路上のタンポポ 10
5月のうららかな陽気に誘われてクラスもどこか明るい
雰囲気になっている時に2時限目の英語の授業が始まる。
「きりーつ。れい」
最近ようやくこういう儀式にもなれてきたところだ。
「みんな、おはよう。さて、最初は昨日言った宿題からやろ
う」
先生は西潟先生。英語の教師だ。もう、40ぐらいにな
る男性の教師で、もうしわが寄っているおじさんだ。
「さて、それじゃあ。いつもと違って今日はみんなが一人ず
つ答えを言っていく形式にしよう」
クラスにざわめきがは知る。この英語の授業は毎日単語
テストがあって、前回の授業で言った単語をどれだけ覚え
ておけるかというものだが、普通は僕らが書いた答えを先
生が答えて自己採点する形式なのだ。それを今度は一人、
一人自分の答えを言う形式にすると先生が言うのでクラス
に戸惑いの空気が溢れ出しているのだ。
「はいはい、静かにするように!」
クラスのざわめきがやんだ。
「僕は考えていたんだけどさ、やはり一人、一人が当てられ
ると思わなきゃ、君たちは勉強しないでしょ。だから、僕
はこの形式にするの。さて、それじゃあ、早速やってみよ
う」
クラスの人達は戸惑いながらテストを受け取っていた。
僕も少し驚きつつ、しかし、あまり危機感がなかった。
当てられたら困るのは目に見えてわかっていながら(僕
はまったく宿題をしていないので)しかし、危機感がなか
った。
それは絶対当たらない自信があるからではなくて、僕の
中ではそれどころじゃあなかったためだ。せっかくできそ
うになった友達がいたのにそれができなくなったことの落
ち込みの方がひどかった。
また、小学生のときと同じように友達がいないのか......。
と思うとかなりしんどかった。
いろいろ、先生が生徒達を当てていっている。しかし、
それが僕にとって現実感がある話とは思えなかった。実際、
当てられると困るのが目に見えているのに危機感がわかな
かった。
「............ら。......原!」
最初何の事かわからなかった。しかし、それが自分の名
が呼ばれているのだとある瞬間にわかった。
「笹原!聞いているか!」
「は、はい!」
席を立つ。西潟先生は明らかに怒っていた。しかし、先
生は授業を進める事を優先する事を選んだみたいで僕に宿
題の答えを求めた。
「笹原、関係のスペルを書きなさい」
僕は黒板に来たが当然の事ながらしてきてないものをわ
かるはずはなかった。
僕は下を向いたまま先生に言った。
「すみません、わかりません」
「もういい。下がってよろしい」
先生の声はあきれていて、どこか怒りを含んだ声だった。
僕は頭が真っ白になりながらどうにか席につく事ができ
た。
つかれた。
学校が終わる度にそう思う事が多くなっている。という
か、最近こんな感想しか出てこない。
「あははは、美春,違うって、私そうじゃないよ」
「でも〜、加々美ちゃんは結構、おっちょこちょいだと思う
のね。この前も教科書忘れてたりしてたじゃない?どう、
自分がドジっ娘だって認める気になった?」
寺島さん達が話している。寺島さん達女の子が集まって
話しているのだが、主に話しているのは寺島さんと中田加
賀美さんだ。その周りに女子やはたまた男子までも加わっ
ている。彼らはその話に笑っているのだ。それで中田さん
はてきぱきとした動作ができる女の子だったよな。
「あははは。それはないよ美春!」
「ええ〜、そうかな〜」
彼女達の話に皆が笑ってる。僕はそれを見ながらそっと
教室を出た。
教室を出て、校舎に出るまでの間に僕は敗走したような
気持ちになった。
僕は自転車をこいで家に着いた。そこから自分の部屋が
ある2階に直行する。
「ふぅ」
僕自身、ものすごく疲れているのが本当にわかった。今
までの生活。小学生の頃にはなりたくないと願いつつ、だ
んだんそれに戻ってくるのを感じていた。
僕はもう、何も考えたくなかったので、そのまま寝た。




