど、笹原も誘っていいか?」
「ああ、かまわないよ」
「俺もいいよ」
額田君に返事をしたのが相沢君と枝木君。二人は額田の
友達らしい。
そうして僕たちはチューブに行く事になった。
「ここがチューブだ、笹原」
「へ〜」
高校から自転車に乗って20分ぐらいのところにチュー
ブがあった。田舎のカラオケらしくこぢんまりとした建物
だ。ほんとにゲームセンターも一台2台ぐらいしかない小
さだ。ここは赤磐と言って近くに養鶏場もあるが基本的に
スーパーマーケットやホームセンターとかあがる、都会的
な場所だ。遠くの方に山を切り開いて郊外も作っている。
「じゃあ、行くぞ」
それで僕たちは入っていった。
「いらっしゃいませ」
受付の女性が声をかけてくる。額田君達が時間を相談し
始めた。
「どのくらいまで行ける?」
「まあ、3時間ぐらいまで行けるでしょう」
「うん,そのくらいが妥当でしょ」
「よし」
その後、額田君はこちらに振り向いてきた。
「じゃあ、笹原3時間で言いな?」
「うん,いいよ」
額田君は受付の人に3時間といい,受付の人に案内され
て部屋に入った。部屋への移動中額田君は相沢君達と話し
ていた。
「じゃあ、何でも歌っていいぞ」
相沢君と枝木君がリモコンに曲を入力していく。
「ほら、笹原これを使って曲を入れるんだ。歌手名か曲名を
選んで」
「じゃあ、歌手名」
僕は額田くんから縦横10センチの四角いリモコンを渡
された。それにリモコンの歌手名を選択する。
「それで好きな歌手を入れたら一覧が出てくるからそれ選
んだら、好きな曲選んで。まあ、やってみな」
それで僕は神奈川一丁目を入力して、それを選んだ。
「お、選んだか。それで好きな曲選んで赤い丸を選んだらい
いよ」
僕は好きな曲を選んだ。
「そうそう、それでここをタッチする」
それをタッチする。画面に僕が選んだ曲が映った。
「こうやるんだ。どうだ?わかったか?」
「うん。わかった」
相沢君の曲が終わり枝木君の曲が来た。曲は『ココの地
図』。
枝木君の選曲に額田君が声を上げた。
「お、それってワンピールのオープニングじゃん」
「ああ、俺これが歴代のオープニングの中で好きなんだ」
「いいね、いいね。俺は『ウィル』が好きだけどね」
「おお、お目が高い。それもいいよなぁ」
それで額田君は笑いながらこちらに振り向いてきた。
「笹原、おまえワンピールの曲じゃあ、なにが好きだ?」
「え?」
僕はびっくりした。というのもワンピールのアニメはま
ったく見ないのだ。時々漫画を見る程度で、アニメなんて
全然見ていない。
「ごめん、アニメは見ていない。漫画だけなんだよ」
「そうか............」
額田君は何かがっかりしたように見えた。それは期待し
ていたけど、落胆したという風じゃなくて、期待なんてし
ないけどやっぱりダメな返答がでて、気落ちしたという風
だった。
その後枝木君が歌って、額田君と相沢君がワンピールの
事でしゃべっていた。
枝木君の曲が終わった。そして、自分の番だ。
歌う曲は『虹は海を渡れる』。
僕はテレビの画面の見ながら一心に歌った。間奏の間に
ふと額田君達を見るとこちらを見ずにすごくしゃべってい
た。
カラオケを終えた僕らはチューブから出た。
「これからどうする?額田」
相沢君が聞いた。
「そうだな。マルナカでラーメンでも食うか」
「いいね、いいね、そうしよう」
相沢君が答える。枝木君も。
「俺も構わないよ」
と答えた。
「笹原はどうする?」
額田君が感情を込めず、尋ねた。ただ、あんまり来てほ
しくない気がする。何となくだけどそんな気がする。
「いや、やめておくよ。今日は疲れたから帰るよ」
「そうか」
そういって、相沢さん達に向き直る。
「笹原は来れないそうだから俺達だけで行くぞ」
「おお、わかった」
それから額田君達は笑いながらマルナカに行った。
僕は一人自転車に乗って自宅に帰っていった。雨が本格
的に降り出していた。