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路上のタンポポ (完)

さて、今日なにがあったんだ?」

 夕食のあと、僕が風呂に言って、康子さんが洗い物が終

えると。僕と叔父さん二人だけで話す事にした。

 そして、今、今日僕におきた事、いや、高校にはいって

から僕自身に起きてる事を話さなくてはならない、と思い

直して話す事にしたのだ。

「実は今日、先生にしかれたんです」

「ほう」

 僕の声は知らず、知らず小さくなっている。僕はその事

を知ってはいても人にこんな悩みを言うこと自体あんまり

ないから、自分でもどうにか吐き出そうと努力をしなけれ

ばならなかった。ので、声が知らず知らず小さくなってい

るのだ。

「先生には僕が宿題をしていてないのをものすごく責めら

れましたけど、僕はそれどころじゃない。僕は今、小学生

の頃に逆戻りしようとしているんです」

「.....................」

 叔父さんは黙って聞いていた。僕は叔父さんの事じゃあ

なくて僕自身がかなりビリ、ビリと心が(きし)んでいるのを知

った。それほど、この事は人に話したくないという心が、

身体が警告(けいこく)を発しているのだと知ってはいるが、自分は今

ここで話さなくてはならないと思い、叔父さんにだけは伝

えようと思ったのだ。

「それでもう、どうしたいのかがよくわかりません。いや、

どうしたいのかはわかっています。小学生のときのような

孤独にならない事です。しかし、今ここで孤独の道にもの

すごく向かっています。友達もできた、と思った瞬間に離

れていくし、もうほんとそれで本当に孤独になっているん

です。それで怖くて孤独の状態に戻っていく事がきつくて、

勉強が身にはいらないんです。本当にどうしたらいいか...

............」

 叔父さんは黙って聞いていたが、ここで僕にいくつか質

問した。僕の話の内容を整理したいのだった。

「一樹君は孤独を恐れているのだね?」

「はい」

「それで今小学生の頃と同じなような状況になっているの

だね?」

「はい」

「それでその孤独に置かれているから、孤独自体にものすご

くおびえて勉強に身にはいらない、宿題をやらない。そう

いう事なんだね?」

「はい」

 僕は自分が今なにをしているのか全然わからなかった。

ただ、すごく混濁(こんだく)とした白さに頭が包まれていると感じる

だけだった。

 だから、叔父さんの存在自体もよくわかっていなかった。

叔父さんがなにをしているのかまったくわからないのだ。

 しかし、叔父さんは僕を呼んだ。それでなんとか目を覚

ました。

「一樹君、一樹君」

「あ、はい」

 なんだろう、僕の話にどう、結論を出すのだろうか。

 叔父さんは少し目を下に向けて、そして、僕の目を見て

話した。

「君は少し勘違いをしているようだが、学校は友達を得るた

めの所じゃない。勉強をする所だ。だから最低限の勉強は

完全にこなしなさい」

 頭ががつんと殴られた衝撃を受けた気がした。さらに叔

父さんの話はこう続く。

「一樹君。君は確かに同情すべき点もあるけど、それとは別

に自分に課せられている本来の仕事をおろそかにしてはい

けない。一樹君なりの悩みとかあるようだけど、でも宿題

はしなさい。いいね?」

 僕はやっとの事で(うなず)いた。

「は、はい」

 それでおじさんの話は解散となった。そこからどうやっ

て自分の部屋に行ったのか覚えていない。ただ気づけば、

自分の部屋にあがって、そして寝た。

 真っ暗の部屋の中まったく眠気が襲ってこない状態で、

ずっと部屋の天井を見る。

 僕はどうなるのだろう?

 そんな事ばかり考えていた。僕の課せられた役割。それ

は勉強をする事、僕はそれをするのか............。

 そんな事ばかり考えていても、やがて緊張の糸は切れる。

僕は自然に眠っていった。






 僕は朝の光に目が覚めて自然に起きた。いつもはまだ眠

気が残りながら、いやいや起きるけど、今日は自然に起き

た。

 だが、心の中は自然かというとそうでもない。まだ、頭

がふらふらしているような気がする。

 とにかく下に降りて朝食を食べて、学校に行かなければ。

 そう思い僕は下に降りた。




「おはよう、一樹君」

「おはようございます」

 康子さんと挨拶をする。

「おはよう、一樹君」

「おはようございます。叔父さん」

 そして、叔父さんとも挨拶をするのだ。

 叔父さんを見ていると昨日の事が思い出されるが、努め

て考えないようにまず朝食を食べる事に専念した。

「一樹君、今日はえらく威勢よく食べているね。どうかした

のか?」

「なんでもありません」

 朝食を食べ終わると次に薬をのんで、薬を体中に塗った。

僕はアトピーで

朝起きたときと風呂から上がった時に保湿剤とかゆみを

抑制(よくせい)する薬を塗らなくてはならないのだ。

 それを塗り終えたら、制服に着替える。着替えたら、今

日の授業を確認してそれにあわせた教科書があるか、確認

する。

「よし、いいな」

 そんな僕の様子を見ておばさんが一言いった。

「どうしたの、一樹君。今日はいやにテキパキしてるじゃな

い?」

「いや、なんでもありません。今日から心を入れ替えて勉学

に励もうとするだけです」

「そう?まあ、身体に気をつけて頑張ってね」

「はい」

 そして僕は家をでた。




 僕は自転車に乗って家にでた。叔父さんの家は田んぼに

囲まれた中にある。そこから本道にでるために小さな道で

田んぼを回らないと行けない。

 その、本道にでるための道で僕はあるものを見つける。

少しそれを見るために僕は自転車を道路の隅に止めた。

「タンポポ............」

 それは確かにタンポポだった。アスファルトの上に咲い

ている。しばらく僕はそれを見ていた。何か大事なものを

提示されているみたいに。

「よし!」

 僕はそれを見て、また自転車に乗った。

 僕自身の問題はまったく片付かないけど、それとは別に

僕は自分の役割を果たさなくてはいけない。それはかなり

きつい事だけど、僕はそうやってでしか生きていけない。

 今も孤独である事がきついし,自分の中の人とのつなが

りが欲しい情念は枯れる事なく成長している。それが逆に

自分を苦しめる。

 しかし。

 しかし、生きていくしかないんだ。苦しくても、咲くし

かないんだ。それが生きるという事だから。

「よし」

 そう思いながら僕は力一杯ペダルを踏み込んだ。それは

やせ我慢だったけど、そういう苦しみの中に生きていかな

ければならないから、なんとか(ふる)いたさせて僕はこぐのだ。








 


 


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