十九話、電流
雷同に近づいた彼方と明日斗に襲ったもの。それは、
痺れ……
だった。
バチッ! というような火花が腹部の側方二箇所に触れたかと思うと、一瞬でそれは痺れへと変貌し、自分の体に襲いかかり、後方へと吹き飛ばした。
雷撃……か。
明日斗と彼方は受けたときの感覚でそう思った。そして、触れた場所は腹部側面二箇所のみ。ようするに円上又は棒状で雷同自身の前方のみへと存在する電気の檻。
だが、それは彼方と明日斗が触れたときの話で、相手が自在に操れるのかもしれない。
要するに、
近づくことは、難しい。
次の一発で確実にしとめられる可能性もある。
彼方はとりあえず、スティレットを腰からだした。そして、それを左手で触れ、
移動させる。
能力の効果を受けた細長く、尖った短剣は、真っ直ぐに雷同の方向へと突き進む。
からんっ
何かが落ちる音が聞こえた。それがスティレットだと気づいた。何故? 彼方の頭の中で疑問が沸いた。
「なっ」
思わず口に出る。何故落ちた? 理由はわからない。
「つまらねぇなぁ。昔のモトナリさんの部下だっていうから、楽しみにしていたのに」
雷同は呟いた。彼方の疑問に答える気もない。
「まぁ、死ねや?」
やばい! 彼方は直感的にそう感じ取った。逃げろ! 脳が警告を頭に鳴り響かせる。
移動。
能力を前進にかけて、一瞬で右斜め後ろへと後退。
そして、
バゴンッ!
彼方がもと居た場所に何かが鳴り響いた。
鳴り響く前に見えたのは、一筋の光。やはり電気。そう感じ取った。そして、電気が金属にできること。
いや、電気によって生じた現象で、金属を止めることは容易だ。
それによって俺のスティレットは弾き落とされたのだろう。
すなわち、磁場の形成。
金属を引きつける磁場を、地面に電流を流し込むことにより作成したのだろう。それほど強力な磁場を作成できる程度の電流を流せる敵……
格上だ。
そう感じ取った。
だが、俺が今引けば、後ろの桂花や蓮花はどうなる……?
またあいつの手先になっていいのか?
いいわけがない。
俺は別にスティレットという金属に頼らなくても戦闘はできる。
彼方は金属だけが武器ではない。
拳がある。
移動した。
能力を使い。それは疾風のごとき速さだった。よく見ると、スティレットを落とされて驚いていた明日斗も加速している。
まだだ、終わっていない。
能力を発動するときは、必ず何か残滓が出るはずだ。数多くの訓練で、気配を読みとるのは特に敏感になった俺。それでも能力の残滓の気配を感じるという行程ができるには、到底技量が足りない。
だが、やるしかないのだ。
ダイスを二回振って二回とも六が出るような三十六分の一の確率であっても、三回振ってすべて六なような、二百十六分の一の確率であっても、いくらその確率が低くても。俺はやるしかないのだ。
彼方は集中する。
雷同が出す能力を感じ取る。
円上に、自分の周りに配置している。
それの一つに左手を伸ばし、雷同に向かって移動、させる。その能力によって動かされた電流は、雷同の方へと向かう。
そして、二つ目……間に合わない! 能力の気配の残滓を感じ取ることができても、手が間に合わない!
だが、
電流は、円の中心へと【加速】した。
「明日斗っ!」
彼方は思わず叫んだ。
「おまえばっかにいいかっこさせるかよっ!」
照れくさそうに明日斗が叫び、彼方は仲間がいることを再認識した。