海の花を求めて
翌朝、私の研究室は政府関係者と科学者でごった返していた。
内閣総理大臣科学技術顧問の田村博士、厚生労働省疫学部長、そして海洋研究所の山田教授。
「田中准教授、これは国家機密レベルの情報です」
田村博士の表情は深刻だった。
「ルミナスブルームの存在は極秘事項でした。それを古代の声が知っているなど...」
「信じられないのもわかります」
私は冷静に答えた。
「しかし、この音声が示す情報の正確性を考えれば、検討の価値はあるでしょう。現在進行中の三つの危機――ネクロン熱、グリーン・デス、気候変動――これらすべてに対する解決策が示されているかもしれません」
山田教授が口を開いた。
「実は、我々もルミナスブルームに注目していました。この植物が分泌する化合物『ブルーファクター』は、驚異的な治癒効果があることが判明しています」
「治癒効果?」
「細胞の再生を促進し、免疫システムを強化します。実験室レベルでは、あらゆるウイルスに対して有効でした。植物の枯死病に対しても効果が期待できます」
私は興奮した。
「それなら、なぜまだ実用化されていないんですか?」
山田教授の表情が曇った。
「採取が困難なんです。ルミナスブルームは太平洋の最深部、マリアナ海溝近辺の特定の環境でしか生育しません。しかも極めて繊細で、水圧や温度が少しでも変わると枯死してしまいます」
「つまり、採取技術がないと」
「そうです。現在の深海探査技術では、生きたまま地上に運ぶことは不可能です」
その時、マリコが手を上げた。
「あの...音声にはもっと詳しい情報があるかもしれません。まだ解析していない部分がたくさんあります」
私たちは再び「クリュプト」を使って、音声の完全解析を開始した。すると、驚くべき情報が次々と明らかになった。
『ルミナスブルームの採取には、月の満ち欠けと潮の流れを利用せよ。新月の夜、海流が北向きに変わる瞬間に、特殊な共鳴周波数を海底に送信せよ。周波数は528ヘルツ、37秒間の持続。花は自ら浮上し、採取を許すであろう』
「これは...まるで取扱説明書ですね」
佐々木博士が呟いた。
山田教授は目を見開いた。
「528ヘルツ...それは『愛の周波数』と呼ばれるソルフェジオ周波数の一つです。DNA修復に効果があるとされていますが、海洋生物に対する影響は研究されていませんでした」
「試してみる価値はありますね」
田村博士が決断した。
「政府として全面的に支援します。人類の危機を救える可能性があるなら、どんな手段でも講じます」




