エピローグ 千年後の発見
西暦3028年、東京湾の海底遺跡から一枚の粘土の皿が発見された。
「これは...音が記録されているようですね」
若き考古音響学者、田中聡美は興奮していた。彼女の名前は偶然ではない。千年の時を経ても、同じ魂は同じ使命を背負って現れるのだ。
最新の量子音響解析装置「ハーモニー3020」が田中悟の声を再生すると、聡美は涙を流した。
「先祖様...? いえ、魂の先輩...私、頑張ります!」
その時、研究室に温かい笑い声が響いた。
それは悟の笑い声だったのか、アルカディウスの笑い声だったのか、それとも時を超えた全ての賢者たちの調和された笑い声だったのか。
聡美には分からなかった。しかし、一つだけ確信できることがあった。
過去の声は未来を照らし、未来の声は過去に感謝を捧げる。そして今この瞬間も、新たな知恵が生まれ、時の輪が美しく回り続けているのだと。
皿は歌い続ける。千年の祈りを込めて。
「ありがとう、田中悟先生。私も声を残します。次の千年のために」
聡美は新しい粘土の皿を手に取り、録音を開始した。こうして、人類の知恵のリレーは永遠に続いていく。
時の流れに身を任せながら、過去と未来を結ぶ声となって。
「皿は歌う――千年後への祈り」
~科学と神秘が織りなす、時を超えた物語~
この物語は、実際に19世紀に提唱された「フォノトグラフィー理論」(粘土器に音が記録される可能性)をベースに、コメディタッチを交えながら書かせていただきました。
主人公の田中悟は、真面目すぎて周りに呆れられがちですが、最後まで信念を貫く愛すべきキャラクターです。古代の声との対話、量子翻訳システム、そして深海の青い花...すべてが現実的な科学理論の延長線上にありながら、どこか神秘的な魅力を持っています。
時を超えた愛と知恵の継承、そして何より「過去を聞くことは未来を知ること」というテーマが、皆様の心に響けば幸いです。
もしかすると、あなたの身の回りにも、過去からのメッセージが隠されているかもしれません。