二話、猫耳フード
三人称がどう考えても、下手です。その練習もかねているので、温かい目で見守ってくださると、幸いです。
彼方がスラム街からでてくると、そこにはフードを被った少女が居た。だが、その少女の容貌は、この世界の普通とはかけ離れていた。まず、フードに猫耳がついている。十年より前なら、コスプレとして、ぎりぎり許容範囲外といった感じで、一部の街ならば見かけた格好だ。だが、この世界で娯楽としてファッションを使うものは、めっきりと減った。十年前の『能力革命』以降は、娯楽そのものが衰退した。なにより、余裕がない。虐げられた『能力弱者』はもとより、そもそもの第一次産業をやる人間が減ったのだ。『能力革命』以降は、いくら『能力弱者』が農業をやっても、『能力強者』に盗られる事が続いた。『能力強者』であっても、同じくらいの強さの敵相手に、農作物を守りながら戦うのは、簡単なことではなかった。結局今の世界は、昔の狩猟民族と大して変わらない食生活だ。しかも、『放火』系の能力者のせいで、森が減っている。この世界の人々が、野菜を食べられなくなる日も近いのかもしれない。
閑話休題。
その少女は、今時珍しい猫耳付きフードに、ホットパンツ、ニーソックスという、非常に『十年前』の某文化を受け継いだ格好をしていた。そして、どう見たって年齢は二十歳前後だろう。『十年前』に十歳程度だった人間が、今の世界で、オタクに受けるファッションをするのは、珍しいことなのであった。
その服が引き立てる顔は、陶磁器の様に白く、その白い肌と猫耳フードの間から覗かせる青髪が、快活そうなイメージを漂わせている。体はスレンダーな体型だが、この世界では珍しく栄養失調ということもなく、どこか健康的な雰囲気を漂わせているのだった。ムッチリとした太股も、それに付随している。
「蓮花、何かわかったか?」
「はわわ! ご、ご主人様ですかっ!!!??? す、すいませんっ、私では、あまり有意義な情報を得ることができませんでした! 本当に申し訳ありません!!」
「ドジっ娘っぽく振る舞えば許されると思うなよ? どうせおまえは人の過去を覗いて、勝手にドラマにして自己満足していたんだろう?」
「チッ…… ばれましたか」
「何年一緒に旅をしていると思うんだ?」
「三日?」
「三年だ」
「そういえばそうでしたねぇ。長かったものです」
蓮花の言葉を聞いて、彼方はため息をつく。
「1000日程度の差はそういえばで収まるものなのかよ……」
「ところで、彼方の戦果は?」
あらかさまに、話題の転換を図ってきた。別に冗談なんだからもっと続けたかった彼方であったが、戻すのも面倒なので、素直に問いに答える。
「スラムの顔役っぽいのに、探して貰えるってよ。ただ、下っ端だから結果はお察ししてくれ」
彼方は正直に今日あったことを答える。正直顔役かと聞かれると返答に困るが、交友関係が広いものを顔役とおいても全く問題はないだろう。
「さすが彼方だねぇ。少なくとも確実な戦果を取ってくる。ボクは中々当たらないからね」
蓮花は『心理』系能力者だ。簡単にその能力を説明すると、念じた人物の過去が見れる。対象の視点で、対象がこの世界軸で起こしたことを見れるのだ。見ている時間は『時間圧縮』が働くので、驚くほど早く人の過去を見れる。なんとも怖い能力だ。一般的に『心理』系は嫌われる。何故なら自分の目論見がバレる場合が多いからだ。もちろん全ての『心理』系の能力者が、人の過去を見たり、思考を読みとったり、そんな便利なことばかりするわけではなく、鳥類などの、人物に聞かない『能力』であったりもする。だが、『心理』系の能力に嵌められた人物は多々居るので、嫌われているのだ。
「そうでもないだろ。蓮花が過去を視てくれるお陰で、時々もの凄い当たりを引くからな。当たりの人間だった場合は、俺が逃がさないし」
彼方は『特殊』系の『能力者』だ。『特殊』と言っても、ほかに分類する事ができない能力という意味なので、例えば、頭の中で延々と正確な音楽を流せるような使えない『能力』も、『特別』系に分類される。則ち、分類できないレアな能力をもって居る人が、『特殊』系に分類される。
彼方の『能力』は、移動だ。自分と、左手にあるものを、何物からの束縛も受けずに、移動ができる。要するに、左手に持った砂を、物質が崩壊しない程度の限りない速さで、打ち出すことができたり、重力に逆らって空に飛んだりできる。なんとも便利な能力だ。
この二つの能力を使って、彼方と蓮花は、彼方の弟妹であり、蓮花の親友の……桂花を探している。