モブ、やり直したい。〜あるのは勇気と慢心だけ〜
初投稿故拙い文章です。ご了承ください。
俺、田中太郎(享年18)はずっと正真正銘本物のモブ
だった。身長170.5cm 体重61.8kg 家族構成は父、母、俺とポチ(猫)の4人。学校では友達はほどほど、だか親友と呼べるような距離感の友達はおらず、昼休みの昼食は多くても3人としか一緒に食べたことがない。授業中の目立ちたがり屋の発言で微笑む程度の立ち位置だった。
別に俺はそんな自分に満足していたし、それ以上も望んでいなかった。でも今この瞬間、目の前で俺に微笑みかける羽が生えた女の人を見て少し期待をしてしまった。
転生ってやつを
「あなたは死にました。157680時間25分25秒の尊い人生が幕を閉じたのです。縁起がいいですね、端数が”ニコニコ”です。」
目の前の羽が生え頭に光輪がついている天使の様な見た目をした女(多分天使)は口ではそう言いつつも顔は1ミリたりともポジティブなことを考えているような顔ではない冷ややかな目をしていた。
「俺、やっぱり死んだんですか!?家族は!?俺、どうなるんですか!?」
咄嗟に思いついた事を吐いてみたが、我ながらいかにも死ぬのが初めてのモブが吐くようなセリフを吐いてしまった。
死ぬのが初めてじゃないモブなんているのだろうか。
慌てふためく俺を無視し、天使?はつらつらと死因や死亡場所、時間などを伝えてくる。きっとこういう ことには慣れているのだろう。だとしても俺が死因や時間を知って何になるのだろう。来世で同じ死に方をしないようにするための教訓にでもすればよいのだろうか。
「……と、こんなところです。なにか質問はありますか?」
どうやら連絡事項(?)は全て伝え切った様子。連絡事項にいくつか悪意のある表現や誇張されすぎた俺のモブエピソードが入っており、天使が明らかに俺を卑下しているような内容だったことや先程した質問が無視されていたことはとりあえず置いておき、天使が連絡事項を事務的に読んでいる間に聞きたいことをいくつか決めていた。
「俺が死んだということは、やっぱりここは天国なんですk「そんな自惚れまくった勘違いはやめてください。」
言い切っていないのに否定された。これまでの人生で何度かあったが、ここまで心にきたのは久しぶりだった。
「天国や地獄といったところは死後の世界にはありません。どんな善人も悪人もみな等しくこの場所に訪れ、転生後の人生、異世界での第2の人生に向けての計画を練ります。まあ例え天国や地獄あったとしてもあなたのようなモブでそんなモブな自分を肯定してるような心の底からのモブでモブなあなたの行くところはせいぜいゴ…泣いてます?」
俺があまりにも深くうつむくので天使は俺が泣いていると勘違いしたらしい。猫背でごめんなさい。だが天使に言われ自分でも自分に腹が立ってきた。どうして今まで俺は自分がモブであることに疑問を持たず、モブであることを認めてモブとして生きてきたのだろう。俺だって美少女黒髪ストレートお兄ちゃん大好きっ子な妹が欲しかった。難解な言葉遣いをして美人委員長やツンデレ幼なじみに囲まれやれやれ…ムーブをしたかった。
この思いにもう少しでも早く気づけていれば。残念、無念また来年。
と今までのモブい俺だったら思っていただろう。
今、俺は人生をやり直すチャンスを持っている。
この毒舌天使は言った。どんな善人も悪人もみな等しくこの場所に訪れ、転生後の人生、異世界での第2の人生に向けての計画を練る。
ならば俺にもあるはずだ。第2の人生を歩む権利が。
俺はそんな熱い想いを胸に秘め勢いのまま両手を思い切り掲げ、人生(?)一大きな声で叫んだ。
「俺を今までの俺とは違う新しい俺として異世界に
転生させてくれぇええええええ「では今のあなたにステータス+勇気3を付与し転生させますね。」えええええええええええ!!!…………え?」
勇気+3?聞き返そうとした瞬間意識が遠くなる。転生が始まったらしい。薄れゆく視界の中、あの毒舌嫌味性悪天使がほくそ笑んでいることだけが分かった。
異世界
俺は暖かいお湯の中で目を覚ました。といっても目は生まれたてであまり良く見えておらず、優しい光と黒色の輪郭がふたつ見えただけだった。
「〜〜〜〜〜?〜〜〜〜〜!」
大きい方の黒い輪郭が何やら話しながら動いている。きっとこの大きい輪郭が父親で、隣の小柄な輪郭が母親なのだろう。俺は挨拶がわりに大泣きした。赤ちゃんだから泣くのか、、先程の天使からの仕打ちに対しての号泣なのかは分からなかった。
5歳になりある程度会話が出来るようになるとこの世界のことは大体理解できた。といっても両親が読み聞かせてくれる絵本や家に時たま来るベビーシッター(?)と両親の会話等からの推測だがこの世界は俺がよく知り、世間一般でもよく知られている異世界と大差ないらしい。モンスターがおり、魔法、異種族はもちろん、”スキル”までもがあるらしい。この世界を知れば知るほどにあの天使の俺に対する仕打ちの酷さがどんどん増していく。こんなそこら辺のスライムが俺のような子供をいつでもなぶり殺せるような世界によく勇気+3なんてステータスアップで転生させたものだ。
「お〜い!イッちゃ〜ん!」
と、誰に対しての説明かも分からない考え事をしていると階下から母親の声がした。イッちゃんとはこの世界での俺の名前、「イツカ・ナノカ」の頭文字をとったあだ名だ。いつかなのかとはいかにもモブらしいあやふやな名前だ…とネガティブになってはいけない!!なんてったってここは異世界!!!どんなに使えないスキルを持った転生者や追放されてしまった下位ジョブのサポート役でも輝ける場所!!!!!とポジティブになりたいところだけど俺のは勇気+3だし名前も適当だし大して鍛えもしていなしい前世も…と勝手にひとりで感情のジェットコースターに乗っていると、いつの間にか母親が目の前にいた。呼んでも来ない俺に痺れを切らしたのだろう。
「イッちゃん!イッちゃんが来てくれないからお母さん一人で洗濯物全部干しきっちゃった!」
それを伝えるためにわざわざ2階に上がってきたのか。
「それよりこれ!どうするの!」
そういう母親の手には紙が握られていた。きっと元の世界でいう入学手続きの紙のようなものだろう。紙には3つほどの学校が選択肢として挙げられている。
1 ヘンテー・区立総合冒険者学校
2 ソココソ・国立魔術師学校
3 シズムブ・帝立傭兵育成学校
……名前からして全部まともではなさそうだった。
「やっぱりイッちゃんは賢いから、ソコ校かしら?」
俺が異世界で見せた賢いムーブは井戸に落とした帽子を取るために井戸に石を入れて水かさをあげたことぐらいだ。カラスでもできる。
「ダメだダメだダメだ!イツカは俺と同じヘン校に入れ!区立で周りも顔なじみだけで安心だ!俺のようなA級冒険者にもなれるしな!!」
いつの間にか窓から入ってきていた父親が叫んだ。常識がなくてもA級になれるらしい。
3番目のシズ校には誰も触れなかった。きっと両親は分かっているのだろう。能力平均(もしかしたら以下)で特別なスキル無しの俺では帝国直属の学校はいくらなんでも厳しいと踏んだのだろう。だが俺は言った。
「僕、シズムブにします。」
両親は驚きを通り越してほぼ泣きながら説得してきた。シズムブで学べることは他のところでも学べる、周りと馴染めるのか、授業についていけないかも、となんとか諦めさせようとしてくるが、絶対に俺が低能力者なので止めている、等の憐れみや同情は感じられなかった。両親の愛を噛み締めながらも、俺は引き下がらなかった。きっと元の俺のステータスでは引き下がっていただろうが、ゴミ天使の勇気+3のおかげでかろうじて根負けせずに済んだ。今だけはゴミ天使に感謝だ。
両親は俺の説得は諦め、夜な夜な俺がシズムブでボコボコにされメンタルバキバキで帰ってきた時のメンタルケアの方法や転校手続きについて話すようになった。それが俺のメンタルを削っていることに早く気づいて欲しいものだ。
俺がシズ校を選んだのにもちゃんと理由がある。記念受験や他の受験生への嫌がらせ等ではなく、ちゃんとした理由がある。今の俺は俺が思い描く主人公とは全くと言っていいほどかけ離れている。
スキル───無し
強さ────道端のスライムでギリ
人脈────ご近所付き合い+親戚
ステータス─勇気+3以外全て平均
これでは無双俺TUEEEEやれやれ主人公には何年かかってもなれないだろう。だから俺は真面目に鍛えることにした。チートアイテムやチートスキルなどではなく真面目にきちんと。スキル、強さ、ステータスを効率よくかつ確実に上げられるのはシズムブしかなかった。後のふたつの学校はステータスが筋力が魔力に偏りがちらしい。あとは帝国直属校だしもしかしたら一国の王子とか世間知らずお嬢様とお近付きになれるかもしれないし。(多分これが一番大きい理由)
これらの理由から俺はシズムブで着々と、しかも確実に主人公への道を歩む。まだ入学できるかは分からないけれど、入試や人付き合い等もきっとなんとかなるだろう。元の世界で嫌われずかつ空気にもならない存在感を保てた俺だ。なんとかなるだろう。
この考え方が勇気+3のメンタルバフのおかげなのか
俺の馬鹿な慢心によるものなのかは今はまだ分からなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




