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『第九章 異端者』

卑劣な手でレイナを追い詰めた不良共に怒り心頭のエクト。

「何なんだテメェは?訳の分からねぇ身なりに変な機関車で出てきやがって。」

「本来だったら首を突っ込むことじゃないが、友達が傷ついているなら話は別だ!」

網に囚われたレイナを助けるエクト。

エクトからは怒りのオーラがにじみ出ており、それは本当に人同士の生死を見てきたような雰囲気だった。

「お前もお前だ!明らかに罠なのに何の対策もなしに突っ込む奴があるか!」

クズキを他所にレイナに説教をするエクト。

「でも・・・これはあたしの問題だ。あたしには他の人とは違って異能がある。」

「それって手から雷出してたあれか?でもだからって一人で突っ込むのは軽率だったな。弟を人質に取られて動けなくなったじゃねぇか。」

レイナはぐうの音も出ない。

「だが安心しろ。」

「!」

エクトは二丁の銃を手に持ち、前に立つ。

「ここからは・・・、俺のステーションだ!」

エクトが振り向くと同時にクズキが隙を突こうとして鉄パイプで殴りかかってきた。

だがエクトは危なげなく拳銃で受け止め、押し返した。

「チッ!渋谷の番犬に仲間がいたなんて聞いてねぇぞ!」

「昨日知り合ったばかりだからな。」

そう言い拳銃を構える。

「ハッ!そんな玩具にビビる俺じゃねぇ!」

再び殴り掛かるクズキ。

「どうかな?」

エクトはクズキの足元に発砲した。

途端にクズキが立ち止まり硬直する。

「・・・今の、まさか・・・本物⁉」

エクトの銃が玩具でないことを確信したクズキは急いで物陰に隠れた。

「テメェ!マジの銃を使うとか卑怯だぞ!」

「どの口が言ってんだ?」

クズキの隠れている木箱に発砲する。

「関係ない子供を人質にするよりかはよっぽどマシな方だろ?」

エクトは弾を入れ替え上の方向に発砲した。

つる下げられた鎖を撃ち切り、鉄骨がクズキに向かって落下する。

「おわっ⁉」

避けて出てきたクズキにすかさず発砲するエクト。

息をつかさぬ連撃にクズキは手も足も出ないでいた。

所詮彼は平和の世界に生きるただの人間。

人の生死を体験したエクトに比べればどうとでもない。

「調子に乗るな‼」

物陰から鉄パイプを投げつける。

投擲されたパイプを打ち落とすとその鉄パイプを目くらましにクズキが殴り掛かってきた。

「オラァッ‼」

振りかぶった拳がエクトの顔面に当たろうとしたその時、レイナがクズキの拳を受け止めた。

「お前に全部任せるわけにはいかない。これはあたしの喧嘩だ!あたしがケリをつける!」

「・・・分かった。伏せろレイナ!」

レイナがしゃがむと同時に背後からエクトが空気弾を撃ち、クズキを吹き飛ばす。

体制を崩したクズキにレイナがトドメを指す。

「二度と、弟に手を出すな・・・‼」

雷の纏った拳が力強く放たれ、クズキの腹に打ち込まれる。

「ぐあぁぁぁ⁉」

感電し黒焦げになったクズキは気を失い、バタリと倒れた。

「ふぅ・・・。」

エクトも拳銃をしまう。

「・・・エクト。ありがとな。」

「友達として当然の事をしたまでだ。さ、帰るぞ。遠くからファンファン聞こえてここに居たら面倒なことになりそうだ。」

「そうだな。」

二人は急いでその場から離れていったのだった。


 翌日、エクトたちは病院に来ていた。

エクトは屋上でボケ~ッとしているとレイナが遅れてやってきた。

「レイナ。彰吾の容態はどうだ?」

「骨折や打撲、下手をすれば失明の可能性もあったって。でもあの黒髪の女の子が応急処置をしてくれたおかげで無事に完治できるってさ。」

「そうか。」

不良にいたぶられ怪我が酷かった彰吾は病院で入院するとの事だった。

だが別の問題もあった。

「お前等、家無くなっちなったけど、これからどうするんだ?」

「大丈夫だ。彰吾は施設で預かられることになった。今は意識が無くて眠ってるけど目を覚まして退院したら施設に移るってよ。」

「・・・お前自身はどうした?」

「あたしは・・・、彰吾と居たらまたいつ今回のように危険に巻き込まれるか分からない。だから、あたしはどこか遠くへ行くよ。」

「・・・一人でか?」

「しょうがないさ。今までの行いのツケが回ってきたんだ。潔く離れるよ。」

しかし、レイナは寂しそうな顔をしていた。

弟を危険な目に遭わせないために自ら離れ離れになる道を選んでも、彼女はまだ歳半ばの少女だ。

辛く寂しいに決まっている。

「・・・なぁレイナ。」

「ん?」

「信じてくれるか分かんねぇけど、俺の事を全部話すよ。」

エクトは自分の事を包み隠さず話した。

自分が異世界人であること。

たった一人の家族を理不尽に殺された事。

その国に復讐を誓ったこと。

そして、無人鉄機の事を。

「―とまぁ、こんなとこだ。」

レイナの方を振り向くと、彼女は泣いていた。

エクトを真っ直ぐ見ながら。

「レイナ?」

「何だよそれ・・・。あたしなんかよりずっと辛いじゃねぇかよ・・・!許せねぇ、その王国軍てやつ、絶対に許せねぇよ!」

泣きながら怒りがこみ上げ騒ぐレイナ。

「信じてくれるのか?」

「馬鹿野郎!お前はあたしたちの恩人だ!その恩人がこんな時に嘘をつくわけがねぇ!それにお前はどこか変な奴だとは思ってたけど、その話を聞いたらいろいろ納得がいった!だから信じる!お前の全部を信じてやる!」

レイナの男勝りな想いにエクトは思わず笑ってしまった。

「な、何だよ!人が真剣に言ってる時に!」

「悪い悪い。」

「・・・なぁエクト。お前の復讐、手伝わせてくれ!」

レイナからの突然の一言にエクトは驚いた。

「でも、これは俺の問題だぞ?レイナは関係・・・。」

「ある!お前昨日言ってたよな?『友達が傷ついているなら話は別だ!』って。」

「・・・言ったな。」

「だから今度はあたしがお前を救ってやる番だ!友達だろ?」

二ッと笑顔で言うレイナ。

エクトは手で顔を覆い、

「・・・ありがとな。」

と、小声で言ったのだった。

「それに、異世界渡りなんて面白そうじゃん!あたしの異能があれば難なくやって行けるだろ!」

「ハハハッ、頼もしい仲間が出来たな。」

「シシシッ!」

こうしてエクトは初めての仲間を得たのだった。


 その日の夕方。

彰吾が入院している病室にレイナが入ってくる。

彰吾は未だに意識が戻っていなかったが。

「・・・彰吾。姉ちゃん、やるべきことができた。だから、もう会えなくなるかもしれないけど、あたしたちは家族だ。離れていても、あたしは彰吾の姉ちゃんだぞ。」

彰吾の頭を優しく撫でる。

「じゃぁな。お前は姉ちゃんみたいになるな。真っ当に生きろよ。」

そう言い残し、病室を後にしようとすると、

「ね・・・姉ちゃん・・・。」

レイナは一瞬立ち止まったが、振り向かずそのまま部屋を出ていった。

「・・・いいのか?」

外で待っていたエクトにレイナが答える。

「あぁ、これでいい。彰吾は強い。あたしが居なくてもちゃんと生きていけるさ。」

「そうか。」

「で、その無人鉄機とか言う機関車?一体どんな物なんだ?異世界の乗り物なんだろ?早く行こうぜ!」

「昨日見ているはずだが?」

「覚えてねぇ!」

「あそ・・・。」

二人は日が暮れた歩道を歩いて無人鉄機に向かったのだった。


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