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112.大きくなっちゃった(2)




「どうしたサブロ?」


「ピギッ!」


 自信満々な顔をしたかと思うと、翼を大きく羽ばたく。それと同時に跳躍したサブロの体が浮き上がる。


「わ、飛んだ! ぶへっ、ちょっ、ちょっと!」


 驚くよりも舞い上がる細かなゴミや埃から顔を守る作業に力が入る。俺は慌ててサブロに止めるように指示する。ここで飛んじゃ駄目。


 フィルと一緒に宙を舞う埃を手で払っていると、サブロが着地し、しゅんとした。鳴き声も力がない。凹んでますと顔に書いてあるように見える。


「サブロ、飛べるのは凄かった。ただ羽ばたいたときの風がちょっとな」


「そうだねー。飛んだ状態で側にいるのもまた目立つよねー」


「んー、なんか良い方法ないかフィル?」


 フィルが腕組みして唸る。


「【箱庭】みたいな魔道具はあるんだけど、色々と問題が……」


 フィルいわく、魔道具自体がそれなりに大きく重い。魔道具の中に生き物がいた場合【異空収納】に収めることができない。そして価格が馬鹿高い。という問題があるらしい。


「魔道具自体のサイズは小さいので二メートルくらい、それで中が縦横高さ三十メートルの立方体になってて、重さは八百キロから、価格は安いので大金貨十五枚からだったはず。あ、あとは魔道具の核に魔石を補充しないと入れなくなるんだった。それも経費が馬鹿にならないらしいよ」


 フィルが説明しているのは、リンドウ邸で使っている魔道具だと察する。だが、聞く限りではまったく使い物になりそうもない。


「小型の物はない訳? 持ち運びできるような」


「んー、あるにはあるんだけど、入手はもっと困難。アルネスダンジョンの四十階層の主を討伐したときに低確率でドロップするアイテムなんだよ。従魔の勾玉っていう」


「それ持ってれば【箱庭】みたいに中に入れるんだ?」


「それがねー、入れないんだよ」


 フィルによれば『従魔を中に収めることができる』という説明の品らしいのだが、実際には収めることができないというクレーム品であるとのこと。


「クレーム品って、ああ、なるほど、()限定ってことか」


「そういうこと。多分、契約がされてない従魔は入れないってことだろうね」


「それならどっかで安く手に入れることはできないかな?」


 クレーム品だし、と軽い考えで口に出したのだが、フィルは肩を竦めた。


「そう思うでしょ? ところがこっちも馬鹿みたいに高いんだよ。しかもオークションで取り引きされるような物で、店頭販売はされてないんだ。レアドロップっていうのもあるんだけど、誰も取りに行かないからコレクターの間で価値が跳ね上がっちゃったらしくて」


「オークションに出品するような品ってことは、取れたら一攫千金なんじゃないの? それ狙いで四十階層の主を討伐しに行く冒険者もいそうなもんだけども」


「マッドピエロと連戦するってどう?」


 うっ、と俺は思わず狼狽(うろた)える。それはキツい。フィルは俺の様子が可笑しかったのか軽く笑って言葉を続けた。


「ほとんどの冒険者がブロンズ階級止まりなのは四十階層が鬼門とされてるからなんだ。僕らは勢いで越えちゃったけど、本当は凄く危険なんだよ」


「いや、それは経験したから知ってるけど、フィルも知ってたのによく止めなかったよね。どっちかって言うと慎重派なのに」


「それはねー。今だから言うけど、甘く見てたよね」


 フィルが苦笑して頭を掻く。


「ユーゴもサクヤもほとんど手を出さないで四十階層まで行けちゃったでしょ? ちょっとした場面で攻撃しても、一撃必殺っていうか、相手にもならなかったじゃない?」


「まぁ、確かに」


 思い返してみれば、アルネスダンジョンの五階層以降に出現した大蜘蛛は拳で一発殴れば頭が潰れた。他の新米パーティーは三人がかりで苦戦していたというのに。明らかに階層と能力が見合っていなかったと思う。


「三十階層の主も、ユーゴが【過冷却水球】を使わずに倒せちゃったし、ちょっと欲が出ちゃったというか。マッドピエロで反省したけどね」


「まぁ、そうだね。死ぬとこだったもんね。俺も思い出すとちょっと怖いかな。ああ、そういや、あれって普通はどうやって攻略するの?」


「三十階層の主のレアドロップアイテムを入手して挑む感じ。ただ、確実に防げるものじゃないらしいんだよね。魅惑耐性は付くし、効果時間も減少させられるみたいだけど、それ以外の対策も練らなきゃ全滅の可能性は高いだろうね」


「魅惑ってどの能力値が耐性になってるのかね? 術攻撃の耐性とかもそうだけどさ、ステボ見てて思うのは、防御に関する部分がよく分からないってことなんだよ」


「防御に関しては体力だけだったと思う。攻撃術の耐性は『精神』って隠し能力値があるんじゃないかって言われてるね」


 気が滅入っているときや、心が乱れているときなどは術に対する耐性が低くなり、やる気がみなぎっているときは高くなるという研究結果があるらしい。


「へー、面白いね。変動するものだから、数値化されてないってことか」


「怒ってるときとかは術の威力が上がったりするんだって。かなり昔から検証されてるみたいだから、心が術の威力や耐性に影響を与えるっていうのは信用しても良いと思うよ」


 話の腰が折れたので戻そうとしたが、その前にフィルが空中を眺めて「あ!」と驚いた顔をした。


「もう七時だよ! 朝食とりに行かなきゃ!」


 なんだ急に?


「なんかあったの? そんなに急いで?」


「何言ってるんだよ! なんとかしなきゃいけないでしょ! サブロのこと!」


 俺が話を戻すまでもなく、フィルはちゃんと考えてくれていたようだ。だが慌てる意味が分からない。急いでどうにかなることでもないだろうに。


「ほら、ユーゴも急いで! あ、サブロはお留守番ね!」


 ああ、うん。と、俺は言われるままに身支度を整える。サブロも状況を理解しているようで、悲しい顔をすることはなかった。


 なんとかするってどうするつもりなんだ?


 まさかアルネスダンジョンに行くとか言い出さないよな……?


 俺は少しばかり不安な気持ちを抱えて、フィルと共に部屋を出た。




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