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生徒会長の文書解読  作者: 畝澄ヒナ


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第十八話『文書解読3』

海斗から託された怪文書。今回もまた厄介そうだ。

「拓斗、楽譜は読めるかい?」

「いきなりどうしたんだよ。音楽に触れてこなかった俺が読めるわけないだろ」

「ほら、これを読んでみなよ」

これは、楽譜だ。明らかに楽譜だ。全く分からない。

「なんだ。ピアノでも弾いてみろって言うのか」

「それでも面白そうだけど、まずはこれを文字に変換できるかどうか試さないとね」

「音符が文字に? どうするんだよ」

「音符を文字に置き換える方法は人によって違うけれど、一番考えられるのは、音階で行を、音符の旗の数で段を、付点で濁点と半濁点を、と言ったところだろうか」

俺には音楽用語はさっぱりだ。一から説明を求める。

「うーん、とりあえず解いてくれよ」

「はあ、これは本来楽譜を読めなくても解けるようになっているんだ。だけどまあ、専門用語ぐらいの説明はするよ」


音階とは、音楽を構成する個々の音を音高、つまり音の高さ順に整然と並べた列のこと。音符とは、形によって音の長短、位置によって音の高低を表す記号のこと、らしい。

「なんとなく理解した」

「その他の要素については、その都度説明するよ。最初の小節から読んでいこうか」

「小節ってなんだ?」

「ほら、この五線譜に縦線が入っているだろう? この縦線から縦線までが一小節だ。これを音で読むと、『ミソラミファドファ』、さっき言った通りに文字変換すると、『じゃまするなら』だね」

最初から物騒な物言いだな。これは一年生の教室に貼られていたもの、本来なら三年生だけがターゲットだった。しかし、海斗が探りを入れたことで、危機を感じたというわけか。

「この最初の音符に付いている点はなんだ?」

「これは付点と言うもので、文字変換すると濁点を意味するんだ」

「じゃあ、この二つ目の音符、なんで中が空白なんだ?」

「これは二分音符さ。四分音符が普通の文字の大きさとして、中が塗られていない二分音符を小さい文字に置き換えているんだ」

「お前、すげえな」

単純に尊敬する。友人が音楽をしているところを見たことがないからこそ、余計にどこで学んだんだと疑問に感じる。

「それほどでもないよ。というか、音楽の授業で言っていたじゃないか」

「もう中学の話だろ? そんなの真面目に受けてねえよ」

「どこまでもいい加減なんだから。じゃあ、次の小節にいこうか」

「おう、望むところだ」

まあ、俺が解くわけじゃないんだが、と思った矢先、友人から驚きの一言が返ってきた。


「今度は君が解いてみてくれよ」

「な、なんでだよ」

「せっかく一緒にいるんだから、僕だけで解いてもつまらないだろう?」

「恋人かよ。俺がこういうの苦手なの知ってるだろ」

「いいから、ヒントぐらいは出してあげるさ」

「分かったよ」

さっき友人が解いた怪文書を参考に、まず音を読むことにした。えっと、これは……。

「五線譜の上から二本目と三本目の間が『ド』。そこから上にいくなら『ドレミファソ』、下にいくなら『ドシラソファ』と読んでいくんだ」

「ということは、最初は『ミ』だな」

「正解。さあ、もう解けるだろう?」

「じゃあ、これは『ミレミファファファレ』か」

「その通り。次はこれを文字変換してみよう」

意外と楽しいかもしれない。いや、楽しんでる場合じゃない。真面目に解かなければ。

「なんかこれ、ひげみたいなのがいっぱい生えてんな」

「それは旗だよ。八分音符から付いていて、十六分音符、三十二分音符、六十四分音符、と旗が付くたびに倍々になっていく。文字変換の場合は四分音符が『あ段』、八分音符が『い段』、そこから旗が増えると『う段』『え段』、という感じになっていくんだ」

わざわざ当てはめるとはなんとも面倒くさいことをする奴だ。そもそもこれは、解く側は音楽の知識がなくとも解けるかもしれないが、作る側は音楽の知識がないと作れないんじゃないのか。

「よくやるよ。俺には無理だね」

「そうだね。君に音楽の知識があったところで無理だと思うよ」

「おい、どういう意味だそれ」

「気にすることはない。ほら、もうちょっとだよ」

言われた通りに解いてみると、『ミレミファファファレ』は『わたしがここで』になる。

「解けたぞ。これ、俺にとってはめちゃくちゃ時間がかかるんだが」

「仕方ない、あとは僕が解いてあげるよ」

「ああ、よろしく頼む。これだけで少し頭が良くなった気分だ」

友人のあからさまな苦笑いを見ながら、俺は休憩することにした。


「最後の小節、『レシミレソファファ』は『つぶしてあげる』になるね」

「じゃあ、繋げると……」

「邪魔するなら、私がここで、つぶしてあげる」

「怖すぎる、もう本当に脅迫じゃないか」

友人は二枚目、三枚目もささっと解いてしまった。

「今回はなかなかボリュームがあるね。君も手伝ってくれよ」

「俺はもういいって。俺がやるよりお前が全部やったほうが早いだろ」

「じゃあ、まず結果だけ伝えよう。『ファファソミソソ』が『これいじょう』、『シラファラファレシ』が『ふみこむことは』、『ソファミファドソ』が『ゆるされない』。これが二枚目の解読結果」

「三枚目は?」

「それがね、さっきとはわけが違うんだよ」

確かに、三枚目を見てみると、何かが違う。


「さっきから気になってたけど、この小節のはじめに書いてある記号はなんだ?」

「一枚目、二枚目に書いてあるのはト音記号、三枚目のはヘ音記号だ」

「それ、何か変わるのか?」

「音の位置が変わるんだ。ヘ音記号の『ド』は、五線譜の下から二本目と三本目の間。まあ、多分それは関係ないと思う」

そうだ、これは音ではなく文字だ。ト音記号からヘ音記号に変更した意味が、何かあるはず。

「なんか、見たことないものが……」

「これは四分休符だね。普通なら『一拍休み』という意味さ。さっきまで使われなかった休符が出てきた、これは日本語ではないということかな」

「どうして分かるんだ」

「わざわざ記号を変えてくるのは、多分そういうことかなと思っただけさ。実際、これを同じように解読しても意味の分からない答えになる」

「じゃあ、これは何語だよ」

「英語というのが無難だろうね。簡単にバレてはいけない、だけど分かるようにしなければならない。難しくし過ぎてはダメなんだ」

これの一小節目、四分休符とやらを無視して日本語で解読してしまうと、『ミソラソシ』で『なすりすゆ』となる。本当だ、意味が分からない。

「英語だとして、どうするんだよ」

「色々試行錯誤した結果、AからGが四分音符、HからNが八分音符、OからUが十六分音符、VからZが三十二分音符で表されているんだ」

「じゃあ、最初の『ミソラソシ』は……」

「この四分休符を空白と考えると、『do not』になるね」

二小節目は『ラファソド』、三小節目は『ラファ』、一日でこれだけ読めるようになるなんて思ってもいなかった。これなら音楽の道もありかもな、なんて冗談は置いといて。


「これ、結構頭使うな。解読結果を教えてくれ」

「それは、最後ぐらい君が解いてみたらどうだい」

「おいおい、ここまできて投げ出すのかよ」

「そんなに全て答えを先に言ってしまったら、謎解きの意味がなくなるじゃないか」

「俺がやらなくたって……」

「いや、これは君に解いて欲しがっているんだよ」

そんな大袈裟な。もし友人がいなければ、この怪文書のメッセージが俺に伝わることなんてなかっただろうに、なんでもっと簡単にしておかないんだ。

「はあ、仕方ない。やるかー」

「陰ながら応援しているよ」

益々俺は追い詰められてしまった気がする。

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