表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/190

95.飛び出したのはサラマンダーと襲撃者でした(1)




 坑道の前に着くなり、出入口から黒っぽいトカゲに似た生き物が二匹飛び出してきた。


 咄嗟のことで気が動転したが「ピギッ!」というサブロの鳴き声でハッとし、どうにか進行方向に《過冷却水球》を設置することができた。


 トカゲもどきたちは突然現れた水の球に驚いた様子で、素早く飛び跳ねるようにして進む位置をずらしたが、完全には躱すことができず衝突した。


 二匹とも体の半分が凍りつき、動きを止めた。おそらくサラマンダーなのだろうと察し、氷結を最小限にする。依頼は捕獲。息絶えられると困る。


 ということで、図らずも捕まえることに成功した訳だが、多分、これは俺一人の成果ではないだろう。


 こいつらを追い立てたのは俺の頼れる仲間たちな気がする。確認のために探知してみると、坑道内から人が三人、走ってくるのが分かった。


「ほら、ユーゴさんいたでしょ。ドンピシャっす」


「わ、ホントだ! ヤスヒトの探知ってどうなってんの⁉」


「何も伝えなくても捕獲してるユーゴもおかしいけどな」


「やっぱり皆だったね。お疲れ様」


 フィルが手にした麻袋にサラマンダーを入れる。一匹につき一袋。それをヤス君とサクちゃんが肩に掛けて持つ。氷結を解除したのでモゾモゾ動く。


「なんか、サブロと全然違ったね。まったく可愛いとは思えなかった」


「そうっすね。赤と黄色の斑点が散らばってるのはちょっとゾワッときました」


「僕も絵でしか見たことなかったからなー。形も違うよね」


「こっちの方がトカゲっぽいよな。サブロはなんとなく恐竜に近い」


 会話をしつつ歩いていると、ヤス君が手で庇を作り、前方の確認を始めた。何かあったのだと察して探知を使ってみるが、何も分からない。


 ヤス君に訊いてみると、五十メートルくらい先に、二十人ほどがばらけて留まっているという。


 敵かどうかの判断がつかないので、一応《障壁》を張って警戒しながら進む。と、矢が何本か飛んできた。


 それらは一瞬で目の前まで迫ったが、見えない壁に押し止められたように一気に減速して落下した。


「びっくりしたー。今のってフィル?」


「うん、そうだよ。《風壁》を張っておいたんだ。使い方が分かってきたから」


 ヤス君が矢の止まった箇所に《水球》を近づける。すると前方に飛散した。


「うわ、これ一部分だけに相当強い突風の壁が作ってあるんすね。よっぽど威力のある遠距離攻撃じゃないと、この壁に当たった時点で止まりますよ」


「範囲も凄いよな。一、二……五本か。何本飛んできたか分からんかったが、それを全部落としてるからな。幅五メートル以上はカバーしてるぞ」


 また矢が飛んできたが《風壁》に阻まれて同じように落ちる。ヤス君が思いついたような素振りを見せて、矢を拾い集めだす。


「これしばらく続けていいっすかね? 濡れ手で粟なんすけど」


「なんか有名軍師の計略みたいなこと言い出してるけど、それ短くない? 物は良さそうだけど、弓じゃ使い物にならないんじゃないの?」


「ボウガン用の金属矢だな。回収は賢いだろ。費用が馬鹿にならんからな」


「じゃあ、しばらくこうしてよっか。それ鍛冶屋で引き取ってもらえる?」


「流石フィル君。そのつもりっすよ。今晩の飯代くらいにはなるでしょ」


 のんびりと話している間にも矢は飛んできていたが、三十本ほど回収したところで攻撃の手が止んだ。


 矢が切れるにしては早いので、無意味だと覚って諦めたのだと推測する。ヤス君ががっかりした様子で《異空収納》に矢を仕舞う。


「しけてやがんなー。まぁ、壁の後ろの五人がボウガン所持者って分かっただけでも良いっすかね。他は射線に入ってないから射れないだけかもっすけど」


「矢が勿体ないだけじゃない? 貧乏性が炸裂したんだよ」


「それに関しては僕たちも他人のこと言えないよね」


「そうは言うけどな、人間相手だと懸賞金でもかかってない限りは何の得にもならんからな。褒賞値がもらえる訳でもないし、賠償請求されるかもしれんし」


 襲撃されているのに、もう歓談の域に入っている。場にそぐわないが、それも仕方がないかなと思う。何故なら相手の力量が低いから。


 矢の命中精度を見て分かった。下手くそだ。射出速度はあるが、それは武器の性能。《風壁》なしで棒立ち状態を想定しても、当たったのは僅か二本。それもちょっと動けば躱せてしまう位置。他の皆もそうなのだろう。危機感を抱けない。


 対峙した訳ではないのでまだ何とも言えないが、少なくとも遠距離攻撃は怖ろしくない。ローガ一味と戦ったときの方が遥かに怖ろしかった。


 ローガか。頑張ってるかなー。


 帰ったらローガやデネブさんを交えて模擬戦をしてみるのも良いかもしれない。あの二人なら、今の俺たちと能力値的に大差はないだろう。


 そんなことを考えたとき、ふと知り合いの強さが気になった。


 ナッシュとクロエさんは俺たちと同じくらい。シャフトさんとレインさんは少し上にいる感じがする。


 エドワードさんはその上で、ヒューガさんとジオさん、あとサイガさんは多分もっと上だろう。で、頂上がミチルさん。


 スズランさんはその更に上な印象。リンドウさんは別格。鍛錬して分かったが、煙管の殴り一発で巨大な魔物を半壊させるのは異常だ。誰にもできないと思う。


 ただなぁ、ルードもおかしいよなぁ。


 ヒューガさんの威圧を受けたとき以上に怖ろしかった。人と向かい合って殺されるイメージを抱いたのは初めての経験だった。あれは緊張したが故の威圧だったが、本気でぶつけられたら、それだけで気を失う気がする。


 リンドウさんは敢えてそれを感じさせないようにしているから分からないが、威圧だけで言えば今のところルードがトップだ。


 もしかするとメチャクチャ強いのかもしれない。今度、模擬戦お願いしてみよう。


「ユーゴ、何考えてんの?」


「ん、ああ、今度ルードに模擬戦お願いしようかなって」


「いいな。あれは強いぞ。俺も頼もう」


「ついていけんっす。さて、矢も飛んできませんし、そろそろ行きますか」




お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価して下さると励みになります。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ