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「俺のこの傘?レーザーライフル」

作者: 鼻血魔人

 男なら誰しも経験があるだろう。学校の行きかえりの道端で、傘を振り回したことが。それも、ただ振り回すんじゃない。武器として振り回したことが。有るよな?有るよね?っつぅか無いとおかしい!


 俺か?俺は当然ある。当たり前だ。時に刀として、時に剣として、自分の右手のその傘が聖剣か魔剣であるかのように振り回した。雨の日は最高の遊びを俺に提供してくれたから、正直今でも雨は嫌いじゃない。


 ちなみに俺の時の流行はあれだ、アバ○ストラッシュだったな。いろんな奴が傘を逆手に持ち替えてやってたな。渋い俺はブラッ○ィースクライド派だったからな。捻りながら突き出すのが基本だった。それで貫くわけよ、その辺に立っている標的と言う名の電柱をな。上手くできたときは、傘のシャフトが曲がってちゃんと開かなくなってよ、お母ちゃんに怒られるまでが一連の流れだったな。


 まあ今はだ、そんなことも大っぴらに出来なくなる年齢だ。30手前のおっさんが、さすがにアバン○トラッシュはできねえよな。なんてことをだ、目の前を傘でチャンバラしながら走り抜けてったガキを見てて思ったわけよ。おっと、自己紹介が遅れたな、俺は鷲崎、鷲崎明。しがないサラリーマンやってる、ごく普通のおっさんだ。ちょっと子供心を忘れられなくて、ライトノベルが好きってこと位しか、特徴は無いな。秋の終わりの寒い日に、ちょっと営業に出なきゃいけないんで歩いている。天気予報は雨、午前中は降ってたが、今は地味に止んでる。けど曇り空でな、ちょっと気が滅入る。まあ暇なんでちょっと着てるものでも紹介するかね。


 右手には黒い傘、ちょびっとだけ良い物だ。バー○リーってブランドだ。『同色系の2色のカラーがとてもおしゃれな傘で大人のメンズという雰囲気を与えてくれます。』って謳い文句に乗せられて買ったやつだ。傘の癖に1万位した、正直届いてからちょっと後悔…してねぇ!してねぇぞ!大人のメンズとしては必須のアイテムだ、うん。そうにちがいない…。ま、まあ左手に持ってるのはスーツ売ってるところで買った普通のビジネスバックだ。中には諸々と会社の書類が入ってるが、今日に限ってなぜか白紙の契約書が大量に入ってる。お客さんと契約するときの奴なんだが、ぶっちゃけ入れた記憶が無い。多分となりに座ってる加藤の嫌がらせだろう。相変わらず意味の分からん嫌がらせをする奴だ。地味に重くなってるから、地味にむかつきが増してくるという、実に地味な嫌がらせだ。まあ、着てるもんは普通のビジネススーツだ、二枚目0円で買った奴だ。ネクタイって奴は本当にむかつくな。なんでしなきゃならんのだ。だがちょっと待ってくれ、着てるコートは中々良いものだ!トレンチコートってやつだ。謎に腰の所にベルトがあるのだが、それが俺の心をくすぐるのだ。これぞメンズだろ!更に、買った店で聞いたんだが、ベルトは締めなくてもよくて、両端をポケットに入れたりもするらしい。意味が分からん。だがまあ、それがオシャレだというのなら実践すべきだろう。俺は、大人のメンズだからな。


 なんてことを脳内独り言している俺は、どう考えても根暗だろう。と気付いて、さっきまで落ち込んでた。要はあれだ、店にたどり着くまで暇なのだ。健康のために歩こうとか考えるからこうなるんだよなぁ。きっと世の中の人も、音楽聴きながら、こういう脳内独り言で時間を潰しているはずだ。そうだよな?そうだと言ってくれぇ!


 おっと、涙が出そうになっちまった。顔を上げねば。おや、雲の切れ間から光が差してる。良いねぇ、天使のはしごってやつか。中々に幻想的じゃないか。そういや、さっきのガキ達みてぇに、昔は遊んだっけなあ。…むむ、いかん。俺は大人のメンズ、今更に傘を剣として振り回すような男ではない。そう、俺のような大人のメンズは傘は銃として使うのだ。え?何が違うのかって?細けえこたあいいんだよ!当然、傘の長さ的には、拳銃じゃない。ライフルだ。ゴ○ゴが使うようなライフルなのだこの傘は。しかし、流石に両手で構えるのは恥ずかしい。言い訳も出来ないからな。と言うかあれだろ、ライフルを片手で使えたほうがかっこいいだろ。うん、そうだ。F○8のアー○ァインのように、片手で構えて何事も無いかのようにぶっ放す。最高にクールじゃねぇか。今は丁度良いことに人目もねぇ。懐かしきあの時代をちょっと取り戻すか。


 右手を上げろ。傘の持ち手はグリップだ。眼に見えないがトリガーはそこにある。発射される銃弾はどんな敵も貫くのだ。クールにいくぜ。人差し指を握りこめ。


 当然、手応えなんかあるはず無い。何せ傘だ。ライフルじゃない。手応えが返ってくるはずが―――




  カチン




 「え?」



 俺の右の人差し指には金属の何かを押した手応えがあった。瞬間、右手に持っているものの先から、エメラルドグリーンの光条が発射される。それは、その延長線上にいた、小汚い緑色の小人を貫き、その先の壁すら貫通していった。


 「え?…え?」


 「ゲギャ!?ゲギャアアアア!!」


 おかしい。俺はさっきまで街中を歩いていたのに、何で天井があるんだ?っていうか何だこいつら。汚い緑に気持ち悪ぃ顔しやがって、特殊メイクか?ん?あいつらが囲んでるのってなんだ?普通の人間か?あ、こっち見た。すげぇ驚いた顔してるけど、美人だな。ってこっちに来る!?


 「#※в¶∀Ш☆!!」


 …何言ってんのかわかんねぇ!!外人かよ!っつぅかめっちゃ泣いてるじゃねぇか!って、あっちにも人っぽいのが…頭割られてんのか?…死んでねぇか?あれ。おい、おいおいおい。まじかよ。まじかよおおおおお!!!



 「ゲギャ!ゲッギャギャ!!」


 うわ、こっち来た奴追いかけて緑の汚い奴らも動き出しやがった。っつうか、右手に持ってる棒。血ついてんじゃん。え?やばくね?やばくね?ってか、あの人追いつかれる。あの汚いやつら速い!やべぇよな?やべえよな?この世の終わりみたいな顔してるじゃん。でも動かねぇ!俺の体なんも動かない!


 「…え…あ…えっと」


 「Ⅶ∪▲〇∞!!!!」


 あ、倒れた!やばい!後ろのやつ、追いついちまった!あと7、8歩なのに!やばいやばいやばい!あの気持ち悪い奴、めっちゃ棒振りかぶってる!!死ぬ!絶対あの人死ぬ!!た、助けなきゃ!!まにあわねぇよ!でも助けなきゃ!!!




  ズシュ



 思わず眼をつぶった俺の耳に届いたのは、何かを貫く音だった。つぶれた音じゃない、貫いた音だ。困惑に眼を開いた俺の視界には、黒い何かに貫かれた汚い緑のやつが映った。


 「え、え?何?何?っていうかあの緑のは何だよ!」




 ポーン


 「アノ、ミドリノ、イキモノハ、『ゴブリン』トヨバレル、イキモノニ、ニテイマス」


 って、何だ今の電子音!ってなんだよゴブリンって、ってか誰だよ今答えたやつ!ってか、あの黒い貫いてるやつ、俺の背中から伸びてね!?


 「ゲ、ゲギャァアア…」


 二つの黒いものに貫かれていたゴブリン?が弱々しい声をあげて痙攣したあと動かなくなった。他の奴らは、黒いのを警戒して動きとめてる?ってか、なんで黒いのは俺から伸びてんの?さっき答えた奴はだれだよ!!


 「ああもぅ!!どうすりゃいいんだよぉ!」


 ポーン


 「マズハ、ゴブリンタチヲ、タオシマショウ」


 また、電子音と共に答えが…なんか聞き覚えのあるポーンなんだよなぁ。って倒す?俺は何の武術もやったことねぇよ!

 「どうやってだよ!クソがぁ!」


 ポーン


 「ミギテノ、ブキヲ、ツカイマショウ。クソガ、トハ、ヒドイデス」


 右手の武器?右手には傘しか持って…あれ?何で傘の持ち手が銃のグリップみたいになってんの?ってか、傘じゃなくなってる?何この、黒い板がいくつも張り付いた流線型の物体。先っぽにはなんか穴開いてるし!ってゴブリン?がこっち来やがった!!


 「っ!わけわかんねぇ!!」


 とりあえず、相手に先を向けてトリガーを引いてみる。


 カチン


 「ゲギャアアアア」


 またしてもエメラルドグリーンの光がはしり、ゴブリン?の頭を貫く。俺の背中から伸びた黒いやつは、倒れてる人、女かな?を護るように近づく奴を貫いてる。もうこうなりゃヤケだ!全部やってやる!!!


 「おらああああ!!!!」


 「ゲギャ、ゲギャアア!」


 エメラルドグリーンの光は、一度も外れることなく10匹のゴブリンの頭を撃ちぬく。俺、こんなに狙い上手かったっけ?あれ、俺ちょっとかっこよくない?ってそんなこと言ってる場合じゃない!なんか視線を感じると思ったら、上に赤い変なクモがいやがる!やばいやばい間に合わない!落ちてくる!!


 「ひぃ!?うわああああああ!!」




  ザン


 またしても恐怖に眼をつぶって、でたらめに振り回した俺の手には手応えが有った。何かを切り飛ばした手応えだ。


 「今度は何だよ!」


 赤いクモは、真っ二つになって俺の左と右に分かれて落ちている。思わず右手に眼をやると、傘?の黒い板が移動して刃を形成している。どうやら、俺のこの傘?は、遠近両用らしい。


 「うぅぅう…とりあえず安全確保が先だ!くそおおお!!!」


 もう考えるのはやめた!とりあえず目に付くゴブリンとかクモを全部殺す!!!もうやだあああああ!!!!




 「はあ…はあ…はあ…」


 五分かな、十分かな、もう時間の感覚もねぇよ。とりあえず、目に付くやつらは全部撃った。あとは…逃げたな。


 「……※▲☆」


 なんか女の人が話しかけてきた。うん、さっぱり分からん。


 「はあ、意味わかんねぇ。何語だよ」


 ポーン


 「チキュウノ、ドノ、ゲンゴニモ、アテハマリマセン」


 これだ!これも分からん!!ってかこの電子音、絶対どっかで聞いたことある!ってか地球の言葉じゃないって。え?え?ええええ???


 「はあ!?ここは地球じゃないってのか!?」


 思わず大声で叫んだ俺を誰も責めれないと思う。女の人がすごいびびってるけど、ごめん、今は気にしてらんないわ。


 ポーン


 「ハイ、ココハ、チキュウデハ、アリマセン」


 「はあ!?つうか、おめえ誰だよ!!」


 ポーン

 

 「ワタシハ、ワシザキサマノ、タブレットニ、トウサイサレテイタ、オンセイアシスタントキノウ、ダッタモノデス」


 タブレットの音声アシスタント機能…まさかsi○iちゃんか!あああ!さっきのポーンは、あのポーンか!ってかだったてどういうことだぁ。会話できねぇだろ普通!!


 「…※▲☆…〇Ш∞」


 「っだあ!だから分かんねぇよ!なんて言ってんだ!!」


 ポーン


 「ハイ、『助けてくれて、ありがとう』ト、イッテイマス」


 マジ便利。前の時も便利だったけど今はもっと便利だな。ってどうして、地球の言葉じゃない奴まで翻訳できるんだよぉ!つうか、右手のこの銃は何だぁ!っておぃ!何だこの黒い服?いや、鎧?全身がなんか、真っ黒いゴツゴツした鎧で覆われてる?ってかあの黒い貫いてたのは、この鎧から伸びてる蛇みたいな鞭?


 「がああ!!!もうなんだよ、この黒いの!なんだよ、この銃!っつうかどこだよここ!!」


 ポーン


 「クロイノハ、コート、ダッタモノ。ジュウハ、カサ、ダッタモノ。ココハ、イセカイ、デス」


 「…∞∀#?」


 もう、何だよ。訳わかんねぇよ。クスン。イセカイって異世界かよ。もうどうでもいいよ。


 「…翻訳して」


 ポーン

 

 「ハイ、『大丈夫ですか?』ト、イッテイマス」


 大丈夫?大丈夫かって?…ははは、冗談きついぜー。大丈夫かって?大丈夫か?だって!!!



 「あのなぁ!大丈夫なわけ―」


 「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 うるせぇ!床までびりびりしてるだろうがぁ!今度は何だぁ!!なんだ?3m位もある、ただの巨人じゃないかぁ。ちょっと肌が青くて、ちょっと顔がトカゲみたいで、ちょっと馬鹿でかい斧をもってるだけで、ただのでかい人じゃないかぁって、もう!いい加減にしろぉぉおお!!!




  バサッ


 俺が無言で掲げた傘だったもの、今の音はそこに付いていて刃を形成した黒い板が一斉に広がった音だ。広がった形は、笑えるな傘みたいだ。まあ、傘だったら広がった後に回転もしないし、放電もしないけどね。俺のこの銃?傘?はする。徐々に放電が強くなる。トカゲ頭がこっちに走ってくる。女は絶叫している。俺?俺はな、激怒している。


 「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 「うっせぇぇぇぇんだよ、このトカゲあたまあああああああああ!!!!」


  カチン


 狙いをやや斜め上にして引き金を引く。一瞬の間を置いて、回転していた黒い板からもエメラルドグリーンの光が発射されて合体。合体することで太さを増した光は直径2m近い太さとなって発射される。辺りを強く染めたその光は、トカゲ頭を撃ち抜き、その上半身と下半身の大体を瞬時に消滅させると、その先の天井も撃ちぬき、どこまでも昇っていく。何もかもを撃ち抜いて、エメラルドグリーンの光は空へと突き抜けて行った。


 「……」


 「……」


 ああ、空は青いのね。良かったぁ。そこだけは普通なんだ。ああ、差し込む光が暖かいなぁ。クスン。



 「…………※σα▲☆∞?」


 「……翻訳」


 ポーン

 

 「ハイ、『あなたの右手のものは何ですか?』ト、イッテイマス」


 右手の?ああ、これか。


 「俺のこの…」


 右手に持った、どう見たって傘には見えない。謎の光を発射するものを指差して俺は答える。答えてやるよ!


 「俺のこの傘?…うん、レーザーライフル」



 読んでくださってありがとうございます。


 異世界に行った主人公にチートが与えられるなら、装備品だってチートになっていいんじゃない?という思いつきで書きました。というか、その思いつきは小学生くらいから持ってました。子供心という名の厨二病を出発点にしてみました。どうだったでしょうか?


 感想等いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。


 次は、金目の三章に取り掛かりたい…です。そちらもよろしくお願いします。

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