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44.初絡まれテンプレ戦とダンジョン特急探検隊(2)




「ユーゴ、目立つぞ。いいのか?」


「恐喝されたんだから仕方ないでしょ。こういうの放っておく方がよくないよ。これまでも散々やってきたろうし、これからも絶対やる連中なんだから」


「そうだな。しかし、こんなのが放置されてるってのはなぁ」


「何言ってんの。日本だってそうだったじゃない。こういうのは簡単には捕まらないんだよ。さて、それじゃあ、まずは恐喝には恐喝で返しておこうか」


 俺は思い切り息を吸い込み、大声を張り上げる。


「俺たちはアルネスの街の領主、エドワード・マクレーンの客分! そして冒険者ギルドマスター、ジオ・マクレーンの客分だ! お前らはそれがどういう意味か分かってるんだろうな! アルネスの街で暮らせなくなるのはどっちだろうな!」


 場が静まり返り、困惑した様子になる。オドオドと相談まで始める始末。


 はい、隙だらけ。ありがとうございます。


 俺は《過冷却水球》を手近な三人の足元に落とす。移動しながらどんどん設置していき、ゴロツキ共の足元を次々に氷結させていく。自分でやって驚いたが、生成速度が凄まじく上がっている。一つ設置に一秒掛からない。


 サクちゃんはゴロツキ共を棒で突いたり打ったりしながら俺の後に続く。僅かの間に、全員が床で呻いていた。氷結解除。


「意外と早く片付いたね。まったく、これでシルバーとブロンズだってさ」


「階級と能力は関係ないってヤスヒトが言ってたろ。お、来たか」


 フィルとヤス君が衛兵を連れてきたが、店の状況を見て絶句。衛兵に事情を説明し、取り敢えずゴロツキどもを拘束。


 だがゴロツキどもの嘘で足止めを食らう。俺たちが急に襲い掛かってきて太刀打ちできなかったとのこと。その上で脅迫もされているとか。


 遅れてぞろぞろやってきた衛兵たちの中にドニーの姿があったので声を掛けて挨拶。何があったかを話すと、大笑いした。


「アッハッハ! 十五人もいて新米冒険者二人に太刀打ちできなかったって言ってるんですか! しかも脅されてるって! 恥ずかしくないんですかね!」


「プッ、確認した。シルバー階級一名、ブロンズ階級十四名だ」


 衛兵たちが失笑する。ドニーの明るい笑い声が引き金になり和やかな空気になったが、それをぶち壊す者が一人。


「ふざけんな! 何笑ってやがる! 先に手を出したのはそいつだ! 俺たちは何もしてねぇし言ってねぇ! それにな、階級と能力は関係ねぇんだよ!」


 衛兵の癖にそんなことも知らねぇのか! とシルバー階級のゴロツキ冒険者が喚き散らす。ヤス君が「それ俺のだろ!」と憤慨。「盗人猛々しいな」とはサクちゃん。フィルは「学んですぐ使ってるんだから、褒めてあげたら?」と辛辣。


 確かに俺もこのゴロツキの面の皮の厚さはどうなっているのかと非常に気になっていた。先に言った者の前で、あたかも自分が考えたように堂々と丸パクリをかます恥知らず根性には恐れ入る。ただ嘘はいかんよ。


「ドニー、先に手を出したのは俺で間違いない。だけどそれ以外は――」


「ああ、大丈夫です。ユーゴさんたちが悪くないっていうのはもう皆分かってますんで。ただ、皆さんが『領主と冒険者ギルドマスターの客』と名乗ったという話が出てまして、それは身分詐称の中でも大罪ですから、どうしたものかと」


「詐称じゃないよ。確認取ってもらえば分かる」


 スッと全員の顔から血の気が引いた。目が泳ぐ者もいる。


「まぁ、端っから分かってたことだけれども、衛兵の中にもこいつらに協力してたのがいるでしょう。ドニー、君はそんなことないよね?」


「い、いえ、ありません! イノリノミヤ様に誓って!」


 ドニーがビシッと敬礼する。イノリノミヤ神教の信徒だったのか、と思っているうちに他の衛兵も敬礼した。ザッと音が揃うのが心地良い。


「俺たちが一筆書くから、領主に判断を仰いで。ドグマ組とやらの名前も出してるし、芋づる式に引っ張られてくると思うよ。ところで、こいつらって罪の度合いだとどうなるかな?」


「ハッ、領主の客人に対する侮辱行為は極刑、一族にも罪が及びます!」


「そんな重いの? じゃあ、どうしようか? 何て書く?」


「こいつら、胸糞悪いっす。とんでもない酷いことしてきてる感じっすね。八つ裂きでも足らないと思いますんで、刑罰内容について書いて欲しいっすね」


「ヤスヒトがそこまで言うってことは相当だな。じゃあ、八つ裂き後の胴鋸引きか、足の先から鋸挽きで輪切りにするかとかじゃないか?」


「君たち、周り見なよ」


 ゴロツキ十五人だけでなく衛兵たちも全員顔面蒼白、泡を吹くものや失禁者まで現れ、許しの懇願もあったが俺たちは誰も相手にしなかった。というか俺は唯一サイコパスじゃないと思っていたサクちゃんの提案に戸惑い、呆然とゴロツキたちがお縄となるのを眺めていただけだ。脅しだと信じたい。


 協力感謝の言葉をドニーが代表で掛けてくれたが、そのときにこっそり耳打ちしてくれた。衛兵の中にも、既に何人か密告者が出たらしい。


「衛兵長と副長が『家族だけは』と頭を下げましたからね。弱ったことに、貴族の血筋ってだけで、僕が衛兵長になる可能性が出てきました」


「おー、おめでとう。良かったじゃない。俺たちもドニーの方が良いと思うよ」


「どうしてです?」


「イノリノミヤ神教絡みのよしみっすかねー」


「それに、お前は見ていて気持ちがいいからだよ」


 サクちゃんがにっと笑ってドニーの肩を軽く叩く。ドニーは「皆さんも信徒でしたか!」と嬉しそうに笑った。いや違う。だが、存在を信じている上、元神職見習い。否定し辛い位置にいると自覚。嘘は吐いてないが、皆変な汗が出た。


 どうなるかは分からないが、エドワードさん宛の手紙に、ドニーを衛兵長に推すとも書いておくことにした。まだ若いのでそう上手くはいかないだろうが、あの性格なら大丈夫な気がする。ということで、めでたしめでたし。


 ではあるのだが、この事件の所為で時間を取られてしまい、昼食をまともにとれなかった上にダンジョンに入ることもできなかった。


 残りの半日は、宿と解体屋で潰れて終わってしまった。そういった愚痴を、俺は宿の食堂で皆と夕食をとっているときに溢した。


「別にいいんじゃないか? 解体屋も行けたし、良さそうな宿も取れたし。ビンゴさんに手紙を届けてもらえることになったし、俺は何の不満もないけどな」


「ビンゴさんが解体屋の店主なのは驚きましたけどね。まぁ、冒険者ギルドに持ち込んでるんだから、考えてみれば当然っすけど。それより何よりデビディアっすよ。一頭金貨十枚って。あの二頭狩るだけで一人金貨五枚っすよ」


「あんまりいないんだよ。それに素材と魔石が丸々だからね。ビンゴさんも言ってたけど、普通はこんなに高く買い取ってもらえないよ。ポイズナプリーも金貨五枚だったし」


「図体の割に安かったよね。繁殖して数がとれるからだろうけど。んー、ああ本当だ。何だよー、愚痴るほど酷い感じじゃなかったわー。いい一日じゃん」




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