元魔王なちび令嬢の兄、学園に御守りを持っていく-その後
読みに来て下さって、ありがとうございます。
ハリザードのお話の後日談です。
ハリザード side
治療班によって、ケグレブは一命を取り留めたが、焼けた半身には火傷の跡が残り、かつて美少年と言われた彼は、見る影もなくなった。
ワーナー侯爵家は、クラスメイト全員に慰謝料を払わされ、あの黄金の剣と盾も売り払われたと聞く。
ケグレブ自身は子供だからと言って許される訳でもないが、子供だから極刑は免れた。が、辺境砦の騎士見習いとして魔獣退治の為の訓練を受け、一生をその為に捧げる事とされた。
小さい子どもの頃に、彼も聞かされたであろう
『悪い事をすると、鬼がやって来て、辺境砦に連れて行かれ、地獄を見る』
を実体験する事になった。
悪い事をしなくても私は鬼(ひいお祖父様)に連れて行かれて、学校の長い休みには特訓を受けるが、最初は本当に地獄かと思った。
ケグレブには、地獄で頑張って生きて欲しい。
私がやっているんだ。出来ないとは言わせない。
さて、我が家には、クラスメイトの家から御礼が届いた。各領の自慢の名産品や宝石等々。中には、娘を奴隷として届ける不届き者も居た。
痩せ細って小さくボロボロなその子は、ケグレブと同じ班のメンバーの1人、水魔法を使うジグナム・ローゼン男爵令息の腹違いの妹で、デイジーと言った。
「余程、埃を叩いて欲しいと見える」
娘を送り付けた事もだが、その惨めな姿に父上の怒りが吹雪いた。
普通の人の場合、怒りで爆発しそうになるらしいけど、父上の場合は辺りが吹雪いて氷漬けになるので、勘弁して欲しい。
そして、そのしわ寄せは、叔父上に向かった。
ローゼン男爵は、叔父上の魔術師団に要らぬ腹を探られ、デザリスタとの密輸貿易を暴かれて、男爵家はお取り潰し。
ローゼン男爵は鉱山送りに、夫人は平民に。
ジグナムは、辺境砦行きに同意した。
「ちょうど、可愛いメイドが欲しかったのよ」
ケグレブを迎えに来た鬼と、ひいお祖母様に、気に入られたデイジーは、嬉しそうにジグナムと手を繋いで、ワイバーンに乗って辺境に行ってしまった。
事の顛末を見届けに行った私に、ジグナムは、ニヤリと笑って軽く手を振った。
公爵家を利用するとは、良い度胸だ。彼なら、辺境砦でも、上手く立ち回れるだろう。
「とにかく、お兄様が無事で良かったです」
あの日、家に帰ると、お昼寝を終え、たんまりケーキを食べた後だと言うベルリーナが、走ってきて私に抱き付いてきた。
「やはり、人間は、すぐに死んでしまうのです。学園は特に危険なので、常にこれを持っていて下さい~」
またもや、ベルリーナは私に、新たに作ったと言う『てるてるぼうず』を括り付けた。
「お兄様が死んでしまったら、私は、泣いて泣いて、ひたすら泣いて、儚くなって消えてしまうので、お兄様は死なない様に、また、これを付けておいて下さい」
『てるてるぼうず』は、ベルリーナの手で、しっかり私のベルト通しにぎゅうぎゅうと更に念入りに縛り付けられる。
「ベルリーナが、泣いて泣いて、消えてしまったら困るから、お兄様は死ねないな」
私は、ベルリーナを抱き上げて彼女の頬に自分の頬を擦り寄せた。
可愛いベルリーナ。君は、私に、愛をくれる。
最近は、辺境は特に物騒になっているらしい。ジグナムとデイジーは、無事、砦で仲良く暮らしているだろうか。ジグナムは、デイジーを守れているだろうか。
……ケグレブは、どうでもいいな。
「お兄様、お怪我は、ありませんでした?大丈夫でした?お疲れでは、ないですか?」
「うーん。ベルリーナのお陰で怪我はないけど、ちょっと、というか大分、疲れたかな」
「こう言う時こそ、これです」
「そ、それは、ちょっと……お兄様は苦手かな」
「でも、こう言う時こそ、これです。ラディッシュマンドラゴラ」
「食べなくちゃダメかな。何かウゴウゴしてないか?」
「穫れたてですから。お兄様、お目めを瞑って、はい、あーん」
辺境砦の小さなメイドさん見習いのデイジーは、こうして、やって来ました。ケグレブとジグナムも、騎士見習いとして頑張っている筈です。きっと。
本編『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』で、ベルリーナが暴れまわってます。
こちらのお話は、また、しばらくお休みとなります。また、あちらでお会いしましょう。




