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生徒会長の文書解読  作者: 畝澄ヒナ


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第十四話『身内の助け船』

三日連続で生徒会室で門前払いを食らった俺は、同じ高校に通う弟の海斗にこの件を相談してみることにした。

「なあ、海斗。ちょっと相談があるんだけど」

「兄さんが僕に相談なんて珍しいね。もしかして学校のこと?」

海斗も海斗で何かと鋭いところがある。下手に嘘をつくとすぐバレてしまう。

「そ、そうなんだよ。実は三年生の間で怪文書というのが出回ってて、その犯人として俺が疑われてるんだ」

「それは大変だね。でも、どうしてそんなことになっちゃったの?」

「俺のカバンになぜか見覚えのない怪文書が大量に入ってて、それがきっかけで疑われちまったんだよ」

「うーん、なかなかの策略に嵌められちゃったね。それで、僕に何をしてほしいの?」

「ちょっと一年生の子について調べてほしいんだ。確か生徒会書記って言ってたような」

そういえば名前を聞くのを忘れていた。まあ、あの様子だと教えてくれなさそうだけど。あの子は一年生の中では高い地位にいるのだろうか。

「その子なら知ってるよ。もしかして、その子を疑ってるの?」

「いや、そういうわけじゃないんだが、全然生徒会室に入れてもらえなくてな。何かあるんだと思うんだ」

「そうだね。あの子は結構お堅いから。少しだけ話をしたことがあるけれど、全然意見を曲げてくれない子だから大変だったんだよね」

嫌われている、というよりかは、近寄りづらいといった感じか。確かに、あの無表情で話しかけてこられると委縮してしまう。海斗もあまり好意的な印象は持っていないのだろう。

「俺は生徒会長に話があるんだけど、会わせてすらくれない。できれば、俺と生徒会長が話せるように隙を作ってほしい」

「それはいいんだけど、生徒会長が何か大事なカギを握ってるの?」

「ああ、怪文書事件にはあいつが関わってる。だから必ずあいつの話を聞かないとこの事件が終わらないんだよ」

「なるほどね。わかった、僕頑張るよ」

「助かるよ、ありがとう」

海斗は快く承諾してくれた。俺はなるべく迷惑をかけないように、何か収穫があるまではおとなしくしておこう。


貝塚拓斗はしばらく友人とおとなしく情報を待つことにした。ここからは海斗の出番である。

「まずは、クラスの子に聞き込みをしようかな」

海斗は慎重に動き出した。

「ねえ、君」

「どうした委員長」

「少し聞きたいことがあるんだけどいいかな」

「大丈夫だけど、俺に話しかけてくるなんて珍しいじゃん。いつも委員会の仕事で忙しそうなのに、そっちはいいのか?」

「うん、それよりも大事な用事ができたんだ。それでさ、聞きたいことっていうのは怪文書の噂についてなんだけど」

もちろん事前に噂の内容は把握している。海斗はもちろん兄のことを信じているが、その噂がどのくらい本当で、どのくらい嘘が混じっているのか、自身の目で確かめなければならない。というか気が済まないのだ。

「おお、委員長もこういうのに興味を持つんだ」

「いやあ、僕もこの学校の生徒なら知っておいたほうがいいかなって。ほら、三年生だけじゃなくて他の学年でも似たようなことが起こるかもしれないし、対策しておかないと」

「さすが委員長、危機管理がしっかりしてるなあ」

「それほどでもないよ。それで、この噂についてどのくらい知ってる?」

「そうだな、最初の事件は五月だって聞いたかな。委員長みたいに三年生に兄弟がいる友達が聞きつけたんだ。その時は特にお咎めなしって感じで、犯人も全く見当がつかなかったみたい」

事件は前触れもなく起きた。海斗が事件のことを知ったのは兄が謹慎処分を受けた日のことだ。五月にはまだ事件は噂として流れてきてはいなかったのだ。しかも、海斗は噂というものに疎い。

「具体的にどんな感じだったの?」

「全クラスの黒板と机の中に、変な文章が書かれた紙切れが置かれてたって話だよ。その怪文書は先生が全部回収して、さっさと捨ててしまったらしいけど」

「そこまで知ってるなんてすごいね」

「いや、先生が話してるところを聞いたんだ。『まったく迷惑な話だ』ってイライラしていたよ」

この生徒は意外にも事件のことを結構知っているようだ。海斗は味をしめ、もっと聞き出すことに。

「先生がむやみやたらにそんなこと話すなんて、そっちのほうが迷惑な話だよ」

「確かに、この学校の先生は危機管理能力皆無だからな。だからこそ、噂も流れやすいし、結構信憑性高くなっちゃうんだよ」

もはや教師も噂流しに加担しているようなものだ。海斗は心の中で呆れながらも話を聞き続ける。

「それで、事件は終わりにならなかったの?」

「そうなんだよ。友達によると二回目の事件は一か月も経たずにあったって。違う文章だったらしいけど、日本語じゃないから何書いてるか分かんないって言ってたな」

「へえ、それは気になるね。それでそれで?」

「委員長、やけにグイグイくるじゃん」

「そうかな。僕もやっぱりただの高校生だからね」

兄の拓斗に頼まれなければ当然こんなに聞きこむことはない。

「それもそうだよな。まあ、二回目以降しばらくは事件がなかったらしいんだけどさ、二週間後ぐらいにまた怪文書が貼られたんだよ」

「うーん、どういうことなんだろうね」

「分かんないけど、そこでも犯人は分からなかったみたいなんだよ。でもある日、急に犯人は三年生の貝塚って人だっていうのを聞いてさ」

「それはまた急だね。誰から聞いたの?」

「この噂を聞きつけた友達からだよ。その友達もまた友達から聞いたって言ってたけど。そういえば貝塚って名字、委員長と一緒だよな」

「うん、それは間違いなく僕の兄さんだよ。まさか、この噂本気で信じているの?」

「い、いやそんなわけないじゃん。ただの噂だよ、気にすんなって」

さすがに委員長に喧嘩を売るわけにはいかない。この学校での委員長という立場は、生徒の中では先生よりも高い位置にある。それよりも高いのが生徒会だ。

「そうだよね。そう思っててくれて良かったよ」

「そ、そうだ! チャイムが鳴りそうだからもう行くよ」

「その前に一つだけ。友達って誰のことかな」

「ああ、隣のクラスにいる〇〇って奴だよ。それじゃあ俺はこれで」

男子生徒はそそくさと教室に戻ってしまった。海斗はその友達とやらに話を聞きに行くことにした。その友達はまたまた友達を、そうやって友達の連鎖を繰り返し、やっと聞きつけた噂の元凶は、生徒会書記、あの女子生徒だった。


放課後、生徒会室に向かった海斗は一人の女子生徒を見つける。

「あなたは、クラス委員の委員長さんですか」

「よく僕のことをご存じで。噂を流していたのは君だね」

「何のことでしょうか」

あくまでもしらをきる生徒会書記。海斗はさらにたたみかける。

「兄さんを嵌めたのも君でしょ」

「あなたのお兄さん、貝塚拓斗さんのことですか?」

「へえ、知っているんなら尚更怪しいね」

「嵌めたとは嫌な言い方ですね。犯人があぶり出されただけでしょう?」

不気味な笑みを浮かべ、海斗を見下す書記。

「君、もしかしてこの事件の真犯人だったりするんじゃないのかなって、僕は思ってるんだけど」

「あのお兄さんが余計な事でも言ったんですか」

「そう言うってことは認めるの?」

「まったくばかげてますね。証拠でもあるんですか?」

「いや、ないけど。僕は兄さんのために……!」

生徒会室のドアが静かに開いた。

「もうすぐ会議を……って、何をしているのかしら」

「会長、何でもありません。今行きます」

「逃げるつもり?」

書記は何も言わず行ってしまった。海斗も仕方なく、その場を離れるしかなかった。

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