表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

七話、屋敷

 見つけた。彼方と蓮花の二人は、見つけた。その眼前に広がるは、とても大きな屋敷。壊れていないのに、しっかりと現存しているところを見ると、ここら辺の『組織』は、この屋敷を活動拠点として、周辺の『能力弱者』に暴政を布いているのだ。

「ここか……」

 彼方の口から声が漏れ出た。それに「あぁ」と、蓮花が付随する。そう、こここそが彼方の妹、蓮花の親友、桂花がいるのだ。

 そして、二人は、堂々と門を開けた。


「な、なんだっ!? おまえ等は誰だ!?」

 警備の人間が声を荒らげる。その声は広域に拡散し、屋敷一体に響きわたる。

 彼方は、心の中で、毒づいた。便利な『能力』があったものだ、と。彼方の考えでは、その能力は、声を大きくし、広いところに拡散させるものだろう……

 そして、その能力を使った答えは……

 人間が走り出してきた。一部途轍もない速さの者もいる。きっと能力なのだろう。二人はそう結論づけた。ざっと出てきた人数は、二十名ほど。彼方一人で相手にできるかは能力次第だが、厳しいかもしれなかった。

 そして、蓮花はそそくさと逃げ出した。蓮花には戦うための『能力』がない。過去を読みとって、敵の弱点を晒し続けることはできるが、それをし続けて人質になったら元も子もない。しかも、人間の内面に干渉する『能力』は、集中力が奪われることが多いのだ。

 逃げる蓮花に気づいた警備兵数名が、蓮花を追う。

 だが、

「俺がそんなことをさせると思うか?」

 警備兵たちは気づけなかった。彼方の移動に。いつの間にか消え、いつの間にか現れる。瞬間移動というべき速さ。そして、

「まぁ、とりあえず倒れとけ」

 妹を追い求める兄に、勝てる警備兵はそこには居ず、蓮花を追った警備兵数人……七人だったが、そいつ等は彼方の『能力』により、音速ともいえる体当たり付きの拳で、地面へと倒れた。

「がっ……」

 警備兵たちが呻き声をあげるが、彼方は見向きもしない。逃げていた蓮花は、ちらりと青い髪の毛を揺らしながら振り返ったが、彼方ならば当然と、納得したような表情で、安全地帯を探して逃げ始める。

 倒れた兵士はなにが起きたかわからず、声を上げるだけで、なぜ倒れているのかの判断が出来ていなかった。

 故に、この場で一番彼方の危険性を見抜いたのは、警備兵十三人。今まで戦ってきた、『組織』に所属していない中途半端な『能力強者』とは全く違った雰囲気と能力に、恐れるだけだった。

 だが、さすが『組織』を守っていた警備のプロ。動き出すのは迅速だった。蓮花を倒そうとしても彼方に阻まれるだけだと即座に判断し、十三人という現存勢力で、いかに彼方と戦うかを目配せだけで話し合った。下への教育が行き届いている『組織』ほど怖いものはないと、モトナリに散々言われていた彼方は、この人間たちがそれなのだと判断する。故に、最大限の警戒を以て……空に飛んだ。

 厳密にいうと、重力に縛られずに上方方向へ移動し、落ちない程度の移動の力を保っているだけなのだが、空を飛んでいるのと大した変わりはない。

 それをみた警備兵は、驚いた。二つ以上の『能力』なのかと考えた。だが、そんな人間の前例は聞いたこともなく、同じ能力なのだと納得させる。そして、そのうちの一人が、目配せによる作戦通りに動き出す。

 即ち、一撃必殺。

 疾風のような速さを持つ彼方は、防御力が弱い。故に一撃必殺を考え、一番攻撃力が高い警備兵を。一人のサポート『能力』による強化の後で送り出したのは賢明といえる判断だろう。

 残りの10人……突撃をする人と強化をした人と声を拡散させていた人以外の『能力者』は、戦闘的なサポートとしてそれに続く。拡散は大きな音で驚かせるくらいしか使い道がないので、戦えなくても仕方がないだろう。まぁ、何はともあれ、彼方と、十三人の警備兵との戦闘の火蓋は、切って落とされたようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ