『第十五章 機械の世界』
星空のない真っ暗な夜空。
その下を光行と照らす大都会。
街明かりで昼のように明るく、人々で賑わっていた。
しかし違和感がある。
街の人々のほとんどが機械、アンドロイドだったのだ。
そして街の中央には光孝に輝く大きなタワーがそびえ立っており、そのタワーを中心に街が広がっている街並みだ。
そんな明るい街から少し離れた暗い路地裏。
いろんなジャンク品が捨てられているゴミ捨て場に動く一つの影。
「・・・あった!やっぱりアイツ等はこれの価値を理解してないな。ま、そのおかげで俺は助かるんだけど。」
一人の機械の人物がゴミ捨て場からモヤモヤうごめく何かが入ったカプセルを手に取った。
すると背後から複数の機械兵が現れた。
「貴様!そこで何をしている!」
機械の人物は兵に囲まれてしまった。
「貴様、裏切り者のバイク男か!まだ人間共に味方しているつもりか?」
「ハン!作ってくれた人間に恩を仇で返す奴らに裏切り者とか言われたくないな!お前等こそ、人間を裏切りこの街を滅茶苦茶にしやがって!俺達は俺達で世界を救う。スクラップ置き場で指を咥えて見ていやがれ!」
そう言い張るバイク男。
「ほざけ!貴様は我ら機械国に仇成す悪だ!直ちに捕らえろ!」
機械兵が一斉に掛かる。
だがバイク男は焦る様子もなく余裕の表情だ。
「悪いがまだ立ち止まる訳にはいかないんでね。アディオス!」
右手に高電圧のエネルギーが凝縮される。
「ダウンパルス‼」
思いっきり地面に叩きつけ凄まじい電磁波が辺りに広がっていった。
時は少し遡り、空に空いた次元の扉から無人鉄機が現れた。
「着いた!え、暗⁉」
星一つない真っ黒な夜空に驚くエクト。
「何だこの空は?星が一つもない・・・。」
「何かスゲェ不気味だな。ロア、この世界はどんな世界なんだ?」
ソファでミルクを飲んでるロアにレイナが問う。
「・・・インストール完了。この空、何か深い靄みたいなのが覆っていて一日中真っ暗みたい。」
「靄?この真っ暗な空がか?」
妙な世界にやってきてしまったみたいだ。
だが下を見るとギラギラ輝く巨大な街にエクトは目を痛くした。
「何だあの照明増し増しな街は?」
「この世界の都市みたいだね。しかしここまで明るいのは初めて見るな。」
アスタロトは興味津々な目だった。
「とりあえずどこか降りられそうな場所を探すか。ロア、頼めるか?」
「任せて。」
着地場所を探しに無人鉄機を動かそうとしたその時、突然の電磁波が無人鉄機を襲った。
電磁波を食らった瞬間列車の照明が消え、車輪が止まり急ブレーキが掛かる。
「おわぁぁ⁉」
「うわぁぁ⁉」
急ブレーキで乗っていたエクトたちは一斉に倒れる。
「いてて、何だ急に⁉」
「照明が消えたと思ったら突然列車が止まったし?」
吹き飛ばされたエクトとレイナは頭を押さえる。
アスタロトは翼で少し身体を浮かせて衝撃から身を守っていた。
無人鉄機は現在上空で停車している状態だ。
「さっきのは恐らく電磁パルスって言う電磁波だな。」
「電磁パルス?」
「あぁ、あたしの世界でも存在する電波で機械を強制シャットダウンさせる結構危険な電磁波なんだが・・・、え?機械・・・?」
ハッと気づいたレイナはロアの方を振り向く。
「ロ、ロアーーー⁉」
案の定、無人鉄機のコアであるロアはコップを口につけたまま白目を向いて固まっていたのだ。
すると電力が回復し再び照明が付いた。
それと同時にロアも目を覚ました。
「はっ!あれ?僕は何を・・・?」
「よ、良かった~!」
レイナは胸を撫で下ろす。
エクトは窓から街を見下ろした。
(さっきの電磁波。凄まじい威力だった。何がいるんだ?)
しかし、いつまた先ほどの電磁パルスで無人鉄機が止まってしまうか分からないため、エクトとアスタロトが先行して降り列車を止められる場所を探すことにした。
アスタロトに抱えてもらいながら街に降りると辺りにいる人々はほとんどがアンドロイドだった。
「うお⁉機械人間⁉」
「異世界にはこんな人種もいるのか。」
どうやらここは機械の世界らしく、エクトの探している装置のパーツも色々とありそうだ。
「とにかく列車が居りされそうな場所を探そう。」
「そうだな。」
二人が街中を探索していると、
「きゃぁぁぁぁ!人間⁉」
「え?」
一人のアンドロイドに悲鳴を上げられた。
「何で人間がこの街に⁉」
「誰か!マシン自警団に連絡しろ!」
野次馬がどんどん集まってくる。
「何だ何だ⁉」
状況が掴めないエクト。
すると機械の兵士がゾロゾロとやってきてエクトたちを囲んだ。
「なぜ人間がこの街にいる?貴様等、奴らの手先か?」
銃を突き付けられ二人は完全に困惑していた。
「待て待て!手先って何だ?別に俺達は何も・・・!」
「問答無用!捕らえろ!」
話を聞かない機械兵に襲い掛かられる。
「理不尽すぎんだろ!」
エクトは拳銃、アスタロトは魔法書を手に持ち兵士をあしらっていく。
「こいつ等武器を持ってるぞ!」
「まさか、武器が密輸されてたのか?捕らえて吐かせるんだ!」
どんなになぎ倒しても増え続ける兵士。
「このままでは埒が明かない。エクト!乗れ!」
魔導書からイーグルを召喚しエクトの手を掴み上げた。
「飛べ!」
イーグルは羽ばたき上空へと逃げていった。
「追え!逃がすな!」
地上から追ってくる機械兵。
「このままでは逃げ切れない。エクト、何か手はないか?」
「あ、だったら新作の銃弾が役に立つかも。アスタロト、雷の魔法出せるか?」
「こんな時に?」
「いいから。」
言われるがまま魔法書から小さな雷魔法を出す。
エクトは銃弾の蓋を開けると雷魔法が銃弾の中に吸い込まれ、小窓に黄色い色が付いた。
「魔法を吸収した⁉」
「これを入れて・・・。」
弾を差し込み兵士に向かって発砲する。
すると弾着したと同時に足元に稲妻が走り、兵士は感電して次々と倒れていった。
「アスタロト!今だ!」
「わ、分かった!」
そして何とか逃げ延びることに成功したのだった。
突然襲われたエクトとアスタロトは街から離れた暗い街に降り立った。
「あ~疲れた。何だったんだ?一体?」
「分からん。だが、あの街に列車を止めることは出来ないな。幸いこの辺りは先ほどの機械たちもいないみたいだし、ここらへんで探していこう。」
「そうだな。毎回あんな事起こっちゃ身が持たない。」
二人は引き続き探索を始めると急に周りの建物から明かりが付いた。
家のドアから次々と人間が出てきたのだ。
「今度は何だ?」
二人は身構えていると一人の老婆が前に出てきた。
「アンタ達、もしや機械国から来たのかい?」
「機械国?あぁ、さっきまでいたあの街か。なんかいきなり囲まれたと思ったら捕まえられそうになったけど何とか逃げたわ。」
すると老婆は驚いた表情をした。
「何と!あの国から逃げ延びたのか!もしや、機械兵を倒したのか?」
「倒したわけじゃねぇけど、感電させて動きを止めた程度だが?」
「・・・やはりお前たちは相当な強さを持っているに違いない!これならあの子の力になれるかもしれない!」
街の人達も何やら喜びの声を上げている。
二人は全く理解できずにいると老婆が会ってほしい子がいると言って二人をとある場所に案内した。
連れてこられたのは古びた建物だった。
「あと一言言わせてもらうと、敵対するんじゃないよ?」
「?」
老婆は戻り、二人で建物に入る。
「ごめんくださ~い?」
「誰もいないぞ?」
「いないんかい!」
中は廃墟のようにボロボロ。
とても人が住んでいるようには見えなかった。
「ん?ちょっと待て。ここ。」
床に扉のような物があり開けてみると、
「隠し階段か。」
「行ってみようぜ。」
二人は階段を降りていくとそこには、
「何だここは?」
いろんな装置や器具が大量に置かれた研究室だった。
ホルマリンの中には見たことない植物のような物が入っている。
しかし、どれも枯れていた。
「あの婆さんここに連れてきて何を言いたいんだ?」
二人が辺りを見回していると背後から誰かに声を掛けられた。
「何だお前等?」
驚いた二人はその場から離れる。
「びっくりした⁉」
そこにいたのはターコイズブルーの外装に両足がバイクのタイヤになっている身長二メートル位の機械人間が立っていた。
「機械⁉」
エクトが銃を構えようとするとアスタロトに止められた。
「落ち着け。あのお婆さんに言われただろ。敵対するんじゃないと。」
老婆の言葉を思い出したエクトは銃を収める。
「なるほど、そう言う事か。婆ちゃんめ、勝手に親父の研究室に連れてきやがって。」
機械の男は頭をかいた。
「すまない、勝手にお邪魔してしまった。私はアスタロト。彼は連れのエクトだ。」
アスタロトは自己紹介をした。
「名乗られたら名乗り返さなきゃな。俺はマイク。マイク・ザ・バイクって言うんだ。あの婆ちゃんが連れてきたんなら信頼できるかもな。ま、よろしく。」
グッと親指を立てる。
どうやら彼は街で遭遇した機械人間とは違うみたいだ。
「それで、ここなどこなんだ?」
「この研究室か?・・・親父、俺を作ってくれた博士がずっとある物を研究をしている、この世界の未来を救う場所だ。」




