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記録者アルカディウスの真実

ルミナスブルームの採取から三ヶ月後、世界は劇的に変化していた。


ブルーファクターから開発された治療薬「アルカディン」(私の提案で名付けられた)は、ネクロン熱に対して98%の治癒率を示した。

さらに、希釈した溶液を農地に散布することで、グリーン・デスに侵された植物が次々と回復していった。


私は一躍世界の英雄となった。ノーベル平和賞の候補にも挙がっているらしい。


しかし、私の心は複雑だった。

「先生、素晴らしい成果ですね!」

マリコが祝賀ムードで声をかけてきたが、私は首を振った。


「これは俺の手柄じゃない。アルカディウスという古代の賢者の功績だ」


そう、私は「歌う皿」の声の主を、記録者アルカディウスと呼んでいた。量子翻訳の精度向上により、彼についてより多くのことがわかってきたのだ。

アルカディウスは紀元一世紀頃、小アジアの古代都市で生きていた学者だった。彼の時代にも、現代と同じような複合的危機が発生していたらしい。疫病、農作物の枯死、異常気象...


そして彼は、その危機を乗り越えた知恵を未来に残すため、特別な技術を開発した。音声記録装置としての粘土細工だ。


「先生、まだ解析していない皿がたくさんありますよ」


確かにそうだった。遺跡からは三百枚以上の粘土片が出土している。私たちはまだ三十枚程度しか解析していない。

その夜、私は一人で研究室に残り、新しい粘土片の解析を続けた。すると、驚くべき音声が再生された:


『未来の子よ、我が声を聞く者よ。汝の名は何というか?』


私は椅子から転げ落ちそうになった。これは...まるで私に話しかけているようではないか。

量子翻訳システムを最高精度に設定し、再度再生してみる。


『時を超えて我が声を聞く者よ、汝は田中悟と名乗る者であろう。我はアルカディウス。汝と語りたい』


血の気が引いた。なぜアルカディウスが私の名前を知っているのか?


『驚くことはない。時の流れは円環をなす。過去と未来は繋がっている。我は汝が生まれる前からその存在を知っていた』


私は震える手でマイクを取り、録音モードに設定した。


「アルカディウス...聞こえますか?」


しばらく沈黙があった。そして――


『おお!ついに対話が実現した。待ちに待った瞬間だ、田中悟よ』


これは夢なのか、現実なのか。二千年の時を超えた対話が始まった。

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