追憶と激情③
目が覚めたときには、お天道様は頭上高くに昇っていた。
「よう、起きたのか」
情報屋が声だけかけてきた。顔は、モニターの画面から動かない。
「結構、疲れてたんだな」
「……みたいだ」
大概のことではバテないと思い込んでいたが、やはり昨日のいきさつはそれなりにこたえたようだった。
食欲も湧かずに、コーヒーに砂糖だけぶちこんですすった。情報屋が呆れたような顔をして言う。
「お前、それだけかよ。何かもっと腹にたまるもん食えば?」
「いやいい。減ってから考える」
俺の返事は、情報屋には理解できないものだったろう。何せ、始終腹が減ったと言ってはファストフードやらスナックやらを口に放り込んでいる。それがあの体型を生み出しているわけだ。
「まあ、いいや。それよりは、ある程度は掴めたから、お前のスマホに送っとく」
「サンキュ」
コーヒーをすすりながら、送られてきたデータに目を通す。
調査対象のフルネーム、年齢、出生地から最終学歴、家族構成からその現状までかなり詳しく調べられている。いくら情報屋でも、昨日の今日で良くここまで調べられたと感心するくらいだった。
「すごいな、大したもんだ」
「まあな…って言いたいとこだが、実はそれ、殆ど送られてきたもんなんだ」
「送られて?」
俺は情報屋の方を見た。
「一体どっから、何でまた」
俺の問いに、情報屋は首を降る。
「いや。アドレス追ってもわかんなかったけど。ただな」
情報屋が続けた。
「メッセージの最後に”elf”サインと追伸がな」
「追伸?」
聞きたくなかった。本当に、心底聞きたくなかった。
だが、訊かずにはいられなかった。
「一行で、”どうしてあたしに訊かないの?”って」
嫌な予感、的中。
連妙寺(裏)の美幸お嬢様は、大人しく答えを待つつもりなど欠片もないようだった。
「……依頼人ってのは、金だけ出して口を出さないってのが一般的じゃなかったのか?」
「何事にも例外ってもんがあるんだよ」
情報屋の返答に、とりあえず頷くしかなかった俺だった。




