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予言する皿

「これは...変ですね」


マリコが困惑した表情で私を見た。我々は第二十三号粘土片――通称「歌う皿」――から奇妙な音声を再生していた。

他の皿とは明らかに異質だった。声の主は老人のような男性で、話し方が荘厳で、まるで祭儀のような雰囲気があった。


「クリュプト」による翻訳結果は以下の通りだった:


『星々は警告し、大地は嘆く。天は裂け、病が蔓延し、緑は枯れ果てる。だが絶望するな、未来の子らよ。海の深きに咲く青い花を見つけよ。その花の雫は命を繋ぐ鍵となる。我らが祈りを聴け、時を超えた子らよ』


「先生...これって予言じゃないですか?」


確かにそうだった。他の音声が日常的な内容だったのに対し、これだけは明らかに預言的だった。そして気味の悪いことに、内容が現代の状況と酷似していた。

ちょうどその頃、世界では複数の危機が同時進行していた。気候変動による異常気象、新種のウイルス感染症「ネクロン熱」の蔓延、そして謎の植物枯死病「グリーン・デス」が全世界に拡散していたのだ。


「まさか...偶然ですよね?」

「そうだな。古代の人が未来を予知できるはずがない」


しかし、私の心の奥で不安が渦巻いていた。

その夜、私は一人研究室に残って「歌う皿」の音声を何度も聞き返した。量子翻訳システムの精度を上げるため、佐々木博士に協力を依頼していた。

すると、午後十一時頃に佐々木博士から緊急連絡が入った。


「田中さん、大変です! 翻訳精度を九十五パーセントまで上げたところ、新しい部分が聞こえてきました!」


私は急いで量子言語学研究所に向かった。


「聞いてください!」


佐々木博士が再生ボタンを押すと、より鮮明な老人の声が響いた:


『我が名はアルカディウス、最後の記録者なり。この声を千年後に聞く者よ、我らは同じ災いを経験した。星の配列が同じとき、災いは繰り返される。だが希望はある。深海二千メートル、水温四度の暗闇に咲くルミナスブルームを探せ。その花の持つ物質は、あらゆる病を癒し、枯れた大地を蘇らせる。我らの叡智を受け取れ、未来の子らよ』


私と佐々木博士は顔を見合わせた。


「田中さん...これは本当に二千年前の声なんでしょうか?」

「わからない...でも、もし本当なら...」


私は震える手で携帯電話を取り出した。海洋生物学の権威、国立海洋研究所の山田教授に連絡を取った。


「山田先生、深海二千メートルに生息する『ルミナスブルーム』という植物をご存知ですか?」

「は? 何ですって?」

「青い花で、発光する海洋植物です」


電話の向こうで長い沈黙があった。


「田中君...なぜその名前を知っているんだ?」


私の血が凍った。


「まさか...実在するんですか?」

「三年前に発見されたばかりだ。まだ学名すらついていない。一般には公表されていない新種だぞ」


その瞬間、私は確信した。この「歌う皿」は単なる古代の陶器ではない。未来への伝言装置だったのだ。

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