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路上のタンポポ7

第三章 高校の日々




 高校が始まって一週間後、僕はそれまで額田と一緒に昼

食をとってきたので今日も一緒に食べようとしたが、断ら

れた。

「悪い、笹原。今日は食べれないんだわ、これが」

「え?どうして」

 いつも一緒にいるから根拠(こんきょ)もなくこれからも一緒に食べ

ていけると思っていたら、あっけなくその想像は終わりを

告げた。

「いや〜、他の友達からさ、お昼を誘われているんだよ。悪

いな笹原」

「いや、それなら仕方ないよ。じゃあ、またの機会に」

 僕がそういうと額田は笑って答えた。

「ああ、そうしよう」

 それでしかたないので、僕はまたコンビニでも行く事に

した。

 空は曇り、今朝は晴れだったのが今は曇りだ。

 その曇天(どんてん)とした灰色の世界の中で僕はコンビニへの歩を

動かした。




 僕はコンビニから帰って、中庭にでも食事をしようと思

って、ベンチを探した。それはすぐ見つかったのだが、そ

れと同時にあの廊下の金髪の少女がそこに座っていたのだ。

 おそらく弁当を食べ終えたところなのだろう。弁当を

巾着袋(きんちゃくぶくろ)につめているところだ。

 僕はまっすぐ彼女のベンチに向かった。彼女は自分が近

づいている事に完全に気づいているだろうに、しかし、ま

ったく慌てたそぶりを見せずに淡々と片付けていた。

 そして僕が傍らに立つと、少女は立って去っていった。

 僕は何となく彼女の後ろ姿を目で追いかけていると、二

人の少女がひそひそと話しているのが聞こえた。

-ねえ、あのこって、確かアメリカの人だったよね。

-そうそう、確かキャサリン・フレイジャーさんだったけ

な。そんな名前だったよ。

-なんかさふてぶてしいよね。ちょっと、ハブしようか。

-それはやめた方がいい。あの子、あの美春ちゃんの友達

なんだって、しかも美春ちゃん、光様の幼なじみなんだっ

て、

-げ、それならやめた方がいいね。

 僕はここでも寺島さんの名前が聞こえた事に驚きつつ、

しかし、ここでは明らかに自分の心の中にあったものはあ

の少女の名前を知った事にあった。

 キャサリン・フレイジャーさん。それがあの少女の名前

か。

 僕は彼女の名前を心の中で反芻させながら昼食を食べた。




 額田君からboyのCDを貰った二日後にCDを聞いてみ

た。

 聞いた感想は正直言って自分の感性に会っていなかった。

あまりに直接過ぎて自分の中では受け入れられなかった。

 当時は加奈子をなどの自意識系にすごい興味が出ていた

ので、こういう天然系には興味が抱く事はなかった。

 それで僕は迷った、と言うかどうすればいいのかわから

なかった。おもしろくないというのか、それが正直である

けど、彼と友達になる可能性がなくなってしまう。しかし、

嘘をつくというのもどうかと思う。しかもつきあいだした

らいずればれる可能性が高まる、ならやはりダメではない

か。

 しかし、それなら彼とはどうやって親交を築く?

 こういう事を考えに考え、というよりも思考が同じとこ

ろをぐるぐる回りに回って、結局彼に正直に話す事にした。




 それがCDを貰った日と後の顛末だ。

 その後お昼を食べる事に拒否をされた。僕はこの事自体

にはあまり衝撃(しょうげき)を覚えなかった。問題は自分と彼に共通の

接点がない事がこのような事態を引き起こしたのだから、

何か共通のものを見いだせばいいと思っていた。

 しかし、まるでわからない。今度、彼の映画の趣味でも

聞くか。

 家に帰ってもこの事をよく考えていた。もし.........。

 もし、この友達付き合いがダメだったら、どうしようか?

 そんな事をふと考えてしまう。しかし、僕はその考えを

振り切った。また、明日話して考えればいい。




 放課後になった。天気はあくまで曇り。額田君の事をは

どう、話しかけようと思ったが、考えてもしかたないので

思いきって話す事にした。

 額田君を捜す。

 いた!額田君は友達と話してるようだ。どうしよう。友

達と話しているのにこちらが話していいものだろうか......

......。

 いや、まず話してみよう。とにかく、そうしよう。

「額田君!」

「ん?」

 僕は思いっ切って額田君に話してみた。額田君はこちら

に振り向いてくれた。

「あのさ!よかったら、放課後帰らない?花村にでもよって

さ、それで話でも............」

「悪い、笹原」

 額田君に悪いと言われた瞬間、何か僕の心の中がすとん

と落ちた気分になった。額田君の言葉で納得してしまった

のだ、この僕が。

「実は今日、こいつの家にいく予定なんだわ、それで今日は

一緒に帰れねぇ」

「ああ、うん。わかったよ。............それじゃあね」

「ああ、笹原、さようなら」

「さようなら」

 それで僕は額田君と別れて一人で帰り支度をした。

 自転車置き場に向かう途中、校舎のそばに咲いていた桜

が散り始めていた。




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