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『第十六章 来たる未来のため』

機械の世界にやってきたエクト。

しかしその世界は機械が支配しており、人類存亡の危機に瀕していたのだ。

そんな中出会ったのが人間に味方する機械人間、マイク。

「俺はバイクをベースに作られたアンドロイドだ。」

「アンドロイドにしちゃ随分ロボット感があるな?」

「一応アンドロイドに分類されるんだよ。何なら人間の飯も普通に食えるぜ?」

「マジかよ。」

彼の性能に驚いていると部屋の奥から微かな物音がした。

「何だ?ネズミか?」

「―っと、そろそろ飯か。悪いエクト。ちょっと手伝ってくれるか?」

よくわからないがエクトはマイクの言う通り動いた。

バケツに水を入れ肥料を混ぜて。

「・・・ん?飯?」

今作ってるものはどう考えても人が食べる物じゃない。

いや、食べ物ですらなかった。

「こっちだ。」

マイクに連れられ奥の部屋に入ると、

「うお⁉」

ベットに横になっていたのは身体の半分が樹木化した少女だった。

「マイク?」

「よっ、待たせたな。」

少女はゆっくりと身体を起こす。

起こすと彼女の身体が更に樹木化していることが分かる。

「このお兄ちゃんは?」

「俺の友達だ。」

マイクはバイザーを上げて素顔を出す。

「食えるか?」

「うん。」

樹木化した左腕でバケツに手を入れると水を吸収し始める。

これが彼女の食事のようだ。

「マイク、この子は?」

「後で説明する。」

水を飲み干し満足そうな少女。

「ケプッ、お腹いっぱい。ありがとう、マイク。」

「いいってことよ。俺達は姉弟なんだから。」

更に質問の種が増えた所で部屋を後にする二人。

「悪いな。姉の世話を手伝ってもらって。」

「別にいいけど、姉?」

彼女は半分が樹となっていたが人間のようだった。

そんな彼女とアンドロイドのマイクが姉弟?

「姉ちゃん、リーフは俺を作ってくれた博士の娘なんだ。だから俺達の関係は姉弟ってことになってるわけよ。」

「なるほど、そういう関係性か。けど、あの子の身体・・・。」

そう言いかけるとエクトの腹が鳴った。

「そのことも含めてまずはお前らの飯だな。」

マイクは笑いながら言ったのだった。


 飯と言っても全部缶詰だったがないよりはマシだった。

アスタロトと食べていると先ほどの話題を話始める。

「リーフがあの身体になったのは、俺のせいなんだ。」

「どういうことだ?」

マイクが言うにはリーフは彼女の父、そしてマイクを作った博士が叶えたい夢に関係していた。

「親父はこの機械化した世界を、再び自然豊かな世界に戻そうと研究を続けていた。」

マイクが語る、世界の未来に命を懸けた一人の科学者の覚悟を。


 一日中暗い空模様。

謎の靄のせいで永遠の夜と化した大都会に一人の男性がバッグを持って走っていた。

「そっちに行ったぞ!逃がすな!」

大勢の機械兵士が追い回す。

男性は暗い路地裏に逃げ込み暗闇を利用して敵の目を欺く。

「いたか?」

「いやいない。」

「まだ近くにいるはずだ!探せ!何としてでも取り返すんだ!」

そう言い兵士たちはその場を離れる。

男性はマンホールの下へと逃げ込み下水道を走っていた。

「ここまで来れば大丈夫だろう。」

男性の手には青く揺らめくエネルギーの結晶体が抱えられていた。

男性はそのまま下水道を進み、都会から離れたマンホールから寂れた街に出てきた。

「また機械国に言ってたのかい?」

目の前に立ち尽くしていたのは杖を持った老婆だった。

「死にぞこないがよくもまぁ飽きもせずに。」

「黙れバルサ。これは俺の戦いなんだ。」

マンホールから立ち上がる男性はそのまま老婆を通り越し自分の研究室へと入って行った。

「全く、人の気も知らないで・・・。」


 男性はそのまま建物に入り床下にある扉を開ける。

階段を降り地下室の研究室にやってくる。

「さてと・・・。」

バッグから取り出したのは稲妻が走る結晶だった。

「機械国の最高機密、『無限電石』。大抵の機械の奴らはこれを動力にして動いてやがる。だが天才の俺ならもっといい代物に作り変えてやれる!・・・ぐっ⁉」

男性は突然胸を押さえ苦しみだす。

「はぁ、はぁ・・・時間がない。急がねぇと!」

そういい男性は周りにある設備を使って石を加工し始めた。


 それから数日後。

部屋に籠っていた男性が眼鏡を外した。

「よし、後はこれをはめれば!」

加工した石をとある機会に入れる。

すると機械の中で石は光の粒子と変化し、管を通り別の機械へと流し込まれる。

煙が噴き出し中から人型の機械が現れる。

「・・・んぁ?」

「よし!成功だ!」

男性は機械の男の肩に手を置いた。

「アンタが俺を作ってくれたのか?」

「あぁ、俺はライクって言う科学者だ。そしてお前の名前はマイク。マイク・ザ・バイクだ。よろしくな!」

ライクは拳を突き出しマイクとグータッチしたのだった。


 マイクは自分を作ってくれた科学者ライクの話を聞いた。

「メモリーから情報を渡した通り、この世界は異様なまでに機械化が進んでいる。」

ライクは薬品を調合しながら話していた。

「世界の現状は理解したけど、知らない記憶埋め込まれてスゲェ気持ち悪い・・・。」

「吐くなよ?」

「吐けるかい!俺機械!」

ライクはこの世界の空が真っ暗なのは機械化が進んだのが原因だと確信づいていた。

「この暗い世界を再び緑豊かに、そして光の差し込む優しい世界を取り戻したいんだ。そのためにお前を作ったんだ。」

「俺を?」

「俺の研究を手伝ってほしい。これまでは一人で何とか回せていたが研究が進むにつれ人手が必要になってな。どうだ?」

マイクは立ち上がりライクの前に立つ。

「生み出してくれた恩人だ。喜んで手伝うぜ!」

そうして二人はある物の研究を続けたのだった。


 途中ライクが材料を持ってくると言って数日研究室を開ける日が続いた。

「おせぇな。ライク・・・。」

上の廃墟でチェーンにぶら下がって帰りを待つマイク。

「結局何の研究をしてるのか教えてくれねぇし、・・・ちょっと進めとくか。」

研究室に戻り自分でも出来るレベルの研究を進めていると奥の部屋から物音がした。

「ん?何だ今の音?」

その部屋はライクが自分がいない時は絶対に開けるなと言われていた部屋だった。

その言いつけを守っていたマイクだが次第に興味が湧いてくる。

「・・・覗くだけなら、いいかな?」

そ~っとドアノブに手を伸ばした瞬間、

「帰ったぞマイク~!」

タイミングドンピシャでライクが戻ってきた。

驚き固まったマイクとバッチリ目が合った。

「・・・。」

「・・・。」

沈黙が続き、次の瞬間ライクがマイクを締め上げた。

「コノヤロー!部屋開けようとしてやがったな⁉」

「いででで!すんません!」

取っ組み合ってる二人。

するとドアの方から勝手に開き、中から少女が現れた。

「・・・お父さん?」

「え?お父さん?」

マイクがライクを見る。

「あ~、教えるのはもう少し先にしたかったんだがな~。」

ガシガシと頭をかくライクだった。


 三人はダイニングテーブルに集まって座る。

「マイク。この子は俺の実の娘、リーフだ。妻とは早くに死に別れててな。この子は母親の顔すら覚えてない。」

つぶらな瞳でそれぞれを見るリーフ。

「娘がいた事にも驚きだが、何で隠してた?」

「リーフは病弱でな。特にこの世界の大気を吸ってしまうと内臓器官に悪影響が出るほど酷いんだ。」

「それは相当ですな。」

リーフは生まれつき身体が弱く、この世界で生きるにはかなり苦しい状況との事。

ライクは娘に外の世界を見せたい一心で研究を続けてると言った。

ここでマイクは自分たちが何の研究をしていたのか改めて聞いてみた。

「・・・俺が研究しているのは、世界の森緑化だ。勿論全てを自然に戻そうって訳じゃないが、この世界の空が真っ暗なのは何故か知ってるか?」

「いんや?貰ったメモリーにもなかったけど、確かに疑問には思ってた。」

空が一日中真っ暗な理由をライクは知っており、マイクに説明しだした。

「機械化と共に植物はどんどん削られ、今はこの星の三割しか残っていない。しかも機械国は産業革命で有害物質を生む工場まで作り、大気は想像を超えるほど汚染されてしまった。この空が真っ暗なのはその汚染大気が充満して太陽の光を完全に遮ってしまってるんだ。」

機械国にある大きな工場。

そこから出てる煙が環境にもの凄く悪影響らしく、大気が汚染されまくって太陽の光が遮られ、現在の真っ暗な空模様になったという。

しかもその大気汚染、次第に量が増していきこのままでは人間が生存出来なくなるほど大気が危険になっていくらしい。

「それ、ヤバくね?」

「かなりヤバい。」

そんな来たる未来を防ぐため、ライクは日夜研究に励んでいるのだ。

しかしこの地域に研究の材料になる素材は限れらている。

更に研究を進めるには機械国にまで行かなくてはならない。

機械国の住民は人間を忌み嫌っておりその地に足を踏み入れるだけで投獄され、刑に処される程だと言う。

「ヤベェ国じゃん・・・。」

「ヤベェ国だ。」

マイクもドン引きを隠せないでいた。

「今の所機械国に行く用事は無いが、研究材料が底をつくとあそこまで調達しなきゃいけなくなる。今まで俺が言っていたが俺ももう年だ。体力など限界が来てる。だから・・・。」

マイクはピンときた。

「だから俺を作ったって訳か。なるほどねぇ。納得したぜ。今後は俺が機械国に行って材料を調達すればいいんだな?」

「その通りだ。だがあの国は本当に危険だ。もし見つかったり捕まりそうになった時は路地裏に逃げて人目を盗み、地下水道に逃げ込め。そうすれば一先ず安全だ。」

「あいよ。任せとけ!」

難しい話のオンパレードで幼いリーフはウトウトしていた。

「―っと、待たせたねリーフ。そろそろ寝ようか。」

「うん・・・。」

「それじゃマイク。その時になったら頼むよ。」

「おうよ!」

グッと親指を立てライクはリーフを連れて退室していった。

「・・・さてと、今のうちに国のマップを把握しとくかね。」


 リーフを寝かせ終え、部屋を出るライク。

その時、ライクは胸を押さえ酷く苦しみだした。

「グッ・・・!ハァ・・・ハァ・・・。時間が無い・・・。」

壁に寄り掛かりながらライクは自室へと歩いていった。


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