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34.逆転の発想と熟練冒険者との出会い(1)




「それでは会議を始めます」


 俺はヤス君とサクちゃんの部屋にお邪魔している。部屋の中央で胡座を掻いて向き合い、極めて小規模な車座を成している。


 フィルは部屋で読書中。「僕も参加しようか?」と言ってくれたが、必要になったら声を掛けるからと断った。


 口には出さないが、久々に朝から自由な時間が取れて喜んでいた姿を見ている。邪魔するのは野暮というものだ。


「まずは、無事、目標金額を達成しました」


「おお、マジか」


「当面の間は大丈夫っすね」


 所持金が平均すると一人金貨五十枚分を超えた。ヤス君の闇属性取得兼ダンジョン挑戦旅行の出発はそれを目処にしようという話だった為、カキ氷屋は店仕舞いにした。


 現在は夏の第三期末。秋の第一期まで残り十日を切ったところ。


 まだ暑いので、カキ氷は売れる。そして間違いなく完売する。だがこの辺りを潮時にしておかないと、俺たちは暑い時期になると現れる美味しいカキ氷屋さんとして名を馳せてしまうことになる。


 それは違う。何かが違う。


 カキ氷屋は副業であり、俺たちは冒険者だ。


 決して冒険者を副業にしているカキ氷屋さんではない。断じてない。


 サクちゃんは日当が歩合含めて金貨一枚ほど。エノーラさんの武具店で手伝いをしたりもしつつ、二十日間休みなく働き、現在の手持ちが金貨二十枚分ほど。


 俺たちに比べると半分以下とかなり少ないが、冒険者ランクが一つ上のアイアンに上がり、肉体労働を行ったことで基礎能力値が大きく向上していた。


 見た目にも日に焼けて体格が良くなっている。俺とヤス君は細めで生白いので余計に際立つ。トレーニングを日陰でしているのが丸わかりだ。


 俺の基礎能力値の平均は八十。ヤス君は七十五だが、巧力が三人のうち最も高く九十。サクちゃんは平均九十で巧力が最も低く七十。


 壁の補修をしていたのにどうして器用さがこんなに低いのか疑問に思ったが、破壊された壁の瓦礫の粉砕と除去が主だった為らしい。


 やはり冒険者の街。泥酔した荒くれ者が武器で殴りつけたり、喧嘩の末に放った魔法が直撃したりと家屋の壁が犠牲になることはよくあることだそうだ。


「それって左官業を企業すれば左団扇じゃない」


 思わずそんなことを言ってしまったが、補修費用は壊した者が出すことになっており、もし犯人が見つからない場合は被害者側の自己負担となってしまうという世知辛い説明をされてしまった。


「それじゃ、泣き寝入りじゃないっすか」


「待て待て、説明はまだ途中だ。費用が捻出できない場合は壊れた家屋が放置されて景観を損なうし、治安も悪くなっていくだろう? だから、そうならないように税金を使ってるんだよ」


 領主のエドワードさんが税金を冒険者ギルドに回し、冒険者に依頼という形で仕事を斡旋することで問題は解決したらしい。


 罪人も作業に従事させているらしいが、性根が腐った者が多く不真面目で、彼らだけでは作業が遅々として進まないのだとか。


「それが、冒険者がいるとキビキビ動くって話でな。別に暴力を振るって従わせるとかじゃないんだが」


「それは単純に役所の責任者が舐められているか嫌われているんでしょ」


「確かに、他人を見下すような奴だったな。揉め事は責任者絡みばかりだった。なんで代えないんだろうな」


「そこはエドワードさんの采配っすよ。いつかその責任者が事故で処理されるように狙ってるんです」


 ヤス君が誇らしげに胸を張って鼻を鳴らす。凄く失礼で物騒な内容だが、俺もサクちゃんも否定はしなかった。


 なにはともあれ、被害者は精査の後に無償または格安で修理してもらえて、依頼を受けた冒険者には達成の賃金と貢献度アップが約束されるという仕組みを作ったエドワードさんは凄いと思う。古くなった家を自分で破壊する馬鹿なんかも出てきそうなものだが、そこは俺の知ったことではないので閑話休題。


 身体能力の平均値なのだが、関係がなさそうな魅力値は外して算出してある。魅力は全員七十前後なのだが、どういった行動で増えているのか、また何に影響するのかも不明。しっかり増えてはいるのだが、今のところ最も謎の大きい能力だ。


 魔力は俺が千五百。ヤス君が千二百でサクちゃんが八百。順調に伸びていた。


「あの、話に水を差すようで悪いんすけど、能力値の伸び具合を確認しても、ダンジョンの推奨能力値を知らないと意味ないんじゃないっすかね?」


 ハッ――!


「それは今から話すんだろ。基礎能力の平均値だけ知ってても、ダンジョンに通用するかまでは分からんからな。ユーゴもちゃんと分かってるさ」


「失念しておりました。フィルに訊いてきます……」


 すごすごと自室に戻ってフィルに訊く。能力値的にはダンジョン上層であればまったく問題ないだろうとのこと。信頼できる同居人兼友人の言質も得たので、さっさとヤス君とサクちゃんの部屋にとんぼ返りする。


「問題なさそうなので、そろそろ冒険者としての活動を始めることにします!」


 そう宣言したのだが「問題がないのは、飽くまで能力値的にはというだけだろ。危険じゃないか?」という鋭い指摘がサクちゃんから入る。


 たとえ能力値が推奨値であったとしても、動けなければ意味がない。戦う前に足が竦めば冒険者稼業終了に王手。怪我で済めば御の字だ。


 という訳で、急遽、模擬戦を行うことに。


 三人で冒険者ギルドに併設されている訓練場に移動した。


「明日から行く予定っすよね? ここで怪我して延期とか嫌なんすけど」


「その場合はフィルに回復をお願いするから大丈夫、と言いたいところだけども、やっぱ規則がないと駄目だよね」


「簡単にでも作った方が良いと思うぞ。俺とユーゴはまだしも、ヤスヒトは弓を使うから寸止めもできんし」


 総当たり戦で攻撃は寸止め。遠距離攻撃は一発受けたら終了。怪我をしないように、負けたと感じたら即座に降参するという規則を設けた。


 審判は手の空いている一人。試合中の二人が熱くなったら止めに入ることになっていたが、そこは大人。皆擦り剥く程度のかすり傷しか負わなかった。


 三戦ずつやったが、結果はサクちゃん全勝。俺が次点でヤス君が二敗。


 俺は武器を使わず、徒手格闘をメインに水術攻撃も軽く織り交ぜた。氷術は怪我をさせそうなので自粛。だが使ったとしてもサクちゃんには勝てなかったろう。


 ヤス君は弓での狙撃と氷壁に依る防御。相変わらず命中精度が高く、避け辛いタイミングと位置を狙ってくるので非常に鬱陶しい。


 だが、距離を詰めるとそこで終わる。あっという間に諦める。それがどうにも惜しい気がして、俺とサクちゃんで近距離戦闘を加えてみたらどうかと提案してみたが、ヤス君はうんざりした様子で横にした手を振った。


「やですよ、怖ぇっすもん。弓引くのも力いるし、今でもギリギリっすよ」


「弓を引くことにまで不満を言われたらもう何も言えなくなっちゃうねぇ」


「知ってはいたが、そこまで戦うのが嫌とは思ってなかったな。すまん」


 サクちゃんは単純に強い。動きが速いし、間合いで攻撃方法が変化するので対応が大変。離れれば短い棒を作って投げてくるし、近づけば長い棒で突いたり振り回したりしてくる。あとは取手の付いたトンファーのような形状の棒を作り、速度重視の二刀流になってみたりと戦い方に幅があった。




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