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神様の遊び  作者: 夢限
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第02話 過去を思い出す神様

 幼いころから人見知りが激しく、祖父母をはじめとした親戚にすらなつくことがなかった。だからだろう友達が全くいなかった。いや、一応いたことはいたんだ。でも、大体の奴らは1年以内にどこかに転校してしまい二度と会うことはなかった。そんな俺も高校に入学し、これからは俺も変わり、多くの友達を作り楽しい高校生活を送るぞと、そんな思いを持っていた。しかし、人間そう簡単には変われないのか、結局入学から一月友達は全くできなかった。そのため中学時代と同様、休み時間はいつも机に座って本を読んでいた。

 そんな日々が続いたある日、ふと立ち上がろうとしたところ机の上に置いていた本が床に落ちてしまった。しまったと思い拾おうと思ったら、俺より先に白くきれいな手がゆっくりと伸びてきて本を拾った。一体だれがと思ったら、なんてことはない隣に座る美少女加賀美玲愛(かがみれあ)であった。しかも本が落ちた際になんとカバーがはずれ、本の表紙が丸見えに俺も普通の小説などを読んでいたのなら問題なかったんだが、そのとき読んでいたのがラノベ、それをクラス一の美少女に見られてしまいこれには焦った。しかし、玲愛は表紙を見ると驚きつつも本を返してくれた。それどころか自身が先ほどから持っていた本のカバーを自ら外し、そっと俺に見せてきたんだ。なんだろうと思ってみてびっくり、まさに俺が今落とした本と全く同じものだった。心底驚いた、まさかクラス一の美少女であり文学系美少女として知られている玲愛がラノベを読んでいたとは、しかも俺が当時読んでいたものは結構マイナーで、ネットでもそれほど話題に上がっていなかったものだった。そんなものをまさか俺以外に読んでいる者がいて、それが隣に座っているとは思いもしなかった。それは向こうも同じだったんだろう、だから驚いていたわけだ。だからといって俺が玲愛と話すようになったということはなく、向こうもそういう雰囲気はなかったので、そのまま何もなかったわけだが、一か月ほどしたころだったか、今度は俺が玲愛の本を拾った。というのも、その時俺は教室から離れて図書室で本を読んでおり、そろそろ教室に戻ろうかと思ったとき、少し離れたテーブルの上に見覚えのあるカバーがかかった本が落ちていた。それは、まぎれもなく玲愛の物であると確信できた。どうしてかというと、いつも俺の隣の席で読んでいるのを見ているし、そのカバーはオリジナルで作っていると思われるものだったからだ。どうしてそれが分かるかというと、実は俺のカバーもオリジナルで作ったものだからだ。以前暇だったときにたまたま見つけたオリジナルブックカバーキットを使って作ったもので、どうやら玲愛は俺と同じキットを使ったと思われた。だからこそ俺にはこれが玲愛の物であるということが分かったわけだ。ということであたりを見渡してみたがどこにも玲愛の存在がない。どうやらこれは忘れ物のようだ。どうせ隣だし持って行ってやろうと思い、教室へと向かった。でもその前になんとなく玲愛がどんな本を読んでいるのか気になってしまってついそのカバーを外して中身を見てしまった。すると驚いたことにその時俺が読んでいた本、まさにそれと同じものだった。その後、教室に戻った俺が見たものはカバンなどをあさっている玲愛の姿、やはり落とし物でよかったようだ。そういうわけで俺はすっと玲愛へ向けて本を差し出しつつ、図書室で見つけたこと本が俺と同じであることを告げた。これには玲愛も驚いていたが、消え入りそうな声でお礼を言われたのだった。

 そんなことがあったことで俺も気が大きくなっていたんだろう、そうとしか思えない。なぜなら別の本に変えた際に、つい玲愛に尋ねてしまった。何の本を読んでいるのかと……。そして、帰ってきた答えはこれまた同じ本だった。そうしたことがしばらく続き、まさかすべて同じ本を読んでいた。だからだろう、俺たちはいつの間にかただ本を教えあうだけではなく、話をするようになっていた。といってもお互いに極度の人見知り、会話をしててもそれほど長くは続かない。でも、俺にとってはまさに至福のひと時だったのを覚えている。もちろん、クラス一の美少女である玲愛と話をしていることに多くの嫉妬をうけていたのは言うまでもないが、元来俺はそういった周囲の評判とかそういったものに頓着しない性格なために一切気にしなかった。

 こうして、話をしていることで俺たちの類似点がかなり多いことが判明した。最初に驚いたのは誕生日が同じだったことだ。まさか同じ日に生まれた人物と隣同士となるとは全く思わなかった。また、過去読んできた本、まさかのすべてが一致していた。こんなことありえないと思う、趣味が似ていても違う点がいくつかあるのが当たり前だ。でも事実として俺たちはこれまで全く同じ本を読んでいたわけだ。さらに読む速度もほぼ同じなので、たぶん読むタイミングすらほぼ同じだったと思われた。それだけでもすごいことだが、それ以外にも行動パターンも同じで、例えばトイレに行くタイミングも同じになることが多く、考えてみると話をする前も俺がトイレに行こうとしていると、前に玲愛がいたことや、後ろにいたということがあった。ほかにもいろいろと同じだったことが判明。だからだろう、俺たちは急速に仲が良くなったと思う。その結果、話すようになってから2か月が経過した際、俺たちはある計画を立てた。

 それは、小説を読むだけではなく実際に書いて、それをネット小説として投稿しようというものだった。これはお互いに興味があり、いつかはやってみたいという思いはあっても、いざ投稿するとなるとしり込みしていたことだった。でも、2人でやれば大丈夫、そんな思いからやってみることになった。しかし、普通にそれぞれが書いても面白くないから、いっそのこと2人で共通の世界を構築し、その世界で別の主人公でそれぞれが話を書き、いずれはリンクさせようというものだ。そうと決まればと、俺たちはさっそく共通世界の構築のための話し合いの場を設けることになったわけだが問題が生じた。それはどこで話し合いをすればいいのかだった。まず思いついたのは学校の図書室、しかし学内である以上、俺たちが白熱した話し合いをしていると邪魔が入る可能性があった。ならどちらかの家となるが、これも無理がある。俺たちはお互い人見知りが激しいために、これまで友達を家へ呼んだという経験がない。そんな俺たちがいきなり異性の友人を連れて帰るのにはハードルが高すぎる。となると、どこがいいかとなるが、ここで玲愛からの提案で図書館となった。図書館ならそうそう人が来ないだろうし、ましてやうちの学校の奴が来るとは思えなかった。なら決まりだなというわけで、俺たちは授業が昼間で終わった日の放課後、一旦家に戻り昼食を食べたのち図書館で待ち合わせようとなった。そして、俺はやはりワクワクドキドキだったんだろう、思わず待ち合わせより1時間も前に図書館へと向かってしまった。

 図書館で待つ俺、しかしここで事件発生、なんと玲愛がいつまでたっても来なかった。どうしたのだろうと勇気を出してスマホに電話をかけたが一向に出ない。何度かけても出なかった。そうして夕方まで待ったところで、今度は玲愛の家へ掛けてみたが、昼過ぎに出かけたという。そう、なんと玲愛はこの時()()()()となった。

 でもこれはありえないことだった。なんといっても家を出たという玲愛だが、玲愛の家から図書館までは一本道で歩いても5分もかからない。というより玲愛の家から図書館が見えている。そんな短い距離でいなくなることも、特に治安の悪いところでもないために、誰かに誘拐されたということもあり得ない。なら、玲愛が自ら姿を消したのかとなるがそれもあり得ない。なぜなら、玲愛は俺と世界構築の話をすることを楽しみにしていた。その日最後に見た玲愛も珍しくテンションが上がっていたほどだ。そして、これは後で聞いたが家を出るときの玲愛は本当に楽しそうにしていたと聞いた。そんな玲愛が自ら姿を消すなんてことはありえない。なら一体どこに、意味が分からなかった。けれど、俺は探した。俺と行動パターンや思考回路が似通っていただけあり、俺には玲愛が行きそうな場所が手に取るように分かった。そこを中心に探し回った。夜暗くなるまで、いや深夜まで探し回ったが見つからない。さすがにこれ以上は明日の学校に差し障り何より、明日になれば玲愛が帰っているかもしれない。そう思い翌日、学校へ行ったがやはり玲愛は居なかった。

 そこで、玲愛の両親は警察へ捜索願を提出、警察も暇なのか玲愛が美少女だからか、何やら気合を入れて捜査を行い始めた。まず疑われたのは当然待ち合わせをしていた俺で、重要参考人として警察へと連れていかれ応接室みたいな場所で事情聴取された。しかし、俺にはアリバイがあるということを、図書館の職員たちが証言してくれたことですぐに解放されることとなった。なぜ図書館の職員たちが証言できたのか、普通ならそういえばいたような気がするというようなあいまいな証言しか出ないと思われる。でも、実は偶然ではあるが図書館司書の1人と知り合いだった。幼いころ、1人でいつも遊んでいた俺に声をかけて一緒に遊んでくれた近所のお姉さん、その人が偶然図書館の司書だった。最初俺は気が付かなかったが向こうが気が付き声をかけてきた。それから、話をして玲愛と会う約束をしたというと、初々しい初デートと思ったようでずいぶんと盛り上がっていた。それは当然のごとく図書館の職員たちに知れ渡り、なんだか暖かく見られていた気がする。しかし、玲愛が来なかったことで、逆に幾度となく心配され励まされてもいたが……。とまぁ、そんな彼らの証言により俺の無実は揺るがなくなったというわけだ。だから、その日のうちに解放されて家へ帰ることができた。

 翌日、学校へ行った俺はなぜか周囲から注目されていた。なんだろうかと思っていると、ふと言われた。

「なんで、お前来てんだよ」って、これはどういうことだ。俺が学校に来てはいけない理由はないはずだ。ちょっと意味が分からない。そう思うも、幾度となくそう言われた。どうやらいつの間にかいじめの対象にでもなったのだろうか。わからなかった。しかし、その意味はすぐに分かってしまった。それというのも、掲示板にでかでかと掲げられた新聞、そこにはっきりと”秋野浩平、誘拐犯として逮捕される”とあったからだ。

 なんだこれ、そう思うもこれをやった人物には心当たりがあった。(あいつかぁ)あいつというのは、同じクラスの谷中未希(やなかみき)という女子で、実はこの未希と俺は赤ん坊のころからの知り合いでもある。なにせ、家が斜め向かいだからなぁ。それでも幼馴染と言わないのは単に俺たち、というか向こうが一方的に俺を毛嫌いしているからだ。なぜそこまで俺を嫌っているのかはわからなかったが、初めて顔を合わせた赤ん坊のころ、俺の顔を見た瞬間大泣き、それが俺に伝染して俺まで泣いて、まさに大惨事となった。当初は未希の機嫌が悪かっただけだろうと考えた親たちは、後日改めて俺たちを合わせたらしいが、結局同じような事態となった。その後も何度かそうしたらしいが結局すべてで大泣き、さすがにあきらめたという。そして、それから2年、2歳になった俺は近くの保育園に通うことになった。そこで再び未希がそこにおり再会したが、この時に事件が勃発。保育士が当然のごとく俺と未希を遊ばせようとした。しかし、俺の顔を見た未希は、なんと近場にあった積み木を手に取り俺めがけておもいっきり投げつけてきたんだ。しかもその積み木の角が俺の頭に当たり()()、保育園は騒動となった。それはそうだろう、保育園で園児が流血したんだ。これはまずい、保育士はすぐさま俺と未希の親を呼び寄せた。当然のことだが俺の両親は激怒、しかし未希の両親はというと、未希がそんな乱暴なことをするはずがない。保育士の話を聞いてもなおそう言ってのけた。そして、あろうことか俺が未希に対して何かをしたからこそ、未希がそんなことをしたんだろうという疑いをかけてきた。これには本当にうちの両親はかなり怒っていたな。実はこの時のことを俺はおぼろげながら覚えている。すげぇ痛かったってこともな。そのことがきっかけで俺と未希の家族は仲たがいするようになった。まぁ、だからといってお互いに嫌がらせ的なことをしてご近所トラブルになるというわけではなく、道であっても挨拶をしない程度だった。

 それから、小学校中学校と上がったわけだが、実は俺に友達がいない理由の1つが未希だったりした。というのも、未希の奴は俺の悪評をとにかく流しまくった。そのせいで俺は最悪な奴となり、誰も俺に近づこうとしなかったからだ。まぁ、もともと人見知りだったから、そこらへんはいいんだけどな。そうして、高校に入り、まさかの同じ高校に進学、これは完全なる偶然、俺が適当にここでいいやと思って受けて、合格をもらったから行くかとなった高校に、未希が同じく試験を受けていることも入学を決めたことも全く知らなかった。そこらへんの情報はなかったからな。だから、入学していざ新しい教室にと入ったら、そこに未希がいて驚いた。もちろん向こうも驚いていたが、すぐに俺に向かってストーカー呼ばわりを始めたほどだ。

 とまぁ、そんな未希だからこそ、俺が警察に連れていかれたということには歓喜したことだろう、この記事を嬉々として書いている未希の姿が目に浮かぶというものだ。そうして、この未希の書いた記事、これこそ俺にとっては地獄への切符となった。どういうことかというと、記事には俺が警察に捕まったとあるにもかかわらず俺は、普通に学校に来ていた。それで、さすがに多くの者たちがこの記事は間違いではないかと思い始めた。それを避けるために未希は父親に泣きついた。実は未希の父親は、とある週間雑誌の編集長で、これまでも多くのスクープを取ってきた人物でもある。問題はこの父親は未希に対してものすごく甘い、そんな未希が危機に立っていると知ると、あろうことか部下たちを使いこの事件のことを調べ始めた。まぁ、被害者が玲愛という美少女だったことから美少女誘拐事件として書けば確かに売れるだろうという打算もあったわけだが、その結果が最悪だった。それによると、どうやら俺の母親の兄の奥さん、その弟の奥さんの姉の旦那が警視庁の偉い人で、なんでも次期警視総監と目されている人物だったらしい。いやいや、それって完全に他人だよね。そう思うも、その記事によると、次期警視総監と目されている人物の縁戚である俺が誘拐殺人という事件を起こしたことになると警視総監にはなれない。だからこそもみ消しを図ったのではないかというのだ。そんな無茶な話があるか、ていうかいつの間にか殺人が加わっているんですけど……。どういうこと? と、それは今はいいとして、いやよくはないけれど、とにかくそんな話となり事態はその次期警視総監という俺も両親も伯父さんだって知らない人にまで及んでしまった。しかもちょうど近々に警察の不祥事という事件もあったことでマスコミも飛びつき大事になった。その結果、急遽警察が記者会見を開き、俺にはアリバイがあり犯人ではないと結論付けていること、現在目下玲愛を捜索中であることを発表したが、これは逆効果となってしまったようだ。実際報道が激化してしまったからな。おかげで俺の家の周りには報道陣が詰めかけ、街を歩けば石を投げられる始末、結局学校はおろか街をぶらつくことすらできなくなった。そして、その次期警視総監という人も、警察を辞職する羽目となり、警察官を夢見ていたその娘の将来まで断たれてしまった。ほんとなんでこうなったんだ。意味が分からない。しかもその娘からは恨まれているみたいだし、それはそうだろう、夢が断たれたんだから。また、本当に最悪なことにネット上に俺の顔と名前が載った。これをやったのは誰かは分からない、さすがに未希ではないだろうと思うが、とにかくそのおかげで、どこにも俺の居場所がなくなったうえに、両親も職を失ってしまった。そして、両親は離婚、どちらが俺を引き取るかとなったところで顔バレしている俺がいるとついていった方に間違いなく迷惑がかかると思った俺は、あえてどちらにもつかず一人で行くことを告げた。もちろん2人とも渋ったが、最終的にそれが一番いいだろうとなった。こうして、玲愛という1人の友人が行方不明になったことで俺の家族は一家離散となったわけだ。

 そうした最悪の結末を迎えたきっかけの少女、玲愛が今俺が造り管理する世界に召喚された。ほんと何が起きるかわからないな。心底そう思うよ。はてさて、どうしたものかねぇ。

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