追憶と激情⑦
あの街には、あの街なりの掟がある。
その掟が、俺と、情報屋を救い、育てたと言える。
「街の連中が、よってたかって俺たちの面倒を見てくれて、生きる術を教えてくれた。生きてくだけなら充分だった……今度のことで、ケチがついちまったけどな」
俺の科白を、二人は黙って聞いていた。
車は、取り敢えずの目的地―柾木昭史の生家近辺―に停車した。
助手席から降り立った俺の後ろから、当然のようにお嬢様と淑子さんがついてきた。
「大人しく、車の中で待ってろよ」
「やあよ」
お嬢様がが言った。
「依頼主として、知る権利があるでしょ」
「何度も言っただろう。依頼人自ら乗り込んでくる必要がどこにあるってんだ」
「いいじゃない、あたしの中にはあるんだから」
お嬢様はそう言って胸を張る。
淑子さんまで、続けて言った。
「仕方ありませんわ。こうと決めたら、お嬢様は聞きませんから。それに、あたくしも、ここで引き下がるわけにはいきませんの」
同行させていただきます、きっぱり言い切られてしまった。
――仕方がない。
俺は肩をすくめて歩き出した。
柾木昭史の生家には人っ子一人いなく、随分と荒れ果てていた。
「……確か、両親は何年か前に両親は他界して、その前後で兄貴の姿も見えなくなったんだったな」
昭史自身も高校卒業後すぐに家を飛び出しているとは既に把握している情報だった。




