待っている人々
秋のお彼岸の最後の日。
私は車のハンドルを握り、父と母が眠っている霊園に向かった。
そこは郊外にあるのだが、その道中、車が混んで思いのほか時間を要し、霊園に着いたときはもう夕暮れどきになっていた。
駐車場へと進み入ると、霊園入り口付近に十人ほどの集団がいて、みなこちらを見ていた。彼らのほとんどはお年寄りだったが、その中に一人、赤い服を着た幼い女の子もいた。
――帰りのバスでも待っているのだろうか?
私はそんなことを思いながら、駐車場から歩いて両親の墓へと向かった。
墓参りをすませた頃には日暮れが迫っていて、周囲には墓参りをする者の姿は見られなかった。
私は急ぎ足で駐車場へと戻った。
その帰り道。
来るとき霊園の入り口で見かけた赤い服の女の子とすれちがった。このとき女の子は、花束を手にした若い夫婦らしき男女のそばを跳びはねるように歩いていた。
三人はこれから墓参りに行くのだろう。
駐車場に戻ると、霊園入り口付近にまだあの集団の人々が立っていた。バスを待っているにしては時間がかかりすぎている。
――いったい何を?
私は不思議に思いながら車に乗り込んだ。
そのときである。
彼らは霊園の入り口を離れ、お墓が並ぶ場所へと続く道を歩き始めた。こころなしか、みな肩を落としているように見える。
その影が夕闇のなか薄くなってゆく。
そこへ先ほどすれ違った若い男女が、こちらの駐車場に向かって歩いてきた。ただなぜか、そこに連れの女の子の姿はなかった。
――あっ!
私はこのときになってはじめて気がついた。
あの集団の人々は、彼岸の最後となる今日、わざわざ墓のある場所から霊園入り口まで降りてきて、最愛の人が会いに来てくれるのを待っていたのだ。
墓参りに来る親や子供たちを……。
だが、ついに誰も会いに来てくれる者がなく、みな寂しい思いを抱き、自分たちの墓へと帰っていたのだろう。
そんななか……。
お参りからの帰り道、赤い服の女の子が嬉しそうに跳びはねていた姿を思い出し、私は少しだけ心の救われる思いがした。