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『第二章 王国軍の正体』

未だに村の炎は燃え尽きることを知らない。

次々と建物が崩れていく中、エクトは妹、シアの持っていたぬいぐるみを持って村の中をさまよっていた。

「ハァ・・・ハァ・・・ゲホッ、ゲホッ!」

大分煙を吸ってしまい苦しそうだ。

「村長・・・皆・・・シア!」

どれだけ呼んでも燃える音しか聞こえない。

「何で、何でこんな・・・!」

さまよっていると足元で何か柔らかい物を踏みつけた。

土に塗れた布のようだが、よく見るとその布は旗であり見覚えがあった。

「これは・・・王国軍の国旗⁉」

辺りをよく見まわすと甲冑の一部だったり、砕けた武器の残骸があちこちに転がっていた。

「何で、王国軍がここに・・・!」

理由は分からないが現在隣の帝国と戦争中の王国軍がエクトの村を襲撃したようだ。

王国軍については良い話を聞かなかったが、自国の村を襲うほどとは思わなかった。

悔しい事に肉屋の親父の予感が当たってしまった。

「王国軍・・・許さねぇぞ!」

憎しみに燃えるエクト。

すると遠くから馬の足音と金属がこすれる音が近づいてきた。

エクトは物陰に隠れる。

馬に乗って現れたのは下っ端の王国軍の兵士だった。

(っ‼)

エクトは今にも飛び出しそうになるがグッとこらえた。

「まったく、リルド団長も人使いが荒いぜ。村に略奪し損ねた物がないか調べて来いなんて。」

略奪。

兵士とは思えない程の言葉を漏らした。

エクトは更に怒りの炎が燃える。

「団長の悪口はやめとけって。今ここには団長の右腕であるフリム隊長が同行しているんだから。」

もう一人の兵士が言うと後ろから馬に乗った長髪の男性が現れる。

「フリム隊長!」

兵士が敬礼をとった。

「愚痴もいいが今は命令を遂行しろ。使えそうな物があれば全て持ち出せ。」

兵士は散開し炎の落ち着いた個所から建物の中を探し回る。

(今見つかるのはまずいな・・・。気づかれないようこの場から一旦離れよう。)

憎い相手が目の前にいるが今のエクトでは当然太刀打ちが出来ない。

期を伺うため村から離れようとするが、

「・・・誰だ。」

フリム隊長がかすかな物音に気付いた。

咄嗟に息を殺すが遅かった。

「そこか・・・!」

剣を取り、斬撃で瓦礫を吹き飛ばし見つかってしまった。

「なっ、生き残りがいたのか⁉」

周りの兵士たちにも気づかれてしまった。

「生憎、王国の影の行いを見られたからには生かしておくことは出来ん。悪く思うな。」

フリムがエクトに剣を突き立てて言った。

「あぁ、知りたくなかったさ。自国の王国軍がこんな悪行に手を染めていた事実をな!」

隙を突きエクトはポケットから複数の球を取り出し、辺りにばらまいた。

ばらまかれた球は地面に落とされると同時に激しい発光が辺りを包み込んだ。

「何っ⁉」

(特生の目くらましだ!昔からこういう工作は得意なんだよ!)

発光している隙にエクトは森の方へと駆け込む。

「くっ、追え!我らの事が公にされるのを防ぐんだ!」

「はっ‼」

一斉にエクトを追う兵士。

エクトは必死に暗い森の中を走り続けた。

「いたぞ!こっちだ!」

馬の脚に人間が敵うはずもなくすぐに見つかってしまう。

「悪いが軍の名誉のため、死んでもらうぞ!」

槍を構えエクトに振り下ろす。

だが次の瞬間、太い幹の枝が兵士の顔面に直撃し、馬から転げ落ちた。

「へっ、この辺りは俺の地元だ!どの位置にどんな木があるか全部覚えてる!」

エクトの言う通り、木々や草木を利用して追手の兵士を翻弄し続けている。

「くそっ!木が邪魔で全然追いつけない!」

このままいけば逃げ切れる。

そう思ったのも束の間、後方からもの凄い勢いで何かが迫ってくる。

「隊長!」

「⁉」

魔法を身に纏い、木々をなぎ倒して迫ってくるフリム。

腐っても団長の右腕と言われるほどの室力者ということか。

「チッ!」

フリムの放つ斬撃をしゃがんでかわすエクト。

方向を変え休憩したあの丘の上まで逃げてきた。

「ハァ・・・ハァ・・・。」

「人の身でここまで軍の馬から逃げ続けたのは誉めてやろう。だがここまでだ。」

完全に追い詰められた。

後ろは崖、前は兵士とフリムに行く手を封じられている。

完全に絶体絶命の状況だった。

「さぁ、大人しく死んでもらおうか!」

じわじわと兵士が迫ってくる。

(こんなところで死ぬわけにはいかない!絶対村の皆の・・・シアの仇を取るまでは!)

その時、どこからか強い心音が聞こえたかに思えた。

そしてエクトの脳内にあの声が聞こえてくる。

『・・・崖を降りて洞窟の中に・・・‼』

「‼」

「死ねい!」

フリムの剣がエクトに突き刺さろうとした瞬間、エクトは後ろに飛び崖へと落ちて言った。

「な、血迷ったか⁉」

落下するエクトを見る兵士たちに言い放った。

「いずれ再びお前らの前に立ってやる。その時がお前らの最期だ。」

そう言い残し、エクトは崖の底へと姿を消したのだった。

「・・・。」

「ま、まさか自分から命を投げ出すとは。」

「は、ハハハ!これで俺達の事は誰にも知られないな・・・。」

兵士がうまく状況を飲み込めない中、フリムだけがエクトの言葉が気になっていた。

『いずれ再びお前らの前に立ってやる。その時がお前らの最期だ。』

(・・・負け惜しみか、それとも真実か。だが再び相まみえた時は・・・お前の最期だと知っておけ。)

剣を鞘に納め、フリムと兵士はその場を後にした。


 意識が翻弄する中、エクトは目を開ける。

「・・・ここは?」

高い崖から飛び降りたエクトは木々や草木がクッションとなりつる草に絡みついて生き永らえていた。

だがそれでも落下の衝撃は凄まじく、身体のあちこちがボロボロだった。

「っ!骨を何本かやっちまってるな・・・。」

絡まったつる草を解き、足を引きずりながら歩くと目の前の崖に洞窟があった。

「そういえばあの時の声・・・洞窟の中にとか言ってたな。」

エクトは洞窟に入り、道中転げ落ちながらも奥へと進む。

するとひらけた場所に出た。

「この山にこんな空洞があったなんて・・・。」

歩みを進めると前方から見慣れない影があることに気づいた。

「・・・何だあれは・・・⁉」

エクトが見つけたのは漆黒の車体に先頭が尖った形状、そして煙突から煙が出ている。

この世界にはない存在の蒸気機関車だった。

「機械みたいだけど、こんな形見たことねぇ。」

ゆっくり近づくエクトだが突然意識が遠退いてきた。

(くっ!血を流しすぎたか⁉意識が・・・!)

もはや立ってられず、その場に倒れこんでしまった。

(このままじゃ出血多量で死んじまう。意識を保て!意識を・・・!)

せっかく王国軍から生き延びたのにこんな終わり方では死んでも死にきれない。

しかし身体は既に限界を超えていた。

「ごめ・・・ん、シア・・・。」

エクトは意識を失ってしまう。

すると機関室の火室の扉が開き、中から裸の少女が顔を出した。

「・・・・・・。」

少女は機関室からエクトをじっと見つめていたのだった。


一作目。

世界最強のドラゴンテイマー めっちゃ強い仲間と世界を見ます!

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