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元いじめられっ子の俺、異世界から帰還する  作者: 斎藤ニコ
第四章 大又蘭花

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第49話 新たなるイベント

 晴天市の朝だ。

 何事もない朝。

 それが大変、貴重なものであると、しみじみと感じながら、俺は高校へ向かっていた。


「はぁ……」


 通学路でため息をつくことが増えてきた。

 地球に戻ってきてから、まだ一か月程度しか経過していないというのに、なぜこんなにもトラブルに巻き込まれるのか。


「さっきも、えらい目にあったし……」


 つい数分前のことだ。

 早見くんのお姉さんである羽風さんが、「これ、童貞を殺すと言われている装備の亜種なの~」と異世界転生してきた俺に対する特攻でもついていそうなきわどい衣装を着て、でっかい胸から突っ込んできたので、避けて、転がして、「ああんっ、昼間から寝技なのね~」と目をつむって、なぜか足を広げ始めたので、そのまま地面に転がして、逃げてきた。

 背後から「あっ、こぼれちゃった……」とか、意味の分からない発言が聞こえてきても、振り返らない。あの人に関わるとろくでもないことになる。

 ぜったいに、カース状態(呪い)である。装備が、とかではなく、あの人が。

 でなきゃ、八人? 九人? とにかく、彼氏が行方不明になるわけがない……。


「しかも……増えたし……」


 誰が増えたのかといえば、委員長である。あの、演じる委員長は完璧なくせに、くノ一になるとへっぽこになる、あの久遠奏である。


 あいつがいきなり、路地の角から現れて、「きゃっ。いったーい、バナナにすべって、ころんじゃったぁ」とか言いながら、きれいなバク転をした。まるで最新アクションゲームの回避ボタンを押したみたいだった。


 どうやら予定では、俺の顔を太ももで挟みつつ、股を押し付け、転がそうとしたんだろう。経緯はともかく、最終的には、パンツの股部分に頭をつっこむ、漫画みたいなラッキースケベを自ら実現しようとしたに違いない。

 もちろん、プロレス技にしか思えず、ラッキーどころかダメージを食らいそうなので、さっと避けて、地面に押し付けておいた。


「うう……また色恋の術失敗……」などと言っていたが、ここ数日、毎日、なにかしら仕掛けてくるので、油断ができない。

 なお、この前のナース服での看病以来、俺の心臓は高鳴っていないので、当面は、誘惑に備えることもないだろう。多分。


 さらに、話は終わらなかった。

 背後で、化学反応が起きていた。


 気配でわかった。ちらりと振り返る。

 起き上がった羽風さんと、立ち上がった委員長が、互いに腕を組み、デカい胸をこれでもかと寄せながら、相手にすごんでいた。

 カマキリが鎌をふりあげて対峙しているみたいだった……。


「あらぁ、あなた、蒼汰くんのなんなのぉ? わたしより胸が小さいんだから、勝てないと思うけどぉ」と羽風さんのゆったりとしつつも冷たい声。


「ただのクラスメイトですけど? でも、委員長なので、彼の生殺与奪はわたしが握っているといっても過言でありませんけど?」と、絶対に間違った認識を持っている委員長の声。


 あれは他人だ。

 俺は無視をして、前進した。止まる理由など、ない。


 はやく、高校へ行って、自分の席で居眠りしたい……。

 

「まあ、さすがに、もう平気だろう……」


 希望的観測を抱いていたが、それはやはり希望でしかなかった。

 最近、少し静かだった早見くんが、なにかを嬉しそうに掲げて、走ってきた。


「師匠! とうとう撮れました! お姉ちゃんが、昨日の夜、××と××××××で、××回連続で×って××顔で××していた無修正動画です! これで、特訓してくれますよね!? これで僕を弟子と認めてくれますよねー!?」


 頼むわけがない。

 だが、周囲には関係がない。

 ひそひそと声が聞こえる。


「なんだ今の話。後輩に姉ちゃんの動画持ってこさせるって、クソえぐい……」

「景山くんだよね、あれ……ヘンタイすぎるんだけど……」

「おい、少年。その動画、10万で売ってくれないか?」


 俺はただ、異世界で魔王を倒して、こっちに戻ってきただけなのに。

 なんでこんなことになるんだよ……。


「俺の人生どこで間違った……あの青い髪の女神め……世界救ったら、特典くれるって言ってたけど……スキル持ってくるついでに、永続デバフまでつけてくれてないだろうな……」

「師匠! ほら見てください! 僕、盗撮テクニックがあがりまして――ぅっ」


 近づいてきた早見くんをサッと気絶させて、壁に寄りかからせた。うしろにお姉さんがいるから大丈夫だろう。

 データはもちろん消しておいた。少し見えたが、見なかったことにする。


「それにしても、ほんとうに……」


 幸せな日常って、本当に大切なものだったんだな。


 独り言が多いって? パーティーメンバーが全員死んで、一人で魔王を倒そうと決意したときから、独り言は多いんだよ……。


「神様、どうか、これ以上、余計なトラブルが起きませんように……」


 そんな俺の願いは、すぐに否定されることなった。


 まさか、あんなにクールだった白ギャルから積極的に挨拶されるなんて、だれが予想できる?








 とりあえず、最低限のプロットらしきものができたので、

 毎日更新は確実に無理ですが、少しずつ更新しようかなと思います。


 五章までは構想があるのですが、そのさきは不明です。

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