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路上のタンポポ 2


 ぉぉぉぉぉぉぉ。

 僕は新幹線の中にいる。東京、岡山行きの便に乗ってい

るのだ。

 そう、これから、岡山に行くのだ。

 新幹線に揺らされながら、僕は自分がどうなるのかとい

う事を思う。

 どうなるのだろう?僕は岡山に行って、何か変わるのだ

ろうか?それとも変わらない?

 そんな事を思いながら僕は新幹線の席に横たえた。 




 今は夏休み。もちろん僕は不登校で何も予定はない。家

族も似たようなものだ。しかし、僕は想像してみる。僕と

同年代の子はきっと、友達と一緒に遊んで海に行ったりと

かしているのだろう。しかし、僕は何もしていない。

 そういう友達とかがまったくいない事も理由にあるが、

何か僕自身何かしないといけないという気が身体がねじれ

るような感覚でしてくるのだ。

 それである日の事、みんなが出かけていた御昼下がり、

電話がなりだしてそれを僕がとると小城叔父さんの声がし

たのだ。

『おう、一樹君か、元気にしてるか?』

「いや、あんまりしてないです」

 小城叔父さんは岡山に住んでるお父さんの兄なのだ。つ

まり僕にとて叔父に当たる。

 電話越しの曇った声がする。

『そうか......ところで慎也はいるか?』

「いや、父はいません」

『そうか、それならお父さんに伝えておいてくれ、岡山に

はいつでも来てくれいいって』

「はい」

『はは、一樹君もこっち来てもいいよ』

「......僕が?」

『もう、中学生だろ?新幹線は一人でのれるよね?そした

ら駅でまっているからさ、改札くぐれば僕がまっているん

で、一人でもこれれるだろう?』

「いや、でも......。ごめん、よくわからない。どうすればい

いのか......」

『はは、まあそうだな。親との許可もいるしな。でも、も

う中学生なんだがら、少し冒険してもいいと思うぞ。一樹

君も一人で岡山に来るのが不安なんだろ?』

「......はい」

『でも、若いうちは冒険をしといた方がいい。ちょっと怖

いぐらいの冒険がいいからな。ま、そういう事でいつでも

家においでとお父さんに伝えといて』

「はい」

 それで電話が切れたのだ。僕は叔父さんの事を考えた。

僕の叔父、小城和也。僕の名前と一文字違い。岡山に住ん

でる。父の兄。確か職業は靴製品の仕入れ業者って言って

たっけ。

 叔父とは何度か会った事がある。その記憶を呼び覚ます。

かなり、気さくな性格だった。僕にもよく話しかけてきた

っけ。

 あの叔父さんなら......。

 あの叔父さんなら、自分をなんとかしてくれるんじゃな

いのか?

 なんとかと言ってもどう、具体的になんとかするのか僕

はさっぱりわからなかったけど、今ある気持ちはとにかく

自分を変えること。どう、変えるかわからないけど変える

こと。

 僕にはその気持ちだけが心に充満(じゅうまん)して、時々身体を突き

破ることがある。成長にいくにすれ、そういうことが起き

てくるが、このときがその感覚の最初のときなのだ。

 そして、僕は夕食の時にこの事を家族に話した。つまり、

一人で叔父さんのところに行きたいという事を。家族、特

に母が慌てた。だけど、話し合いの末、まず、僕と家族が

叔父さんのところ、実家に戻る、その後僕を残して変える、

それで夏休みが終わる頃に僕が一人で帰るという事になっ

た。

 それで僕は岡山に来た。岡山に来るのは何度かあったけ

ど、やはり感想は山がすぐそばに見えるという事だった。

東京ではこんな事はないけど、山が見えるのだ。新幹線の

ホームから!

 そして僕たちは岡山駅から山陽本線という線路にのって

瀬野(せの)に来た。駅を降りると叔父さんがまっていてくれた。

「おう、慎也、久しぶり」

「ああ、そっちもずいぶんだな」

「ああ............。奥さんもお久しぶりです。いや〜、いつ見

ても美しいですね」

「も〜、和也さん、いつも御上手なんですから〜、私はもう

年ですよ」

「いやいやいや、そんな事ありませんよ、奥さん。奥さんは

まだまだ現役ですよ、本当に」

「もう、ホントお世辞が上手なんですから」

 僕は叔父さんを見た。このくだらない社交辞令をする叔

父を。くだらないと書いたが、僕自身社交辞令は必要で叔

父さんのやっている事は正しいと思うのだが、問題は僕の

母の方だ。ただの社交辞令だとわかりきってるのに大げさ

に感情を表す母に嫌悪を抱いていたのだ。

 それはともかく、僕は叔父さんを見ていた。駅の入り口

に立ち外の逆行を受けている叔父の姿を見て、この人は僕

にとっていったいどういう人になるのだろうかと思った。

「信二君も久しぶり」

「はい、叔父さんも元気そうで」

 兄が答える。

「一樹君も久しぶりだね。お父さんから聞いてるよ、これか

ら一ヶ月の間よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

 僕が泊まるという話はすでに叔父に連絡してある。叔父

が快く引き受けてくれたのだ。  

 今の自分は家族とうまくつきあえない。 僕たちはその

後、叔父の車に乗り込んだのだ。




 毎度岡山に瀬野(せの)に来る度にいつも思う事なのだが、ここ

は本当に山が多いなと思う。

 叔父の車から田んぼや電車の路線とか田舎の町並みとか

もよく映るが、やはり、山が迫ってくるような感じが覚え

るほどここの山が近いと感じるのだ。

 実際駅から叔父の家に着くまでの間そこそこ勾配(こうばい)な道路

なのだ。

 ほどなく僕たちは叔父の家に着いた。叔父の家は周りを

田んぼに囲まれた中建てられたマイホームだった。元々は

紺の屋根と白い壁だったのだろう。だが、今は屋根は色あ

せているし壁もくすんで灰色の壁になっている。

 ちなみに説明を四と置かなければならないだろうが、僕

のお父さんの実家とは、またおじさんの言えとは別な所に

ある。

 といってもすぐ近くだが、

僕たちは車から降りて叔父の家の扉を開ける。

「おじゃましま〜す」

 母が言って叔父の家に上がり込む。そして、それを僕た

ちが、おじゃましますと言いながら上がり込むのだ。

 リビングに入ると中年のおばさんが顔を出してきた。

「あらあら、いらっしゃい。まあ、楽にしててね」

「いえいえ、康子さん、私に何か手伝える事はないかしら?」

「いいえ、お客様に手伝わせるわけにはいきませんよ。静子

さんはゆっくりしててくればいいのだから」

 この康子さんと呼ばれた人が和也さんの奥さんにあたる

人だ。つまり僕のおばさん。

 康子おばさんは明るくて気さくなおばさんだ。明るくて

気さくだけど一気にしゃべらず、適度をわきまえている、

『おばさん』の理想的な姿と言ってもいいと思う。

 康子おばさんが僕らを迎えうための料理をもうすでにし

ていた。東京からこちらに新幹線で来るのに半日はかかっ

たのでもう今は夕刻の時刻を過ぎているのだ。それだから

もう夕食の時間なのだ。

 その後、僕たちはおばさんの作った料理を食べて就寝し

た。




 家族達がいる三日間はとうに過ぎて僕は叔父さんのとこ

ろにいた。今は8月5日で、予定では夏休みが終わる一週

間前に帰るのだ。後藤先生達からだされた宿題の残りもこ

ちらにもってきた。ここで夏休みを過ごすために。

 お昼時、閑散とした明るさが場を包む。僕が居間で寝そ

べっていた。岡山はやはり東京都は何かが違う。光や空気

が濃密な気がする。もちろん東京も暑かったけど、ここの

暑さは東京のようにじめじめとした暑さではない。もっと

ねっとりとした暑さが自分を包み込んでくる。そういう暑

さに身を包まれると何か、何もする気がなくなる。まあ、

理由はそれだけでなくて今日の分の宿題が終わったから、

思う存分ぐったりしているのだが。そうやって寝そべって

ると声が聞こえた。

「あら、一樹君。お疲れ?」

「.........いつも疲れています」

「あらあら、それは大変ねぇ。若いのにそれはもったいない

わ」

 ある意味で嫌みに聞こえる台詞だが、なぜか康子さんの

丸い声から言われるとそれほど嫌みに感じられない。むし

ろ、しんどさが軽減されるように感じられる。

「康子さんは............」

「ん?私が何?」

 僕は思わず出かけた言葉に、でもこれを聞くのは何か、

唐突な気がしたやはり言うのをやめようとした。

「い、いえ、なんでもありません」

「ダメよ、一樹君。一度言いかけた言葉は言わなくちゃ」

「え、でも............」

「ほら、おばさんにいいなさい」

 ならば、僕は言おうとした言葉を口に出した。

「康子さんは生きていて楽しい?」

「あらあら、なにを言うかと思えばそんな事言うなんてね」

 康子さんは驚いたように目をぱちぱちさせていた。

 やはり言うべきではなかったかな。僕は思う。あまりに

唐突(とうとつ)だよな、こんなあまり会った事のない(おい)からこんな言

葉を受けるなんて。でも、何となくふっとわいた言葉だっ

たのだ。

 康子さんはまだ驚いてる。

「一樹君が言った事、いままで考えた事なかったわ、正直言

って。............一樹君は生きるのは楽しくないの?」

「......ええ」

 康子さんは少し考えるそぶりを示してから言った。

「なるほどね。まあ、私もそんなに毎日が充実してるわけで

はないけどね。日々の仕事をしていたらいつの間にかこん

な年になったという事だけの事なの。............一樹君はそ

んな事ばっかり考えるの?」

「ええ、こんな事ばっかり考えます」

「まあ、私なんかの助言じゃあ心もとないかもしれないけど、

まあ、何とかなるわよ。私はこれまでこうして生きたから

これしか言えないの。こんな答えで言いかしら?」

「いえ、康子さんの答えなら安心できます」

 本当に康子さんなら何となく安心できた。こういう言葉

は書物とかで読んでも反発するだけだが、立派な人が現前(げんぜん)

して言うと何となく説得力をもつようになるのだ。

「そう?それならいいのだけどね」

 これが僕と康子さんの初めて二人っきりで話した内容だ。

家族以外の人とまともに話したのはこれが最初な気がする。

 康子さんを思い出すときはなぜか(一度も行った事がな

いけど)湿原を思い出す。ひんやりと涼風を運んでくる青

い存在。康子さんにはなぜかそういうイメージがあるのだ。




 ある日の夜の事。僕はやはり(せみ)の声を聞きながら寝そべ

っていた。普通、新しい場所に行ったらいろんなところに

行くのが普通だと思うが、僕はそんなにいろんな場所には

行かなかった。

 ある程度は出歩いた。岡山市に行って後楽園とかも見た

し、倉敷に行ってチボリ公園にも行った。だけど、僕自身

あまり出歩く質ではなかった。それで僕は叔父の家でのん

びりしてるところが多かった。

 それでもう全ての宿題も終わって、本格的にだらけてい

る時に叔父が声をかけてきたのだ。

「よう、一樹君、元気か?」

「来た時よりは元気になりました」

「それはよかった。確かに顔色が良くなっているよ」

 その後僕たちは黙った。僕自身、まともに人と話す事は

そうなかったので初めて知ったのだが、人と話していると

沈黙のときが訪れる事を知ったのだ。特に男性どうしで話

すとそのときが多いという事も。

-...........................。

 夜の静けさの中、やはり叔父さんが最初に口火を切った。

「まあ、なんだ......。一樹君が夏休みこっちで過ごすと聞い

て,叔父さんはびっくりしたぞ。あんな事言ったけど、本

当に来るとは思わなかったからさ......」

「........................」

 僕は黙った。確かに叔父さんの言う事もわかる。普通、

いきなり(おい)が家にくると聞けば誰だって驚いてしまうだろ

う。

 しかし、これでも考えた末の行動、か?考えたというよ

りも切羽詰まった(せっぱつまった)末の行動と行った方が正確だろう。

「でも、僕だって、なんというか、とにかく何かしなくちゃ

と思ってここに来たんです。もう、僕はいったいなにをす

ればいいのかわからなくなっているんです」

 叔父さんは少し表情が変わった。僕の不登校の事は知っ

ているのだろうか?

「それは学校に行ってない事と関係があるのか?」

「はい、もちろん大ありですよ。学校はすごく苦痛だし、そ

れで行くのやめたけど行ってない事もすごく苦痛だったの

です。もう、なにがなんだかわからないんですよ、本当に」

 語りだすうちに熱がこもってくる。この話は誰にもでき

なかった。そして誰も聞こうとしなかった。当時は家族に

聞いてほしかった。今はそういう事は期待していないし、

家族ともできるだけ関わりをなくそうと思う。そして、そ

れでいいのだ。

 叔父さんは首を小刻(こきざ)みに動かしていた。僕は僕の話をし

っかり聞いてくれているという感覚に初めて満たされた。

「その、なんだ。今もつらいよな」

「はい、つらいです」

 叔父さんは何か思い切った事でもあるのか、座り直して

あることを言う。

「それで今学校に言ってない事がつらいなら、これから学校

に行く気はあるか?」

「........................」

 僕は何度もその事を考えたけど、やはり怖いのだろう、

途中で思考が止まってしまうのだ。

「僕も考えましたけど、途中からいきなり学校にはいる事は

ちょっと、ダメです。もう、中学3年の事ですし、今から

じゃあ、無理です」

 僕の顔色が悪くなったのだろう。叔父はせき止めるよう

(あわ)てていった。

「そうか、わかったよ」

 それから叔父は少し考えだした。

「じゃあ、今から学校に行くのは難しいとして............どう

するかな?」

 考えだした叔父に僕は少し挙手していった。

「あの......。少し、これからの進路についての考えがありま

す」

「ん?何かな」

「今、僕は家庭教師に勉学を教えてもらっています。両親に

はまったく感謝できないけど、これだけは感謝しています。

だいたい、中学の基礎はなんとか押さえていますから、中

学が終わったら、高校に行きたいと思います。どうなるか

わからないけど、やはり学校には行きたいですから」

 叔父は(いぶか)しげな表情を作った。

「一樹君は高校にいけれるの?」

「それは............わからないけど、でも、行かないといった

いなにをすればいいのか。よくわかりません」

「まあ、それはね。不登校専門の学校言ったり、予備校で大

検とったりいろんなやり方があるよ」

「はぁ、そういう道もあると思います。だけど、予備校は友

達ができる場所ではいとおもうからあんまり行きたくない

です。やっぱり高校に行かないと友達はできないと思いま

すから、だからまず、高校に挑戦したいです。叔父さん、

僕の考えはどうですか?」

 僕は叔父を一心(いっしん)に見た。叔父も僕の視点をじっと受け止

めてくれた。

「いや、一樹君が行きたいなら止めはしないよ。そうか、高

校にね。まあ、確かに一度は挑戦した方がいいな」

 叔父は納得してくれたようだ。それで僕は思い切ってあ

の事を言ってみた。

「あの、叔父さん。実は折り入って相談が......」

「なんだい?」

「実は高校に行く時に僕の実家ではなくここから高校に行

かせてほしいのです」

 僕の台詞に叔父さんは驚いていた。

「それはまたすごい事言ってきたね。なんでここの高校に行

こうと思ったんだ?」

「はい、それは実家が嫌いだからです」

「親の事を嫌いと言っては行けないよ。せっかく育ててくれ

たのに」

 叔父は少し顔をしかめていった。

「でも、嫌いですよ。まあ、それは置いといて、他には立川(たちかわ)

の高校は人が多い。立川(たちかわ)の高校には行きたくないというの

が二つ目の理由です」

 そういうと叔父は苦笑していた。

「ここの高校もかなり人がいるよ。まあ、400人ぐらいは

いたか。それでもだいじょうぶなの?」

立川(たちかわ)よりはましでしょう。あそこは800人ぐらいいます

から」

「確かに」

 それから、叔父さんは考えだした。

「どう......ですか?」

 叔父は顔を上げた。

「いや、そんなにすぐ決められない。まあ、確かに子どもが

巣立っていったから空きはあるが、何ともいえないな。ま

ず、親の同意を得てからだね」

「............。そうですか」

 僕は頷いた。そんなものだと思っていたが、やはり叔父

さんの出された結論にこういっては伝わるかどうかわから

ないが疲労を感じた。

 失望は感じていない。こんなものだと思っていたから。

ただ、予想通りに物事が進んで、予想された事の到達を確

認した時に、ああ、またこうか、と思っただけだ。

 僕が黙っていたら叔父さんが僕の目を覗き込んできた。

「これじゃあ、不満か?」

「いえ、不満はありません。確かに親の許可が必要ですから」

「そうか............」

 叔父さんは黙った。それから口を開いたのだ。

「ごめんな、一樹君が苦しんでいるのに何もしてあげられな

くて......」

「いえ、こちらこそ。無理難題を聞いてくれてありがとうご

ざいます」

 このあと僕たちは礼をしてわかれた。

 僕はその後布団に横になって叔父さんの話を思い出して

いた。初めて、人の暖かさに触れた気がした。親との暖か

さとは違う。あの親は何かおかしい。確かに優しいけど生

身で話し合うという事をまったくしてこない。それに比べ

て叔父さんは生身でふれあってきたのだ。そういうのが人

間の暖かさだろうと僕は思うのだ。




 僕は叔父さんの家にいていろいろ考えていた。ここで起

きた出来事はあまりないけど、おそらく家から離れていた

ためだろう。僕が自然に安心できた。

 家ではこうはいかない。あそこは何か不自然だ。親とい

うより前にも言ったが子どもの教育をしているのは母親だ。

父はまるで何もしていない。その母は最近はなにもいわな

くなってきた。多分、不登校は刺激してはいけない、とい

うような事を聞いたりしたんだろう。ただ、しかし、何か

すごいプレッシャーというか、すごい気を使わせていると

いうのが僕にとってすごいプレッシャーになるのだ。僕は

ずっと子が不登校になったら親はどういう反応をとるのか

を考えていたが、親が子どもを気遣っていても、その気遣

いが子どもにとって凄まじいプレッシャーとなる逆接(ぎゃくせつ)

こういう事を考えて言葉にできない苦しみに悩んでいたが、

本などを呼んである日すとんと答えがわかった。

 叔父さんの家にきて学んだ事は家族と離れる事がどれほ

ど大切かということ。

 親と一緒にいると親と相性がよければいいけど、良くな

かったらひたすら親の事で神経が費やされてしまう。それ

がどれほど病理的かを僕は身を以て学んだ。

 不登校時。しょっちゅう親がどう出るかでそれに神経を

集中してそれでもう、嫌になった。どれだけまっても、親

は自分が思ったように行動をとらないのだ。

 僕の両親、いや、母親は何度か僕を不登校専門の遊び場

に連れて行ったことがあって、その帰りにホットケーキと

かをごちそうになったが、まともに僕自身にこれからのこ

とを(たず)ねることはしなかった。

 僕に食べ物をおごって、それでなにもしなかった。

 おやつを上げれば親の義務を果たすことになるのか?そ

んな動物を愛するような仕方で親は子どもを愛していると

言えるのか?

 僕はそう思わない。彼らはそういう仕方で僕を愛してく

れたが、しかしまともに僕にこれからの進路や学校の尋ね

かった。

 これは腐ったカウンセラーや精神科医が害毒ははき続け

ているから問題だと思うが、不登校になったときは見丸だ

けじゃあだめなんだよ。

 一週間ぐらいは様子を見るぐらいでいいと思うけど、し

かし機械を見て、できる限り三日後から1週間以内の期間

に本気で子どもと関わらなければならないと思う。

 その子どものこととか、学校のこと、進路について本気

で話さなければならないと思う。

 もし、そういうつっこんだ話しをしないなら、子どもは

親に本気で見放されたと思って、かなり強い人間不信に陥

るんだ。

 見守ることも度を過ぎればそれはそれで子どもを蝕んで

しまう。だから、あまり見守ることにたいして注意を払っ

た方がいい。

そんな狂った状況でずっと親の事を見ているのだ、頭がお

かしくなる。

 それはともかく過去の自分はなにを考えていたかという

と、叔父の家にいると親がいない分すごく安心できるとい

う事だ。

 叔父さんとおばさんには僕にとって安心ができる相手だ

った。

 例えるなら、ワークホリックの人が仕事がないど田舎に

休暇で来たときのようだった。仕事中毒のように、いれば

その事をいつも考え続けてしまうのだ。それにはもう、僕

は耐えられない。ここに来た時あまりにあの事を考えなく

てよかったので僕は圧倒的に今までにない安らぎを憶えた

のだ。

 もう、正直言って実家の事は書きたくない。しかし、あ

と少し書こう。そう僕が叔父さんの家を離れるときなのだ。




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