自分のために、
血と肉と硝煙が混じった臭いが充満している。
所々に銃痕でズタズタになった木々なんかはあるが、地形的に差ほど見通しの悪い場所でもない。
しかし何らかの奇策で奇襲にでもあったんだろうかね? 似た装備に同じ紋章付けた連中ばかりが転がっていた。オンリーじゃないが、毛肌が違う死体は一割に満たん。
流石に損壊の大小はあれど、皆等しく均等に血肉に内臓ぶちまけ、くたばっていることには違いない。
気の抜けるような晴天の下でも、鳥や非力な魔物が屍肉を貪るような場は当たり前のように存在する。
ここはその一つ。どう観ても、戦場跡にしか見えない。
「うげっ……ぇほ。げほっ」
嘆息を堪えながら、嘔吐した連れのガキを眺め。内臓とか血池とかよりはマシと思いつつ、小刻みに震える肩を叩く。
反応は無い。嘔吐と嗚咽のようなうめきは断続的に続く。
偶然通りかかるにしては、ちっとあれな場所だよな。やっぱし。
「ほれ、動けマグナ。いくぞ」
吐くものがなくなったか、只の嗚咽ばかりを発するボサボサ髪のガキを多少強引に引っ張り、先を急ごうとする。
急ぐ予定は無いが、戦場漁りやら回収部隊やらとかち合うのも現実的に不味い。ついでに精神的にも優しい場所じゃない。
物言わぬ死体、というよりは対竜試作兵器(DSP)辺りを受けたような肉の残骸を多少踏んづけ潰し顔をしかめ、履き物を血肉で汚しながら進む。
「ん……?」
薄汚れた鼠を巨大化したような魔物(名称不明)が屍肉だの内臓だのを貪る横を抜ける最中、腹元に違和感。
まあ考えるまでもなく、ボサボサ頭の小僧が縋ってきたのだが。
「……おい離れろ。歩き辛ぇだろ」
溜め息混じりに鬱陶しいと咎めるが、小刻みに震えるガキはコートの裾を離そうとしない。犬の癖毛じみた紫頭が拒絶するように揺れる。
嘆息した。なにが悲しゅーて野郎に縋られにゃならんのだ。退けた後は転倒して血まみれになって余計に面倒になる事うけあいだし。
対処法の無い現実に嘆いても、状況を解決してくれる便利なナニカは沸いてくるはずもなく。
結局、今日中に人里に――とりあえず適当に定めたの目的地に――辿り着く事は叶わなかった。
「……ラディルさん」
「んあ?」
煌々と天に伸びる焚き火の近く、ブーツにこびり付き固まった血を落としてる最中。
作業は止めず、生気の無い声に視線を向けると、焚き火に背を向けて自分の得物――やたら古ぼけた剣を抱え、うずくまるガキの背。
なんぞ。
「なんで、人って死ぬの?」
哲学的な問題だな。
しかしと、思い詰めた声に肩をすくめ、どうしたもんかねとは思いつつ、思い付きを口に出す。
「人の生き死にに、いちいち意味なんざ無いだろ」
「そんなこと」
ないと言いたいなら、それはお前自身に影響を残す死を見てきたんだな。
村を灼かれた時にかね。育ての親と妹も目の前で死んだって話。
それがあんまり頭の中に残ってるもんだから、当たり前のように不特定多数の死が転がる現場を受け入れられてない、てとこかね。あんまりきな臭い感じもないし。
適当にあたりをつけながら、焚き火に薪をくべた。
火がはぜ、火の粉が舞い、消える。
「ま、あまり考え過ぎんな。割り切れ。関係ない連中の生死に構うと、引きずられるぞ」
「……引きずられる?」
「ジンクス、みたいなもんだ。それで死んだ奴を、俺は大勢見てきた」
死んだ、のくだりで焚き火の向こうの肩が震えた。
死人に思い入れが在りすぎて、精神の均衡を崩した奴、後を追っていった奴。
そう少なくない数を見てきた。
「おれには無理だよ。気にしないとか、そんなこと」
まあそうだろうな。
抑えられりゃ世話はない。そう簡単にできる事じゃないからこそ、俺は大勢を見送るハメになったんだからな。
しかし、誰も気にするなとか無茶は言ってないだろうが。
「折り合いを付けろって言ってんだ。特にお前は、考え過ぎてドツボに嵌るタイプだしな」
「ドツボ……」
「お前だって、殺しくらいした事はあるだろうに」
息が詰まる音。
殺人は、大概の国家で正当防衛以外は禁じられている。
しかし上が下を殺すには咎められる事すらない帝国があったり、というか殺人厳禁な最大宗教国と、さっき見た血みどろがまだマシな不毛を長い事延々続けていたり。
魔物ですら滅多にしない同族通しの殺し合いは、どういうわけか人間の間では世界規模でありふれている。
そういう世界の根無し草は、決して純粋ではいられない。
何か思い耽るような沈黙がしばし。薪をくべること三回程の間。
「ねえ、ラディルさん」
「なんだ」
「どうやったら……」
変声期前のかすれた声が変なところで区切られ、再び沈黙。
続きの代わりに響いたのは、間抜けで気の抜けた腹の音。
「……腹、へった」
情けない訴えに嘆息を返す。
そりゃ、あんだけ吐き散らしゃあなあ。
まあ食欲が湧くのは良いんだがな。
華奢というよりは痩せ細った肢体を包むどこか品のいい上下は、まだそばかすが目につく素朴な顔立ちのそれとアンバランス。
最後に見た姿と比べ、きちんと整えられた赤紫が揺れる。
僅かに俯いた顔の目元はそれで隠され、しかし三日月のような曲を描く赤から、笑っているとはわかった。
「らでぃおにいさん」
声。ただ何という事のない、聞き覚えのある声が、聞き覚えのある平常よりも幼く、耳に届く。
それはそれだけだが――ぞくりと、理屈にならん、得体の知れないおぞけがはしった。
反射的にナイフに指を滑らせかけ、理性がそれを遮断する。
ガキは殺せない。殺さない。殺される。殺せ。殺すな。殺す。殺さない。
自己矛盾が不自然で致命的な空白を生み、
「――あうれか、おにいさん」
「っ、副長!」
澱みきった汚泥のような瞳が至近に迫る。間の隊長を存在ごと、距離感を無視した位置変換。
随分な昔とここ最近で聞いた覚えのある呼ばれ方と向けられる感情の質が、日常と日溜まりの象徴に等しいリリアに当てはまらず、矛盾。
瞬間移動じみたものも含め、控え目にいって混乱の極みだが――脆弱なくせして致死の気配に極めて敏感な我が体は、腹立たしい程に正確な対処方を実行。
張り付いた笑みで、伸ばされた小さな手に握られた分厚い軍用ナイフ。
きちんとあばらを抜けて内臓を抉れる角度の刺突。
対処自体は難しかない。
体重の乗った正確な一突きを薄皮一枚で受け止めずらし、逸らす。
そのまま、意外な程の容易さで枯れ木みたいに細い腕を掴んで背をとり、凶器を抜きとって制圧。物取りを返り討ちにするくらい、拍子抜けするくらいに簡単な事だった。
「あはぁ」
からんと分厚いナイフが、一応は城の一室に該当する頑強な床に転がる。
そして制圧された当人が息を吐く――違う。
「――あはははははぁはははははははははぁははははははははははは」
やけになったとも、ガキが出すべき発露とも異なる、単調でいで濁りきった色。
なにか、色々と決定的におかしいと思うのは、酷くひどく今更過ぎるか。
――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ、最近面に出し過ぎた暗殺者の本能が、脳裏を刺激する不可解を抹消しろと、受け入れられない俺を糾弾するように絶叫する。
「おまえ……なんで」
「……りりあ?」
理解できないものを目の当たりにしたように、アリューシャが呆然と呟くのが頭痛を招きかけた頭に届く。
一日の付き合いしかないが、友達になったとか。そういう話を聞いた。
床に押し付けたリリアが頭を傾けた。角度からして、呆然と体重をベッドに傾けるアリューシャを見ている。
「……おまえのせいで」
拙い口調で吐かれたのは、明確でいて誤魔化しようがない、怨念。
「……りりあ、なんで?」
「おまえがいたから、おまえが、」
恐怖とか悲しみ以前に途方に暮れて戸惑い、首を揺らすアリューシャに、リリアは最初と一転し怨念に届かない、意味を持たない言葉を吐き出すだけ。
……なにがなにやらわからん。
「なんでみんなしななきゃならなかったんですか?」
俺の困惑を肌で感じたのかと思えるようなタイミングで、雰囲気からして俺に言っているのだろう台詞が口にされた。
――人の生き死にに意味なんて無い。
かつて口にした自論が頭に響く。今、口にするべきじゃないと思考から切り捨て、戻す。
……孤児院のガキ共の事だろうか。
いや普通に考えたらそうなんだろうが、こいつが精神的な限界を迎えたと仮定してみても納得はいかん。
「だれもわるいことなんかしてないのに、いつもいつもいつもいつも、おとなはみんなをいじめて、たすけてなんかくれなくて、みんなみんな、ころされた」
後ろ盾のないガキは特に食い物にされる。食い物にすらされず、無意味にボロクソにされるパターンもある。世知辛い世の中だ。
実際、ただの八つ当たり、巻き添えであの孤児共は殺された。
実際、リリアはそれに耐えられなかった。
しかし、それだけ……か?
「ふぇり、あいな、うる、はる、まお、あきら、いーる、てお、たろ」
首を傾げる。
リリアの幼い口から名前が連ねられている。名前は俺も知る孤児共のそれはいい。だが、
「なぅすら、つぁくと、くせくす」
文字すら書けんリリアが知る筈もない、先史文明の言語で云うところの番号が続けられる。
それはかつてあったある事実とイコールで結ばれる、が……何となく、外れてないような気がしてならない。
「お前、リリアか?」
眼下でうめく姿を見れば当たり前にも程がある問い。
応えは無く、単調な声がどこか呪詛じみて続くだけ。
「それとも――イルドか?」
喉で詰まったような息が人様の部屋の床を撫で、呪詛が止まる。
沈黙は肯定という言葉はあるが、その程度の常識は当てはまるのか。
『ほう』
「どういうことだ、副長」
どう手をつけたものかとばかりに、珍しく成り行きを見守っていた隊長が問う。無機物が感心した風な声を出した気がしたが、そこはスルー。肩をすくめる。
いや、俺とて把握できてる訳でもないんだがな。まああんまり外れてないような気がするし、半分おざなりに答える。
「……憑いてる」
「憑いてる?」
「双子の能力。死体操りは、術者の精神を対象の死体に"とり憑く"事でその死体を操作する事ができる訳だが……その関係じゃないかと」
「死んでるのか?」
「いや、」
小さく首を振り、口に出して否定する。
脈はあるし、外傷も見当たらん、血色も死人のそれじゃない。よってリリアが死んでるってのは無いと思うが。肝心の、精神だの魂だのといった曖昧なもんに――なんか余計なもんが混ざってるんでないかね。
だからリリアが知る情報と憑いた他人が知る情報がごっちゃになって、なんかこう人格的にもおかしな事になってると。
「門外だな。任せた」
興味の失せた声。暴力や脅しで解決できん事態は大体門外漢だよな、テメェは。
まあ出しゃばられてリリアの頭を潰されても困るからいいんだけどよ。
かと言って、俺もそう大差ないんだけどな。精神だの魂だのと。
ただ、専門家の双子曰わく、死者の念は厄介でヤバくて危険だとか、同じことを並びたてるくらいには重要視、というよりは危険視していた。
亡霊の類を見た事は……まあ夢とか幻覚とかを除けば無いが。肉体を無くした精神がそれで尚在り続けたとすれば……まあ、五感を無くしたストレスで碌なものにならんだろうと推測はできる。
それが――イルドが――このガキに、リリアに憑いてるとしたら。
「アリューシャ、喰え」
我ながらまったいらな声が出た。
「……え?」
精神の繋がりというやつはどうしたのか、意図を解せず不思議そうに首を傾げるアリューシャ。
「リリアの中にある不純物だけ、根こそぎ喰い殺せ」
ここまで口にすると合点がいったか、ガキ特有にデカい目を瞬きし、決意を固めるように髪のそれより色素の薄い唇を引き締め、頷く。
「……っ!? にいさん! また、あうれかにいさんはまたぼクをコロ、」
暴れ、喚く。しかし先程のようなキレは何故か無く、関節をキメた体勢である以上、どれだけ俺が非力だろうと覆しようが無い。
「喧しい……リリアの口で下らない戯れ言をほざくな、負け犬以下の寄生虫が」
罵声に一瞬だけ動きが止まる。が、すぐに激しく赤茶けた髪が振り乱された。否定の意か。
「……っぼくは、ぼくはただあうれかにいさんに……!」
声の響きに、内容に、脳裏から思い返されるものがある。
――戻ってほしかった、一緒にいてほしかった、寂しかった。
夢と現の境、不可思議な空間でのやりとりが、朧気だった記憶が明瞭にリピートされる。
どこか幼い面影を残した能力者の異母弟は口にした。
ついぞ番号以外に名を貰えなかった諦観を。最愛と掲げた異母兄に遠くに往かれた孤独を。独り残され、殺し以外に取り柄もなかった絶望を。
そして――俺が知っている筈なのに忘れていた過去の真相。
俺は、――――
――首を振り、脳を適度に揺らす。情報過多でどこかに沈みかけた意識を保つ。
……そうか、"二回目"の死に目には対話ができていたのか。
それに少しばかりの納得を覚えながら――このねじ曲がった亡霊と話す事は何もないと認識を強める。
「俺は、ラディル=アッシュだ」
「ちが、う! にいさんはあうれかにいさんは、ぼくの!」
――俺は、ラディル=アッシュだ。
狂的にわめきちらす過去の悪霊に取り合わず、繰り返す。一度やった問答を繰り返す。
どちらかといえば副長と呼ばれる事が多い上に最近うっかり関わっちまったくそガキには呼び捨てられる始末だが、ラディル=アッシュ。それが俺の名前だ。
かつてアウレカと呼ばれたこともある、薄汚い暗殺者の成れの果てだ。
誰かに言われたからじゃなく俺の意志で、俺のために誰かを殺し、生きる。薄汚れただけの人間だ。それで十分だ。
それを受け入れないという過去に用は無い。
俺を否定するという相手に、容赦はしない。
それに――と、思い直す。少しばかり感情的になっていたと、思考の修正。
展開の予想、リスクも不明瞭、大部分を感覚に頼る事になるが……
「アリューシャ、止せ。やっぱ喰わなくていい」
こいつにせよ、リスクは高い。
精神だの魂だのという不明瞭なもんを、器用に必要箇所だけ切り崩せるか。力技らしきものは見てきたが、器用さがあるかは果てしなく疑問だ。
「……らでぃる?」
向けられかけた手が止まり、必要ないと前言を撤回された事への戸惑いの視線。
しかし一々取り合わず、飽きもせず記号に兄を付ける寄生虫に憑かれたガキを見下ろし。
「リリア」
名を呼ぶ。記号を呼ぶ声に悲痛が混じるが、無視。
――今から、ゲスな事をやろうと思う。
「解ってるだろうが"それ"は、お前の家族を殺した、仇だ」
周りの反応が変わる。事実を知らなかっただろう隊長の大小がうめき、殺気立つ。
そうだ。少しばかりしか関わりがない隊長ですらそうなる現場の当事者……挙げ句に手を下した野郎に憑かれてるんだ。
「俺はもう、二回殺したからな。一回くらい譲ってやってもいい」
同じ屋根の下で生活していた孤児同士。この時点で。部外者でしかない俺などより余程、精神的負荷がキツかっただろう。
――なら、今の、体内を害虫に駆けずり回られる以上に糞フザケた状態は、どれだけの負担になっているのか?
「なあおい。お前はリリアだろう? ちんけな孤児院で、クソ喧しいガキ共のお姉さんやってた、リリアだろう」
呼び掛けに、おれはぼくはわたしはと、一人称がコロコロと変わる。
視覚的な変化は無いが――何故か。おれだのぼくだのと口にする亡霊に、さしたる権限は無いと……殆ど確信に近いレベルで、すとんと解った。
一つ肉体における、精神のせめぎ合いという闘争。
俺の拒絶を受けた上、聖域と呼んで差し支えないらしい部屋で、異物でしかない野郎の権限が薄れていっていると……なんとなくというレベルで理解できるのは、俺の中に植えられたとかいう因子とやらの影響か。出所の解らん理解に、それくらいしか思い当たらん。
元がどうあれこれなら。この調子なら……
「なら憎くねぇのか? テメェの日常が壊されて、悔しくはねぇのか。テメェが笑っていられたテメェの世界が汚されて、怨みはねぇのか?」
「ぐぎ……あ、ぅぅぅぅうっ……」
精神力の勝負なら、片方の精神を揺さぶってやればいい。
煽る言葉に、応答はくぐもったうめき。主導権が曖昧な肉体の節々が強張り、込み上げるナニカをこらえられないように震える。
「あ、あぁぁあアアアアアアアアアアアっーッ!!」
慟哭のような咆哮。
乱れていた髪がさらに振り回され、水滴が散る。涙。
自制できる程、日常に組み込まれた誰かの喪失は、軽くない。
「ゆる、せない……ゆるせない! わたしはあ、わたしはー!!」
加減無く振り回される頭部の隙間から確認できた。頬を伝い零れる前につぶてとして飛び散る涙。
泣いていた。
堪えきれない感情を越えた何かに、体を駆けずり回り溢れるナニカに悶え苦しむように身をよじろうとして泣いている。俺が泣かした。
苦痛を与える。精神的に揺さぶり焚き付ける。
……いたむものがないわけじゃない。が、感情を行動から切り離すのには手慣れている。すらすらと口が動き、台本かアドリブか、どちらともつかぬ台詞を続ける。
「許せないなら許容するな。テメェの幸せを、テメェの日常の邪魔する奴を赦すな、怒れ憎め怨め呪え。激情を抑制するな我慢するないい子ちャんぶるな――そして、」
しかして言葉尻が強くなるのは、以前ほど"必要"に成りきれなくなったからかね?
「あいつらを殺したクソッタレに、オトシマエをつけさせろっ!」
「わた、わたしは――みんな、みんなが……――? あうれ、ちがう?! らでぃおにいさん、らでぃおにいさんは!」
――何だ? もがきの様子が変わり、悪夢じみた恐怖や憔悴に似たものが背筋を伝う。
どこか蝋燭の最後の一燃えじみたリリアの片手の動きが、先に落とした軍用ナイフの刃に当たり、手の甲を浅く裂けたのが見えた。
僅かばかり切っ先が赤くなったナイフがからんからん、と無機質に遠ざかる。
暴れるに従い、御し易いよう体勢を僅かに変えたギャップ。いやそれ以前、ナイフを回収しろとガキ二人に指示を出さなかった凡ミスに舌打ち。
「あ、が――ぎぃっぅ!!」
そんな傷など些細とばかりに、いや事実そうなのだろう。先とはどこか、断続的な鈍痛ではなく、間隔を空けた激痛に苦しむようなもがき方。
それに、リリアの精神が弱く……いやなんで解るんだという突っ込みは今いらん。解るもんは解っちまうんだから仕方ないから兎も角……これ、今度は……リリアだけが、弱ってきてるのか?
「――あ、がぁ……し、ら、ないっ?! そん、な、らで……ぃおにいさん、しらない!! ちが、う、そん――あ゛、あ゛あ゛あ゛ぁァ゛ァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――!!」
……感受してやがるのか!?
せめぎ合いの副作用? いや、元々の弊害か。
亡霊が亡霊である所以。亡霊の記憶、ナマの感情との合同。害悪どころか地獄でしかないそれを、強引に頭の中に刻んでいやがる!
「ぐぎっ、がっ……ぁぁぁあぁアァぁアぁっ――っ」
「なっ、なんだ?! なんなんだよぅ、さっきからぁ……!」
隊長(小)が真っ先に音をあげる程には悲痛によがり、頭を床に打ちつけようとするリリア。
「おい、止せ!」
「――っ! ――っっく、ふ! ぁ……っ!!」
それさえ俺に阻まれ、涎をたらしながら低く惨く暴れる。自身を傷付けて紛らわそうとしているように。
……悪性因子にも程があるだろ……糞!
舌打ち、毒づきたい所を堪える。
精神の比率が……盛り返されてきてる。記憶が刷り込まれているというなら、こいつの精神力でどうこうなる問題じゃない。
ならせめて、そっちに強そうな双子共が居れば話も違うんだが――
「りあとゆあ、よぶの?」
「……何?」
声に出していたかと見れば、互いに互いの服の――いや俺のだが――裾を掴み合い、怯えを多分に含んだ神妙な表情で成り行きを見守っていたガキ二人の内、ピンク色の方が"使えそうな"眼差しで此方を真っ直ぐに見つめていた。
呼ぶ……いや、まさか!
「呼ぶとは?」
口を開いた俺よりも一瞬だけ早く、今まで沈黙を守っていた隊長(大)が発言の真意を問う。
それに八の字をした眉根が寄り、少しばかり萎縮したように、しかしそれでも珍しく、比喩でなく心が砕けそうなリリアの低い苦悶を上書きする声の強さで。
「ありゅーしゃは、りあとゆあ、よべる。いますぐ」
「「ならやれ!!」」
非常識の根元だ。今更寝言がどうとか疑いはしない。そんな暇もねぇし。
藁にすがるような、隊長(大小)と俺の限りなく怒鳴に近い要請に応え、んーっ、とアリューシャは中空に手を伸ばし――
「……あれ?」
――たと思った直後、俺の真後ろに人の気配が出現した。
早過ぎ――いや歓迎だがと首だけ振り向けば。
「副長? てかなにごと?」
「たっ、たいちょ?」
揃いの薄いボディスーツの同じ顔二つ。雁首並べて警戒を押し殺せていない表情。猫っぽい髪を無造作に垂らした片方は右腕を抱え、髪を後ろで束ねた片方はほぼ無傷。
良し。
とりあえず何故に見知った顔の異端審問官の小僧が簀巻きにされてのびてるかはさて置き、目当ての双子に命じる。
「質問は後だ。リリアを診てくれ!」
――双子が召喚されてからの処置は迅速であった。
元々、死体繰りの際に片方が憑き、片方がその死体の思念に侵されないようにサポートする、ツーセット必須な能力者。
往生際の悪い亡霊への対処など、手慣れたものだという。
そのとりあえずの成果として、俺のベッドの上に、やや荒いが数分前と比べれば穏やかという他ない息をたて、疲れ切った面で眠るリリアの姿があった。
いや、双子の片方まだ抜け殻だし。なんかよく解らん精神の保護は続いてるらしいが、小康にはなったって所。
「で、何故に新人が簀巻きに?」
「いやそれ、異端審問官」
双子の金魚の糞よろしく、一緒くたに召喚された間者の小僧。というか今は、無造作に転がされてる荒縄の塊といった方がいいか。ともかくそれを指差す隊長(大)に訂正を加える。
んでまあ、普通に双子コンビと交戦して負けたんだろうと想像はつく。
鼻の骨キレイにへし折られてるが、トドメさされてないだけラッキーなガキだ。
俺のと材質の変わらないボディスーツ越しに深々と抉られた双子の片割れの右腕を止血を終え、嘆息を一つ。
「アリューシャに関わった面子と、俺の近辺に居た連中。後地力だか精神力だかが強いのと、異端審問官も健在。とかいう話だったな」
無機物曰わく、というのが果てしなく不安だが、現状その条件に矛盾は無い。
とりあえずその条件に合う連中以外がどうなってるかというか、事が済んだらどうなるか。だが、そこらは気にしてもしようがない。
問題は、まだ居るやもしれん異端審問官と遭遇した場合。異界化した街で暴れる、シリーズなんちゃって人類・剣聖科・狂信目と大差無い対応が容易に予想できる。
「そんな些事を気にしてる段階か、これは?」
「皆まで言うな」
生理的に蹴りを入れたくなるような笑みを浮かべ、扉の横に肩を預けている隊長(大)の大物っぷりに嘆息を一つ。
開け放たれた扉の向こう、不思議とどういう風に常軌を逸しきっているか朧気ながら理解できる。
いや視覚的にもあからさまだったが。
汗ばんだ白い肌に備え付けてたタオルを当て、拭く。桃色の髪も湿りきり顔に張り付き、汗も拭いた端から玉の汗が浮く。
酷い熱に魘されるに似た症状だが、時間を置いた完治は見込めないだろう。熱風邪で該当する所の病原菌が、アレだからな。
小康状態に落ち着いたリリアと替わるように倒れたアリューシャは、朦朧とした意識で弱々しく、今も俺の手を握っている。
ベッドは既に双子とリリアに占拠されているから、地べたで俺の膝枕。それを茶化す誰かの言葉は無く、ガキ共の苦しげな息遣いで満ちている。
犬と猿、帝国と皇国みたいな相性の悪さを俺の部屋でぶちまけた片割れですら、そいつどっか悪いのか? と心配そうな顔して俺に聞いてきたくらいには気の毒に見えるらしい。その病人紛いの馬鹿が着てた俺の服なんざもう汗で使いものにならんだろう。
息苦しいのだろう息遣いのアリューシャ、さっきまでは青ざめていたが、今は赤い。
顔色が不規則に変わるんだ。赤から青、青から赤、次は逆。
高熱と低熱が交互に繰り替えされている。冗談みたいな症状。錬金術師の拷問か実験じゃあるまいし。
……いかないで、と、制止というか視線による懇願は現在進行形でされてるが――もう時間的に限界だろう。リリアを抑えっぱなしだったり気を張りっぱなしだった疲れもマシになった所。
小休止は、ここまでにしとこう。
「我が主よ」
「……おもってもないことをいうな」
視界の端で、仲良く部屋の隅に座っていた隊長の大小が口を開く。
外見性格共々男と間違えるような声と、舌っ足らずがようやく抜け出したような声は、どこか親子のような微妙な差異と似た響きがあった。
「ふ、愚かで小さくて醜く糞生意気で限りなく無力に近い、脆弱なる我が主よ」
「……そこまでいうか?」
「美点をあげるには少々考える必要がある、本当にどうしようもなく未完成で未熟な貴様だが、望む望まざるとに関わらず、それでも貴様は我が主なのだ」
言っている内容こそアレだが、声自体は、意外と子供好きの気がある隊長(大)らしいそれだな。
「うるせー! おまえなんかきらいだっ! だいっきらいだーっ!!」
小さい方お冠だがな。
しかしレアだな。隊長の大小が一緒くたに、あまつさえ対話て。別人格なのは前々から把握してたが、ここまでくっきり別人っぽいのか。片方が諭す必要があるくらい。
「嫌いときたか。しかし、己は貴様の異能だ。嫌いだから嫌だからいらないから、と手離す事はできん」
「……」
それは理解してるのらしいが、納得はしてないらしく、唇を尖らせそっぽを向く小さい方。
「我が主。貴様は副長の力になりたくないのか?」
「…………」
横顔からもわかる。どういうことだという視線が隊長(大)に。
古傷だらけの顔が穏やかに笑んだ。子を見守る親か年の離れた妹を愛でる姉のような、おまえそういう顔ができたんかとツッコミたい表情。
「城塞は王の存在があるからこそ、堅牢を保てる。剣は担い手が居て初めて、その切れ味を振るえる」
「いみがわからんぜ」
所有者が必要なのだろうという物言いを介せぬ馬鹿ガキは、少しばかり俺の口調を真似して肩をすくめ、
「てかもっとわかりやすくせつめいしろよ、きがきかないでかぶつ」
ドラゴンの逆さ鱗に石を投げたガキ、の幻影が見えた。
…………馬鹿ガキ。
でかぶつ呼ばわりされた隊長は、体重を預けていた壁から、イイ笑顔で背を離す。
「? なんだよ?」
そして対面した馬鹿ガキの頭に手が掛けられ、五本の指が赤茶けた髪を撫で――鷲掴み。
「っいッーっだだだだだだ!?」
「我が主。残念ながら、己は己の体長程に気が長くないらしいのだ」
あ、以前俺が言った台詞だ。
言った後ぶん投げられたな。壁。厳密には思い出したくないが、しばらくギプスが取れんかった。
いたいいたいと喚く哀れな被食者に、多分獰猛な笑みを浮かべているだろう捕食者は、悠々と口を開く。
「分断された状態では上手く力が出せん。"アレ"を相手にするには不足だ」
どうせその言い方でもわからんだろうから、「つまりは協力しろと言ってんだよ」と補足してやる。
しますしますもうふぉりあめちゃくちゃがんばっちゃうぞこのやろー、とヤケクソっぽく吼える声音は、哀れな負け犬のそれ。
気の毒にな。口の悪い奴ばかりが回りに居たからなあと薄い同情。後で口は災いの基、とでも教えてやろう。
「うううぅ、いじめるやつなんてきらいだきらいだぁ……」
解放された隊長(小)が涙目こすりうーうーと唸る。
あー、あんまり無理すんな? と言いたいが……隊長が本調子でもどうかっつう"アレ"が立ちふさがってるってのに、その本調子ですら無いのは論外だ。
普段の状態――大小合同とかいう異常がデフォルトというのも可笑しな話だが――で本調子が出せるというなら、それを選ばざる負えない。否が応でも。
……ああ腹たつ。
「……らでぃるー」
「なんだ……どあっ」
横手から抱きつかれた。膝枕状態で更に上体が固定される。
ってなんでだ、脈絡が無いのは何時もの事だが。
……うおいアリューシャ、無理して起きあがろうとするな!
繋がれてない手で起きあがろうとするアリューシャを押さえる問答にも構わず、粗雑な髪を俺の頬に押し付け、首に回した腕の力を強め。
「ふぉりあもちからかすぞ! なんかいろいろよくわかんねーけど、ふぉりあはらでぃるのミカタだからなっ! ……だからなっ」
無駄に明るい調子だったが、最後。だからな、が繰り返され、声の調子が落ちる。
なんだ。
「……らでぃる、おこってちゃいやだ。ずっとそっぽむいてた」
……流石に多感なお子様か。気付かれてたとは、道理であまり絡んでこんと思った。
「ふぉりあがんばるから、ゆるし、」
「ざけんな」
許せ? あのな、誰の指図でどっかのデカブツが動いたと思ってる。そのせいでアリューシャが拉致られ――挙句、もうすぐ死ぬような状態になった。
「詫びるってんなら、まずアリューシャの容体を治してからだ」
でないと――と続きかけたどす黒いものを呑む。八つ当たりだ。ガキ相手に、なさけねぇ。
首筋に違和感。というか圧迫感。首筋まで覆うスーツがなくば地味な痛みを伴っていたろうそれの正体は、まあ噛まれているのだろうな。密着体勢で嗚咽っぽいものさえ交え始めたこのお子様に。いやだいやだと駄々をこねるかコイツ。
感きわまった時の噛み癖もだが……躾が必要だな。
段々と強くなる頸動脈への圧迫に少しばかり危機を覚えつつ、赤茶けた髪をポンポンと軽くはたく。
さてどうやったもんかね?
部屋の外は、既に本来の空間と繋がってはいなかった。
部屋の内外の境界にねじ込まれた暗闇が広がる空間。
いっそ閉塞感すら感じさせるくらいに広く、耳の奥がうずく程に無音で、えげつないほどに暗く、粘着質な空気が充満した、平常のそれとかけ離れた異界。
いや、結局はこの異界だってあのピンク頭の阿呆ガキが内包する、得体の知れない何かに通ずる道筋でしかない。
つまりは、眼下で蠢き脈動する、見るも無惨に醜悪なソレも、アリューシャの中に在るという事。
「ディ・ベルゼブ」
月城 聖が付けた名称を口にする。
リリアに寄生していた亡霊に寄生していた、醜悪の塊。世界全ての醜悪を集め凝縮された物体と言われれば納得しちまいそうなソレ。
先日、確かにアリューシャが喰った世界の脅威。
そりゃあ、そんなもんが体内にあって元気に蠢き活動していたら……想像もしたくはないが、アリューシャの阿呆はまさしくそんな状態に近い。
もう間もなく、くたばっちまう状態。
「で、あの醜悪をねじ伏せれば?」
救済方法はある。教えられた。
方法は、原因を取り除くこと……ディ・ベルゼブの抹消と……後一つ。
「時間稼ぎで良い」
ディ・ベルゼブ。対するは大小統合した隊長。
万全だが恐らく、倒せはしないだろう。
威圧感、存在感、肌で感じるそれらこそ、先日見たアレよりマシだが……それでも、隊長でも勝てるとは思えん存在。
アリューシャの中、魔人の力の源泉に繋がる領域で、既に呑まれていた存在がディ・ベルゼブという断片だとしても、あれだけの存在が保てるのはおかしな話だと、隊長が鈍器として肩に担ぐ無機物は言った。
つまり、腹一杯にためた物が二日三日経っても消化されないような不自然。栄養にも成らず排便もできず残り続けるソレは、率直に生命を害する。ましてやたまってるものがアレなんだ。さっきまでのリリアとは別の方向にやばい。
ならその消化を助けてやれば、今にもくたばりそうだったアリューシャはどうにかなるって事。
蓄積して害を為すディ・ベルゼブか――それを意図して操る、黒幕か。
両方が望ましいんだろうが、片方を下せば後はどうとでもなる。
なら、
「俺が黒幕を殺してくる。隊長はその道筋と、アレの足止めを」
作戦とも呼べないシンプルな役割分担。
俺はこのアリューシャ世界、とでもいうべき異次元では結構な権限を保っているらしいが、あのディ・ベルゼブを相手取れるような代物じゃない。聖域は浸食されている。アリューシャの衰弱と共に。
そして黒幕は例に従って奥に引っ込んでいる。誘ってるのか知らんが、同じ因子を持つ同士、黒幕がとどまっているいる場所が解る。距離ではなく空間的にディ・ベルゼブを突破しなけりゃならんところ。
「ふん、足止めが役割とは。己もなめられたものだな」
「仕方ねぇだろ。殺しても殺せるような物体じゃねぇんだぞ、アレ」
短時間なら、俺は問題無い。因子持ちという権限に、アレは触れる事ができない。時間をかけて浸食されればアリューシャみたくやばいだろうが、時間をかけるつもりはない。
しかし隊長は違う。相手は彼の、隊長のスケールアップ版とでも云うべき衛宮当主でも打倒不可能な、純粋暴力とは極めて相性が悪い特性。
その上、下手をうって取り込まれでもしたら、いろんな意味でシャレにならない。
「は。己を誰だと思っている?」
……まぁ、そうまで懸念事項いわれて引っ込む程、利口なキャラじゃないよね。うん。
「アレほど潰しがいがありそうな相手はそういないでな。殺せん、殺しきれんとかいうならば、死ぬまで潰し続けれる。という事だろう?」
すごい凄惨感じの笑顔を浮かべ、今にも部屋の外に突撃していきそうな隊長に、嘆息を一つ。最近異能力者に到ったとかいう馬鹿がこんなんになってないと祈りたい。
「サンドバッグにするのはいいんだが、あれの特性。触ったら食われるんだぞ?」
「黙れ。道理も法則も世界も、己が意志一つで踏み潰し打ち倒し、進むのが異能力者だ。それが己だ、フォリア=フィリーだ」
そんな物騒な思想だから異端審問部に睨まれてんだよ。
自分の事を微塵も疑ってない目に、好戦的に歪んだ口元から犬歯が剥き出し。準備万端といった形相。
直接戦意を叩きつけられてる訳でもないのに、異能力者の戦闘体勢に肌が粟立つ。気の弱い奴ならそれだけで死にかねない、一流の戦闘者でも戦意を無くす。そういうレベルの存在感。心なしでもなんでもなく、大気を伝い壁が震える。常識の通用しない存在。
――世界の敵。
異端審問部の大元である教会は、理不尽なまでに強大な力を保つ異能力者をそう形容する事もあった。
言われれば少しばかり、反論を思い付くに時間が掛かるだろうよ。身内としても。
心強いとか恐怖とかを通り越し、呆れから嘆息が出て、肩を鳴らす。
「……じゃ、いけるんだな? 隊長」
「無論だ、副長」
先日よりは弱っているグロテスクを、先日と同じように見下ろす。
みてくれで違うのは、自分の部屋の扉から見下ろしているという深くは考えたくないところ。先日は無理やり俺を投げ捨てた隊長と、肩を並べているところ、くらいか。
背後では息が五つ。簀巻きにされた敵、ベッドに並べられた二人を看る復帰した双子、ベッドで健やかな寝息をたてる孤児、同じくベッドだがこっちは強制的に寝かせた幼児。
俺の精神衛生のために死なせないと、見捨てないと誓ったいけ好かないクソガキ共を背に。
圧倒的という言葉すら不足な怪物女と足を並べ、言葉無く手の甲同士を打ち合う。
物言う無機物は何も云わず、傍観者兼鈍器として隊長に握り締められ、軋む。
見据える、とりあえずの脅威は共通している。共通したものがあれば、人は同調しやすい。などというつまらない理屈はさて置き。
「んじゃ、往くか」
「応!」
言葉は少なく、速やかに。
混沌と醜悪で満ちた異界に、脚を踏み入れた。
ただでさえ遅い執筆の遅れ、すみません。佳境、もうすぐ決着がつくでしょう本編。どうにも筆が進み辛いのはそれ故でしょうか。本編完結まであとすこし……ここまで本作を読んでくれた読者の皆さん、ご愛読どうもありがとうございます。とフライングを決めてみたり。まあ、そんなわけで気ままに執筆する可能性がある蛇足外伝とかを抜かせばもう少しな主人公・ラディル=アッシュのお話。本当にあと少しなので、出口がどんな感じになるか。できれば最後まで、よろしくお願いします。